極私的映画案内

新作、旧作含め極私的オススメ映画をご案内します。時々はおすすめ本も。

ツイン・ピークス The Return Episode 14《第14話》

EPISODE 14


サウスダコタ州バックホー

FBI一行が宿泊中のホテル。
ゴードン・コールの部屋。

ゴードンがどこかへ電話をかけている。
電話をかけたのはツイン・ピークスの保安官事務所。
受付のルーシーが電話を受ける。
少しづつ噛み合わないゴードンとルーシーの会話。
ルーシーは早々にトルーマン保安官に電話を回す。

「ハリーか?私だ、ゴードン・コールだ
電話をくれたようだな」
「ああ、いやいや、
私はフランク・トルーマン保安官です
ハリーの兄です」
「ハリーはどうした?」
「身体を壊して今治療を受けているんです」
「そうか、それは心配だな」
「恐れ入ります、ハリーに伝えておきます」
「それで、情報というのは何だ?」
「ああ、お知らせしておこうと思いまして
その、奇妙な話なんですがね
実は、うちの副署長のホークがちょっと
気になるものを見つけたものですから
ローラ・パーマーの日記で、
破り取られてなくなっていたページが出てきたんです
クーパーが二人いる可能性を示す内容が
書かれていました
今は、それしかわかっていないんですが、
その、もしかして、
あなたには大事なことかもしれないので、ご連絡を」
「そうか、知らせてくれてありがとう、フランク
その情報に関しては、
何もコメントすることは出来ないんだが
連絡してくれて助かったよ
心から感謝する」
「わかりました、コール部長
その、了解しました」
「君とハリーに幸あらんことを
ハリーによろしく伝えてくれ」
「ええ、ありがとうございます、伝えます」

※破り取られてなくなっていたローラ・パーマーの日記について(クーパーは二人いる)の情報をFBIツイン・ピークス保安官事務所がこの時点で共有。
詳しくはこちら
👉ツイン・ピークス The Return Episode 7 〈第7話〉 - 極私的映画案内


サウスダコタ州バックホー

FBI一行が宿泊中のホテル。
すでに“支局”のオフィスと化している。

「タミー、“事件番号1”、これがすべての始まりだった
1975年、ワシントン州オリンピア
とある殺人事件を捜査していた時のことだ
二人の捜査官がその犯人、
ロイス・ダフィーの逮捕に向かった
部屋の外で銃声を聞き、中へ飛び込んでみると
部屋には二人の女性がいた
床に倒れた一人は、腹部に銃弾を受けて瀕死、
もう一人は、後ずさりしながら、
手に持っていた銃を取り落とした
撃たれた女性は、容疑者のロイス・ダフィーだった
彼女はこう言い残したそうだ
私は青いバラと同じ
ロイスは微笑み、息を引き取った
そして、彼らの目の前で消えてしまった
部屋の隅で叫んでいるもう一人の女性を見てみると
そちらもロイス・ダフィーだった
言っておくが、ロイスに双子の姉妹はいない
殺人罪での裁判を前に、ロイスは無実を訴え、
自ら首を吊って死んだ
彼女を逮捕した捜査官は、
ゴードン・コールとフィリップ・ジェフリーズだ
さて、ここで君が聞くべき質問は何だ?」
青いバラは何を意味するのか?」
「その答えは?」
自然界に青いバラはない
自然じゃないものよね?
死んでいった女性も自然じゃない
魔術的な、なんて言えばいいのかしら?
化身ね」
「よろしい」

ゴードン・コールが部屋に入ってくる。

「コーヒータイムだ!
アルバート、多分、わかったぞ!
すぐにダイアンが来る」

シェードを下ろした窓の外で、
窓のふき掃除が始まるが、
キュッキュッという音がゴードンの耳に触る。

ノックの音がして、
ダイアンが部屋に入ってくる。

「入ってくれ、ダイアン
まあ、くつろいで」

コーヒーを配るタミー。

「コーヒーでも飲め」
「アシスタントのダイアン到着」
「ダイアン
君が最後にクーパーと会った夜のことだが
もしも、ガーランド・ブリッグス少佐に関してあいつが何か話していたことがあれば、聞かせてほしい」
「あの夜のことは言いたくない」
「わかったが、とにかく、一つだけ教えてくれ
クーパーはブリッグス少佐の話をしていたのか?」
「はあ、クソゴードン…してた!」
アルバート
「ダイアン、知っての通り、我々は今ブリッグス少佐に関わる古い事件について調べている
少佐は二十五年前、政府の施設の火事で死亡した」
「ええ」
「はずだったが、
少佐はここ、バックホーンで死んだことが判明し
胃の中から、この指輪が
指輪には、文字が彫られている
“ダギーへ 愛をこめてジェイニー・E”」
「やだ、嘘でしょ」
「どうした?ダイアン」
「片方の親が違う姉妹がジェーンて名前なの
結婚した男の名前はダグラス・ジョーンズで
みんなにダギーって呼ばれてる
ジェーンのあだ名はジェイニー・E」
「で、どこに住んでる?」
「最後に聞いたのは、ラスベガス」
「最後にその子と話したのはいつだ?」
「あの子とは疎遠で…嫌いなのよ
だから、もう何年も話してない」
「タミー、ラスベガス支部に電話をつないでくれ」

※「私は青いバラと同じ」この言葉を残したロイス・ダフィーにはクーパーと同じように、化身(「青いバラ”と同様、自然界には存在しない)が存在した。
そして、ここで重要な事実が判明。
ダイアンとジェイニー・Eは片方の親が違う姉妹だった!
ジェイニー・Eとダギーの出会いについても
バッド・クーパーあるいは何者かの関与があったのかもしれない。


■ラスベガス:FBIラスベガス支部

ウィルソン捜査官ランドール・ヘッドリー特別捜査官にゴードン・コールからの電話を取り次ぐ。

「あの、ゴードン・コール副支部長から電話が入ってるんですが」
「ゴードン・コール?」

「コール副支部長、どうも」
「至急、情報を集めてもらいたい
ラスベガス在住のダグラス・ジョーンズと
その妻に関するあらゆる情報だ
その夫婦は二人の人間の殺害に関与しているらしい
おそらく、武装しているだろう
充分警戒して、捜査に当たってくれ」
「ダグラス・ジョーンズですね?わかりました」
「最優先で、頼んだぞ!報告を待っている
連絡先は部下に聞け!」
「了解です!」

「市街地だけでも二十三人のダグラス・ジョーンズがいるよ」
「どうやって探しゃあ、いいんでしょうね?」
「ウィルソン!
お前は何回言えばわかるんだ!何回言えば!
それが、FBIの仕事だろうが!」

デスクを激しく叩いて、ウィルソン捜査官を叱責するヘッドリー特別捜査官。

※ここで、サウスダコタ州バックホーンの事件とラスベガスがつながり、FBIがダギーとジェイニー・Eの捜索に乗り出す。
ダイアンと(おそらく)バッド・クーパーとのメッセージのやりとりの中で登場した“ラスベガス”ともつながった。


サウスダコタ州バックホー

再び、FBI一行が宿泊中のホテルの一室。

「ありがとう、ダイアン」
「ええ、じゃあ」

退出するダイアン。

「さっき、ここへくる前にツイン・ピークス
トルーマン保安官と電話で話をしたんだが
発見されたローラ・パーマーの日記の一部に
手がかりになりそうなことが書かれているそうだ
どうやら、クーパーが二人いると読めるらしい」

「そして、昨夜、
またしてもモニカ・ベルッチの夢を見たよ」
「やれやれ」
「私は捜査でパリにいた
すると、モニカから電話が
とあるカフェで会いたいという誘いの電話だった
話したいことがあると言うんだ
約束のカフェで落ち合うと、クーパーもそこにいた
だが、あいつの顔は見えなかった
モニカはとても感じが良くて、友達を連れていた
一緒にコーヒーを飲んだ
そして、モニカが古い格言を口にした」

私たちは夢を見て、夢の中に生きる
夢見人のようね

「私たちは夢を見て、夢の中に生きる
夢見人のようだと、彼女は言った
私はわかると答えた
すると、モニカは、
“でも、夢見人は誰?”と」

「そして、私は強烈な不安感に襲われた
モニカが私の背後を見て、
私にもそちらを見るよう合図してきた
何かが起きているらしかった
振り返るとそこには、昔の私が見えた
もう何十年も前、フィラデルフィア支部のオフィスにいる私の姿だった
その時、私は夢で見たことを案じるクーパーの話を聞いていた」

ゴードン、今日は二月十六日、時間は十時十分だ
とうとう、僕が夢で見たと言っていた日が来たんだ

「そうあれは、フィリップ・ジェフリーズ現れ、
現れなかった日だ」

「その日、オフィスに現れたフィリップ・ジェフリーズはさっと腕をのばして、クーパーを指差した
そして、私に言った」

ここにいるのは誰だと思う?

「クソぉ、すっかり忘れていたが、
これは考えてみるべきだ
興味深い!」
「ええ、私も思い出してきましたよ」

※ゴードン・コールが見た夢によって、二十五年前のフィリップ・ジェフリーズとクーパーの言動が大きな意味を持ってよみがえる。
デイル・クーパー、ゴードン・コール、ウィリアム・ヘイスティングス、オードリー・ホーン、夢見人は何人も登場する。


ツイン・ピークス:保安官事務所

会議室では、ブリッグス少佐がメモに残した場所、
ジャック・ラビット・パレスへ行くための準備が進んでいる。
ボビーがサンドイッチを調達してきた。

トルーマン保安官がチャドと一緒の会議室に入ってくる。

「古い話なんだよ、チャド
お前が来る、ずっと前のな」
「どこ行くんだよ?」
「山に登るんだ!」

ホークはそう言うと、チャドに銃を向ける。
ボビーがチャドの銃を奪い、保安官が手錠をかける。

「そしてチャド、お前を逮捕する!観念しろ」
「な、なんだよ、それ?どういうこったよ?」
「わかってるだろ?
アンディ、ボビー、下へ連れて行け!」
「こんなの大間違いだからな!」
「間違いを犯したのはお前だ!
この何ヶ月、見張ってたんだよ!
こいつのバッヂを取り上げて、ぶち込んどけ!」
「こんなの大間違いだからな」
「黙れ!」

※リチャード・ホーンに対する保安官への告発の手紙を握りつぶしたチャドが逮捕される。
ただ、チャドに対する容疑は犯罪の隠蔽だけではない様子。
おそらく、麻薬取引等の犯罪にも関与していたものとみられる。


ツイン・ピークス:山中

トルーマン保安官、ホーク、アンディ、ボビーの四人がブリッグス少佐が残したメモの場所
ジャック・ラビット・パレス近くに到着する。

場所を知るボビーを先頭に山の中に入って行く四人。

「この道をいつも通ってた
親父の傍受基地がこの先にあったんだ
今はもう、何にも残ってないけどね」
「君のお父さんはそこで何をしてたんだい?」
「さあね、最高機密だったから
ガキの頃に何度か連れてきてもらったけど
覚えてるのは、機械がたくさんあったことだけ
でも、よくここに来たんだ
ちょっと待って」

そう言うと、ボビーは大きな木の切り株(?)に近づいて行く。

「ここだよ、ジャック・ラビット・パレスは
親父とここに座って
よく一緒にホラ話を作ったもんだ」
「じゃあ、ここから253ヤード、東だな」
「待った!ここの土をポケットに入れないと」
「これもお前のお父さんのホラ話じゃないといいんだがな」
「ですね、確かに
でも違うでしょ、じきにわかるはずだ
親父には一人でうろつくなって言われてた」
「行こうか」

土をポケットに入れ、東へ向かう四人。

東に向かって山の中を歩いていくと、
白い煙が立ち込める場所に出る。
煙の中から見えてきたのは、
全裸で横たわる女性。

女性は生きているが、目を塞がれている。
ブラックロッジから飛ばされたクーパーが出会った女性(Naido)、宇宙空間に飛ばされたかに思われた彼女だった。
彼女は手を握ったアンディに何かを訴えようとしているが、言葉にならない。

「ちょうど、二時五十三分だ」

その時、上空に、渦が出現する。
バックホーンでFBIの一行が遭遇した渦と同じものだ。
呆然と渦を見上げる四人。

アンディは握っていたNaido の手を離し立ち上がる。
次の瞬間、アンディの姿は消え
巨人の前の椅子に座っている。

I am the Fireman.
私が消防士だ

そう言うと、消防士は手の平をアンディに向けた右手を上げ、そして下げると
アンディの手に香炉のようなものが乗っている。
アンディの頭上で白い煙がひとかたまりになる。
アンディが頭上を見上げると、
そこには天窓(のようなもの)がある。

そこに次々に映し出されるのは、
エクスペリメント、エクスペリメントが生み出した“ボブ”、Woodsman が蠢いていたガソリンスタンド、Woodsman (「火、あるか?」)、電線、ローラの事件を聞いて叫ぶ女子高生、赤いカーテン、天使に囲まれたローラ・パーマーのポートレート、全裸で横たわるNaido 、クーパーとバッド・クーパー、着信のランプが点滅している保安官事務所の電話、ルーシーをある場所へと誘導しているアンディの姿、何かを訴えようとしているNaido、そして、ひき逃げ事件の現場近くの電信柱の数字“324810 6”。

白い煙が香炉のようなものにスッと吸い込まれる。
次の瞬間、香炉(のようなもの)が消え
アンディの姿も消える。

ジャック・ラビット・パレスに戻っているトルーマン保安官、ホーク、ボビーの三人。
三人が茫然とたたずんでいると、
Naidoを腕に抱いたアンディが姿を現す。

「この人を連れて山を下りよう
とても重要な人だけど、命を狙われている
体調は問題ない
留置場で保護しよう、あそこなら安全だ」
「わかった」
「このことは誰にも言わないように」

何か使命を帯びたような決然としたアンディの態度に圧倒される三人。

「なあ、俺たち、どうなったんだ?」
「わからない、何かあった
でも、何も思い出せないんだ」
「俺もだよ」

裕木奈江演じるNaidoが再び登場。
(Naidoの登場シーン、詳しくはこちら👉ツイン・ピークス The Return Episode 3 〈第3話〉 - 極私的映画案内
アンディとルーシーは、このドラマの中ではコミックリリーフ的存在だが、シリーズもここへきてアンディに重要な役割を与えている。
この世界の悪(火)を正す(消す)ために、
巨人(=消防士)から大きな使命を与えられた。


ツイン・ピークス:保安官事務所

留置場では、裸だったNaidoにルーシーがパジャマとガウンを着せている。

留置場に入れられていたチャドと酔っ払いが騒いでいる。
アンディに悪態を吐くチャドの言葉をオウムのように繰り返す酔っ払い。
酔っ払いは顔面から出血している。

「お前は悪事を働いた悪い人間だ!
保安官助手の名前を汚した!」

チャドを一喝し、アンディはルーシーを連れて出ていく。

言葉にならない声をあげるNaidoを真似する酔っ払い。
留置場はさながら動物園のようだ。
耳を塞ぐチャド。


ツイン・ピークス:グレート・ノーザン・ホテル

グレート・ノーザン・ホテルの搬入口。
警備員のジェームズ・ハーリーと同僚のフレディ・サイクスが配達の車を待っている。
フレディは緑色のガーデニング用手袋をはめた右手でクルミを割ろうとするが、
砕けてしまって、うまくいかない。
見かねたジェームズがクルミ割りで割ってやっている。

「そこの木箱はどうするの?」
「何もしなくていい、朝、そこにリネンを置くんだ
その方がラクらしい、ほらっ、食え
焦るなって、大丈夫だから」
「わかったよ、ジミー」
「ふーっ、あと一件配達が来たら上がりだ
ロードハウス、行けるぞ」
「誰が歌うの?」
「さあな」
「レネーに会えるの、期待してるとか?」
「ああ、かもな」
「でも、人妻なんでしょ?」
「わかってる、お前、いくつだ?フレディ」
「もうすぐ二十三」
「二十三の頃を思い出すよ(笑)
今日は俺の誕生日なんだ」
「えっ、ホントに?
そっか、誕生日おめでとう!ジミー
こんなとこで、なんだけど」

「なあ、その手袋、ホントに外せないのか?」
「ああ、ダメだね」
「どうなってんだ?」
「ああ、これは僕の一部だ
前に医者が外そうとしたんだけど、血が出ちゃってさ」
「どこでそれを?」
「そういうの、話すなって言われてるから」
「今日は俺の誕生日だぞ、教えてくれよ
なあ、誰にも言わないから」
「いやあ、言っても信じないと思うけど…」
「なら、言ったっていいだろ?
フレディ、頼む、聞かせてくれよ、言えって!」
「そうだね、医者には言ったんだし
まあ、話してもいいか、今日はあんたの誕生日だしね
まだ、実家にいた頃の話だ」
「実家って?」
「ロンドンの下町の方、イーストエンド
ちょうど半年くらい前かな
友達とパブに行った帰り道にさ
ひとりで歩いてたんだ
近道の路地に入った時、いきなり不思議な感覚がした
人生を無駄にしてるって気付かされたんだ
毎晩ダラダラと、パブで呑んだくれてる暇があるなら
人助けをするべきだってね
そんな風に感じるようになったその夜、僕
そこの路地に箱が積み重なってるのを見て
そこに飛び込んだ、ちょっとその、ほらっ、ふざけてね
高く積まれてた箱に飛び込んだんだ
そしたら、いきなり、宙に浮かんでる巨大な渦巻きに僕の身体が吸い込まれて行った
気付いたら、なんか、
どこか、わからない場所に浮いててさ
なんか不思議な空間にいたんだよね、僕
そこには男がいて、自分では消防士だと名乗ってた
そして、僕に言ったんだ
“お前の家の近所のホームセンターへ行け
緑色のガーデニング用手袋が並んだ棚がある
その中に一つ開封されて、右手用しか入っていない袋が置かれてる
それを探して買い、お前の右手にはめろ
そうすれば、お前の右手は巨大な杭打ち機のようなパワーを備えるだろう”って」

「気付いたら朝で、自分の部屋で目が覚めた
僕は慌ててベッドを出て、髪の毛をとかした
で、下へ降りて、お茶を一杯
うそっ、今のくだりはジョークね
で、すぐ近所のホームセンターに駆け込んで
片手の手袋を探した、そしたら、なんとその通り!
右手用だけが入った袋が見つかったんだ
早速レジへ持って行って、それを出したら、
店員にこう言われたんだ
“それはお売りできません
袋が開いてないのをお持ちください”
だから、言った
“いいんだよ、これが欲しいんだ”
“でも、それはお売りできません”って
で、言った
“あのさ、おにいさん、
僕はこの片手の手袋が欲しいの
お金なら、ちゃんと全額払うから”って
“いいえ
袋が開いてしまってますから、お売りできません”
ったく、そういうヤツのことを僕の地元じゃ
こう呼んでるんだよね、一存野郎!
ヤツら融通きかないし、変なルールにこだわって
人の邪魔ばっかするんだよな
いつだって、“できません、私の一存じゃ決められない”
そのミスター・一存に言ったんだ
“とにかく、僕はこの手袋を買う”って
で、レジで金を払って出口へ向かった
そしたらそのミスター・一存がピューマみたいに追って来て
叫び続けるんだよ
開封されたものは売れません!”って
僕はドアを通り抜けて、通りへ出た
そいつがついてこないことを祈りつつね
走りながら、手袋をはめた
で、少し走るスピードを落としたら
いきなり、ミスター・一存がレッドカード並みのタックルをかましてきて、地面にふっ飛ばされた
本能的に身を守ろうとして僕は
手袋をした手でそいつの頭を殴った
何か砕ける音がして
そいつが何か言おうとしたんだけど
首を折っちゃったみたいでさ
その瞬間、思い出したんだ
空の上のあの男に言われた言葉を
“その手袋をはめたら
ツイン・ピークスへ行け、アメリカへ行け
ワシントン州ツイン・ピークスへ行け
そこへ行けば、お前の運命が見つかる”って
それでここにいる訳、あんたの誕生日に
誕生日、おめでとう!」
「あっああ、ありがとな、すごい話を聞かせてくれて」
「こちらこそ、ですよ」
「ああ、でもなんでかな?
なんで、その消防士はお前を選んだんだろう?」
「それ、いい質問!
僕も同じことを聞いたんだ
“なんで、僕なの?”
そしたら、“何が悪い?”って
で、ツイン・ピークス行きのチケットを買いに行ったら
“もう、取れてる”って言われたんだ
ああ、そうだ、ボイラーのチェックに行かないと」
「そうだな、お前は配達を待て
書類にサインを忘れるなよ
ボイラーは俺が」

ボイラーのチェックに向かうジェームズ。
緑色の手袋の右手をしみじみ眺めるフレディ。

ボイラー室では、ベンジャミン・ホーンのオフィスと同じ奇妙な音が聞こえている。
音の出所を探るジェームズ。

※《第2話》でジェームズと一緒にロードハウスに来ていた若者は、ロンドン出身のフレディ・サイクスだった。
やっぱり、思った通り、
あの緑色の手袋には大きな意味があった!
(詳しくはこちら
👉ツイン・ピークス The Return Episode 2 〈第2話〉 - 極私的映画案内
巨人(=消防士)は、アンディに与えたように彼にも大きな役割を与えていた。
緑色の手袋をはめたフレディの右手によって何がなされるのだろうか?
二人の会話に登場するレネーとは、ロードハウスでジェームズの歌を聴いて涙を流していた女性のこと。


ツイン・ピークス:Elk's Point #9 BAR

バーに向かって歩いてくるのは、セーラ・パーマー。
吸っていたタバコを捨て、店に入って行く。

ビリヤードを楽しんでいる客、飲んでいる客
店内はそこそこ賑わっている。
カウンター座ったセーラはブラッディ・マリーを注文する。
タバコに火をつけるセーラ。
カウンターの隅に座っていた男が隣りの席に移ってきて、セーラに話しかける。

「淋しく、ひとり飲みか?」
「放っておいて欲しいんだけど、お願い」
「随分、失礼じゃねえか」
「わざと、そうしたからね
戻ってくれないかしら?
自分の席に、お願い」
「どこにいようと自由だ、自由の国だからな
俺の好きにやる、好きにやるからな、クソあま!
あんた、レズの男役なんだろう?
そうだよ、見りゃあ、わかる
あんた、いかにもレズの男役って面してるよな
なあ、女を食いてえんだろう?」
「あんたを食ってやる」
「そう来たか、クソ女が惨めったらしいもんだなあ
なんだったら、その貧相な乳、俺がもぎ取ってやろうか?」

すると、やおら男に顔を向けたセーラは顔面を仮面のように外してみせる。
そこには、薬指が異様に長い左手と
歯をむき出した大きな口が見える。

「どう、これでもホントにやってみたい?」

セーラはそう言って顔面を元に戻すと、
一瞬で男の喉笛を食いちぎる。
自分でやったことに悲鳴をあげるセーラ。
飛んでくるバーテンダー

「どうなってんだ?何があった?」
「いきなり倒れたの!わからない」
「ウソだろ?首が半分、なくなってるぞ!
ちょっと、あんた、なんかしたんじゃないのか?」
「なんでよ?見てたでしょ?
私はただ座って飲んでただけよ」
「おーい、警察呼んでくれ!
カウンターの客が死んだ
調べてもらえば、わかる」
「ええ、不思議なこともあるもんね」

怯えた目つきでセーラを見つめるバーテンダー

※ブラックロッジでローラ・パーマーがクーパーにやってみせたように、顔面を仮面のように外してみせたセーラ・パーマー。
パーマー家の受難の始まりは、ローラを殺したリーランド・パーマーではなくセーラの過去に起因するんじゃないか?


ツイン・ピークス:ロードハウス

ボックス席の女二人組、メーガンとソフィー。

「あんなクソ溜めに行ったりするからだよ」
「そうじゃない」
「そこでハイになってんでしょう?」
「いや、違うってば、自分の部屋だよ
部屋でぶっ飛んでんの」
「じゃあ、あんなとこ行くの、やめな」
「だから、誰が行くって言った?」
「そのセーター、いいね、どこで盗んだの?」
「ポーラのだよ」
「すごく、いい
ねえ、ビリー、見かけた?」
「いいや、二、三日見てない」
「ビリーに会ったの、あんたが最後らしいからさ」
「マジで怖かったんだから
うちでママとキッチンにいたらさ
確かおじさんもいたと思うけど、どうだったかな?
とにかく、窓からビリーが来るのが見えたのね
二メートル近いフェンスなんだけど
それを飛び越えて、裏庭に入ってきてさ
ものすごい勢いで裏口に向かってきたわけ
ビリーは窓越しに私のこと見えてたと思うんだけど
そのまま裏口を開けて
よろよろキッチンに入ってきたの
私が叫び出して、ママも叫んでたと思う
そしたら、ビリーの鼻と口から血が吹き出し
シンクに頭を突っ込んだと思ったら
血が滝みたいに流れ出したわけ
それから、ビリーはこっちを振り返ったの
全身血まみれで、もう不気味でさ
で、裏口から飛び出してった
こっちはもう、はあっ?て」
「なんで、誰にも言わなかったの?」
「いや、どうしていいか、わかんなかったんだもん
ビリーがどうしちゃったのか、わかんないし
それに、ビリーとうちのママ、なんかあったからさ」
「えっ、マジで?」
「マジで、最近までは絶対そうだった
なんか時々そういう空気、感じてたんだ
ビリーの名前が出ると、ママの顔、緩むから」
「ママって、なんて名前?」
「ティナだけど」
「ビリーは逃げて、それっきり?」
「そうだよ、あの時も
キッチンにいたのは十秒くらいだったと思う
それでホント、ものすごい速さで出て行ったの
その後、キッチンの床が血だらけで
壁にも飛び散っててさあ
ママと二人で掃除すんの、ホント大変だったんだから
おじさんがいたかどうか、思い出せないなあ」


ロードハウスの今夜のゲストはLissie
曲はこちら『WILD WILD WEST 』👉YouTube

※毎回、半ばお約束になっているラストのロードハウスの客の会話。
これには大した意味はないと思っていたが、
今回は、意味、大あり!
オードリー・ホーンがその行方を探していたビリー(リチャード・ホーンにトラックを盗まれた)に最後に会ったというティナの娘がこのシーンに登場するメーガンだった。
《第12話》では、オードリーの夫チャーリーがビリーの行方を聞くため、ティナに電話をかけている。
オードリーは鼻と口から出血しているチャーリーの夢を見たと言っていた。
ティナがチャーリーに話したのは、ここでメーガンがソフィーに話していたビリーの様子だったのだろう。
詳しくはこちら
👉ツイン・ピークス The Return Episode 12 《第12話》 - 極私的映画案内

そう言えば、《第7話》のラストで、
RRダイナーに誰かがビリーを探しに来ていた。
(「ビリー、見なかったか?」)

ちなみにソフィーを演じているのは、
現在のデヴィッド・リンチ夫人であるEmily Stofle 。


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ゴードン・コールとフィリップ・ジェフリーズが担当した“青いバラ事件”との関連、ダイアンとジェイニー・Eの関係、サウスダコタ州バックホーンとラスベガス、Naidoの生還。
残りあと5話、ということで、バラバラに思えた点と点が線になってきたという印象。
シリーズも大詰めです。
赤ちゃんクーパーはどうなる?

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⚫︎ツイン・ピークス The Return (全18回)
TWIN PEAKS THE RETURN
監督:デヴィッド・リンチ
脚本:デヴィッド・リンチ,マーク・フロスト
音楽:アンジェロ・バダラメンディ


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旧バージョン持ってたけど、ブックオフに売ってしまった。。。

👇ゴードン・コールの夢に、“モニカ・ベルッチ”として登場するモニカ・ベルッチ
こちらは、モニカ・ベルッチが、
テレビショウのホストとして登場する『夏をゆく人々

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