極私的映画案内

新作、旧作含め極私的オススメ映画をご案内します。時々はおすすめ本も。

ピエロがお前を嘲笑う

最後に嗤うのは誰だ

こうと分かっていたら違う行動をしていた
透明人間のままでいた
名無しのままで
でも今は名前がある
最重要指名手配ハッカー

僕は誰?
僕はベンヤミン
これは僕の物語


自称“WHO AM I”と名乗る男が
警察(ユーロポール)に出頭してくる。
ハッカー集団のことを話す」と。


全て繋がっている
それは一本の糸とは違う
張り巡らされた網(ネット)
それに僕は捕まった

〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜
スーパーヒーローに憧れていた少年ベンヤミン
彼が持っていた超能力は“透明人間”。
スーパーマンバットマンのように
不幸な生い立ちだって彼らに負けてなかった。
父親はフランスに蒸発、母親は8歳の時に自殺、
以来祖母に育てられ、今では年老いた彼女の面倒をみている孤独な青年ベンヤミン

宅配ピザの配達をしているベンヤミン
ある日配達先の大学の図書館で
中学の同級生マリと再会する。
ベンヤミンは当時マリのことが好きだったのだ。
マリは彼に気付かずふざけて言う。

「試験問題を盗めたらもう100ユーロ」

14歳の時にコンピューターに夢中になって以来ハッキングの技術を磨いてきたベンヤミンはインターネットの世界に無限の可能性を見い出す。
親しい友人もいないベンヤミンの居場所は
インターネットの世界、
ハッカー集うダークネットの世界だった。
ベンヤミンはマリのために試験問題を盗もうと大学に侵入するがあえなく警備員に捕まってしまう。
犯罪歴のなかった彼は50日間の社会奉仕作業を言い渡される。
しかし、そこで彼に大きな運命の転機が訪れる。
「何をやった?」
作業中に話しかけてきたのはマックス。
「サイバー犯罪」
答えたベンヤミンをマックスはあるパーティーに誘う。
マックスもハッカーだったのだ。
豪邸に集まった多くのパーティー客の中には
マリの姿もあった。
ベンヤミンを仲間のシュテファン、パウルに紹介したマックスは早速力を見せてみろと言う。
部屋にあったパソコンで
近隣一帯を停電させてみせるベンヤミン
しかし、その時パトカーのサイレンが聞こえてくる。
慌てるベンヤミンに停電のせいじゃないと言うマックス。
豪邸はマックスの家ではなかったのだ。
どさくさに紛れマリを連れ二手に分かれて逃げる5人。
そこでようやくベンヤミンに気付くマリ。

「思い出した、ベンヤミン・エンゲルね
修学旅行で置いていかれて1人で電車で帰った」

共にダークネット界のヒーロー、スーパースターであるMRXを崇拝するベンヤミンとマックスはすっかり意気投合する。
MRXのルールは3つ。

その1 安全なシステムはない
その2 不可能に挑め
その3 サイバー世界と現実世界を楽しめ

マックスはベンヤミンに言う。

ハッキングは騙し
ソーシャル・エンジニアリングだ。
人は騙されやすく、争いを避けたがる。
この2つを利用し欲しいものを手に入れる

Clown Laughing At You
ピエロがお前を嘲笑ってる
CLAY

ベンヤミン、マックス、シュテファン、パウルの四人はCLAYと名乗り、
極右政党の集会を皮切りに金融業界、
ネット通販、ポルノサイト、新聞社、大手家具チェーンと次々にハッキング攻撃を仕掛け
その名を知られる存在となっていく。

しかし、上には上がいた。
欧州中央銀行 、ドイツ連邦軍といった国際的な標的を次々と攻撃するFR13NDS
ロシアのサイバーマフィアとも言われる彼らは盗んだデータを闇サイトで売り渡していた。
メンバーの4つのハンドルネーム のうちセクテッド、トウボート、クリプトンの3つは判明していたが後の一人は分かっていなかった。

一方、マックスは焦れていた。
ネットの世界で有名になったCLAYの活躍に対しリスペクトするMRXはまったくの無反応だったのだ。
マックスはMRXに認めてもらいたかったのだ。

そんな時MRXから接触が。
彼からのプレゼントは欧州サイバー犯罪捜査責任者ハンネ・リンドベルクがユーロポールに送った特捜部の極秘捜査資料だった。
そこにはクレイについての記述も。

無害なグループ
大物ハッカー集団ではない

プレゼントの目的はひとつ。
CLAYなど眼中にないと思い知らせるためだった。

憤ったメンバーにベンヤミンはもっと大きな標的、
連邦情報局を狙うことを提案する。

計画では連邦捜査局のサーバーに侵入し、
コピー機を操作するだけのはずだった。
しかし、ベンヤミンは局員のリストも盗み出していた。

連邦捜査局侵入という大仕事を成し遂げた彼らはクラブに繰り出す。
人生最高の夜、得意絶頂のベンヤミンだったが、
マックスがマリにキスする場面を目撃、
腹を立てショックを受けた彼は
盗んだ局員リストをMRXに送ってしまう。

翌日、FR13NDSのメンバー、クリプトンが殺害される。
クリプトンは連邦捜査局の情報提供者だった。
MRXはFR13NDSの最後のメンバー。
彼がデータを売ったのだ。
遺体の傍にベンヤミンが盗んだ局員リストがあったことでクリプトン殺害の容疑がCLAYにかかる。

責任を感じたベンヤミンはMRXに接触を図る。

「FR13NDSの1人だな?僕らも入りたい」

するとMRXはこう命令する。

デカイ獲物をもう一度やってみろ
ユーロポールにトロイの木馬を仕込め

これでMRXは遠隔操作で捜査を監視、
操ることも出来る。
CLAYはMRXの正体を暴き濡れ衣を晴らすため
MRXのコンピュータにトリックを仕掛ける。
その名も妊婦の木馬
MRXがユーロポールのシステムに侵入するとMRXの端末に入れるのだ。

オランダ ハーグ ユーロポール本部
侵入の難易度は、連邦捜査局の比ではなかった。
侵入を諦め、ホテルの部屋で寝入っているメンバーを置いてベンヤミンは一人ユーロポール侵入を決行する。
彼は見学者のビジターパスを拾っていたのだ。
「食堂にサイフを置き忘れた」
昼間の見学者を装い、何とか警備員に中に入れてもらった彼は食堂のテーブルの下に偽のアクセスポイントを仕掛けることに成功する。

しかし、妊婦の木馬のトリックをMRXは見抜いていた。
居場所を知られたベンヤミンは謎の二人組の男(実はFR13NDSのメンバー)に追われる。
追っ手を振り切りようやくホテルに戻ったベンヤミンを待っていたのは、殺されたマックス、シュテファン、パウルの三人の遺体だった。

〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜
ここまでは出頭したベンヤミンが供述したこと。
(以下ネタバレにつき、本編をご覧になってからお読みになることをおすすめします。)


奴の話には大きな穴がある

証拠隠滅のため火をつけたとベンヤミンが言った祖母の家は焼けていなかった。
マリは卒業後ベンヤミンには会ってないと証言し、
医師は自殺したベンヤミンの母親は解離性同一性障害、四人の人格を持つ多重人格だったと言う。
この病気はトラウマや薬の過剰摂取によって遺伝することもあると。
殺されたはずの仲間の遺体は発見されなかった。

信頼できない語り手
小説では一人称の語り手をこう称し、
ストーリーをミスリードすることがある。
ベンヤミンもまた信頼できない語り手。
彼の供述が真実であるかどうかは疑わしい。

ベンヤミンが解決しなければならなかった事】

  1. “透明人間”に戻ること
  2. 仲間を守ること

MRXの逮捕に協力する代わりに証人保護を求める
?しかし仲間の遺体がなかったことが説明出来ない
?母親が患っていた多重人格という病気を利用する
?仲間3人はベンヤミンの別人格ということになり最早存在しない
?しかし精神疾患者には証人保護は適用されない
?MRXを警察に売ったことで命を狙われる
?「冷たくみられるけれど孤独なだけ」というハンネの良心に訴える

これを成し遂げるためには自らの物語、
ベンヤミンの物語を二転三転させる必要があったのだ。


本作のオリジナルタイトルは『WHO AM I』。
このタイトル自体が伏線であり、
スリードの要素でもある。
多重人格がオチになっている作品は他にもあるので、
そこで話が終わっていたら単なる二番煎じに終わっていただろう。
所々ご都合主義に感じるシーンはあれど、
もうひとひねりしたところにオリジナリティを感じた。

手の中の四つの角砂糖が一つになり、
再び四つになる。

これでハンネも真相に気付く。
ベンヤミンがハンネに見せるこのマジックがストーリー全体のネタバレになっているところもなかなかニクい。

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●ピエロがお前を嘲笑う
/Who An I - No System Is Safe
(2014 ドイツ)
監督:バラン・ボー・オダー
脚本:バラン・ボー・オダー,ヤンチェ・フリーゼ
出演:トム・シリング,エリアス・ムバレク,ヴォーダン・ヴィルケ・メーリング,アントニオ・モノー・Jr.,ハンナー・ヘルツシュブルンク,トリーネ・ディルホム



ハッカーが集うダークネットの世界を
地下鉄の車内に変換して見せているのが面白い。
ハッカー達が皆仮面をつけているのもネットの世界の匿名性を良く表している。
複数回観ることでいろいろ見えてくる作品。
冒頭取調室でのベンヤミンのナレーション(「全て繋がっている〜」のシーンとマックスがマリにキスしてるシーンをコマ送りで見てみることをおすすめします。
この監督、なかなか芸が細かい!


公式サイトはこちら?映画『ピエロがお前を嘲笑う』公式サイト

予告編はこちら?このトリックを見破れるか!?映画『ピエロがお前を嘲笑う』予告編 - YouTube

?ハリウッドリメイクも決まっている『ピエロがお前を嘲笑う』のソフトは現在のところリリースされていない模様。
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