極私的映画案内

新作、旧作含め極私的オススメ映画をご案内します。時々はおすすめ本も。

ビル・カニンガム&ニューヨーク

 

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ファッションは心意気!


最高のファッション・ショーは

常にストリートにある。

じっと待ってなどいられない。

探し出すんだ。

“見たこともない楽園の鳥”を。

とびきりエレガントな女性や抜群のファッションを。

ニューヨーク・タイムズ紙のファッションコラムと社交コラムを担当する名物ファッション・フォトグラファー、ビル・カニンガム。
ビル・カニンガム&ニューヨーク』は
そんな彼に2年間密着したドキュメンタリーだ。
今作の実際の撮影期間は2年だが、
実はそれ以前にビルとの交渉に8年かかっているという。
彼がそれほど撮影を渋ったのは、
彼が気難しいからというより、
むしろ慎ましい謙虚な人だからだと思う。

最初のカメラは友人のカメラマンにプレゼントされたもの。

友人はこう言ってビルにカメラをプレゼントしてくれたという。

 

ペンのように使え、メモをとるように

 

以来、彼は長年に渡ってニューヨークという街、
そして道行く人々のファッションを見てきた。
元はパリの清掃員の制服だという“青い上っ張り”を着て自転車に跨り、颯爽と飄々とファッションを切り取って行く。
彼の写真の軽やかさの根底には彼のフットワークの軽さがある。

彼は言う。

無料で着飾った有名人に興味はありません

何を撮るか?
というその視点においてビルには全くブレがない。
彼にはニューヨークのセレブ達、ファッション業界にもたくさんの知り合いがおり、
多くの人々に愛されているが、
知り合いだろうが有名女優だろうがVOGUEの名物編集長アナ・ウィンターだろうが、
彼のお眼鏡にかなわなければカメラのレンズが向けられることはない。
素通りである。
そんな彼の一貫した姿勢は、
彼が撮った写真を見れば良く分かる。
どんなハイファッションでキメていようが、
どれだけお金のかかったファッションだろうが、そんなことはまったく関係ない。
彼が見ているのは、
その人が服を選び着ることを
どれだけ楽しんでいるか?
結局、そういう心意気の部分なんだと思う。

 

ファッションは鎧なんだ
日々を生き抜くための
手放せば、文明を捨てたも同然だ
 
醜い事件が起こった時、
大きな災害に襲われた時、
ファッション誌の広告がひどく場違いに感じられることがある。
でも多分そういう時でも、
いやそういう時だからこそ何を着るかということは大事なのかもしれない。
ファッションは着る人に自信を与え、
日々に彩りを与え、
心を豊かにしてくれる。
何を着るかなんてどうでもいい。
ファッションセンスに自信がない。
そういう人たちへの彼のメッセージはこうだ。
 
誰にでもセンスはある
ただ勇気がないんだ
ファッションはどうでもいいなんて言わず
クローゼットを見てみよう

 

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⚫︎ビル・カニンガム&ニューヨーク
BILL CUNNINGHAM NEW YORK
                                (2010年  アメリカ)
監督:リチャード・プレス
出演:ビル・カニンガム,アナ・ウィンター,カルメン・デロリフィチェ,トム・ウルフ,エディッタ・シャーマン,パトリック・マクドナルド,デヴィッド・ロックフェラー

 
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カーネギーホールの上階の小さなアパートメントでファイルキャビネットに囲まれて暮らすビル。
食べるものにも関心はないし、
着るものについても「質素で飾らないものがいい。気取ったものは苦手だ」と言うが、
青の上っ張りも、マフラー代わりのセーターもとってもオシャレ。
何より、その人となりが最高にチャーミングなのだ。
 
※2016年6月25日、ビル・カニンガム氏は87歳で亡くなった。
ニューヨーク、いや世界中のファッション界が彼の不在を寂しく思うことだろう。

公式サイトはこちら👉映画『ビル・カニンガム&ニューヨーク』公式サイト

予告編はこちら👉『ビル・カニンガム&ニューヨーク』 予告篇 - YouTube
 
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