今月の読書、10月分、11月分をお届けします。
オススメは、高田郁『みをつくし料理帖』シリーズ。
今までなぜ、このシリーズと出会っていなかったのか?
■オリエント急行殺人事件/アガサ・クリスティー
講談社(講談社文庫)
久万嘉寿恵訳
Murder on the Orient Express/Agatha Christie/1934
この原作はもう何度読んだかわからないけれど、ケネス・ブラナー版の映画を観たので再読。
今までアルバート・フィニーがポアロを演じる1974年版(監督シドニー・ルメット)、デヴィッド・スーシェのTVドラマ版と観てきて(両方ともオチを知った上で)、これが一番面白くなかった。
なんだろなぁ、ケネス・ブラナーの「俺が、俺が」的な前にガンガン出てくる感じがイヤ。
ポアロはシリーズの主役ではあるけれども、特にこの作品の主役はポアロじゃないと思う。
- 作者: アガサクリスティー,山本やよい
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2011/04/05
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■みをつくし料理帖 八朔の雪/高田郁
角川春樹事務所(ハルキ文庫)
『鬼平犯科帳』の食べ物描写が大好きなワタクシが今までこのシリーズを読んでいなかったとは何たる不覚!
幼くして水害で両親を亡くし、奉公先も火事で失い江戸に出てきた澪は縁あって蕎麦屋つる屋で働き始める。
澪がこしらえる料理の数々はもちろんだが、つる家の主人種市をはじめ、澪を取り巻く人々の温かさが沁みる。
大工の伊佐三さんがつる家の今で言うシンクの高さを調整してくれるけど、これホント大事。高い方が絶対にラク!
いやあ、たまにはこんぶとかつお節でちゃんと出汁をとって料理したいなあとしみじみ。
〈収録作品〉
⚫︎狐のご祝儀/ぴりから鰹田麩
⚫︎八朔の雪/ひんやり心太
⚫︎初星/とろとろ茶碗蒸し
⚫︎夜半の梅/ほっこり酒粕汁
八朔の雪―みをつくし料理帖 (ハルキ文庫 た 19-1 時代小説文庫)
- 作者: 高田郁
- 出版社/メーカー: 角川春樹事務所
- 発売日: 2009/05/18
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■みをつくし料理帖 花散らしの雨/高田郁
角川春樹事務所(ハルキ文庫)
人気店になるとメニューを真似されたり、営業妨害されたりいろいろ大変ですよ!
「忍び瓜」作ってみました。
美味しかったけど、やっぱり胡瓜の旬はもう終わりだから今ひとつだったかも。
やっぱり暑い最中に、水分タップリの旬の胡瓜で作るから美味しいんですよね。
今はほとんどの食材は一年中手に入るけれど、このシリーズを読んでいると、「旬」って大事だなあとしみじみ感じるし、和食の豊かさにもあらためて気付かされます。
ふきちゃんが心置き無くつる家で働けるようになって良かった。
〈収録作品〉
⚫︎俎橋から/ほろにが蕗ご飯
⚫︎花散らしの雨/こぼれ梅
⚫︎一粒符/なめらか葛饅頭
⚫︎銀菊/忍び瓜
- 作者: 高田郁
- 出版社/メーカー: 角川春樹事務所
- 発売日: 2009/10/15
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■新生の街/S・J・ローザン
直良和美訳
東京創元社(創元推理文庫)
MANDARIN PLAID/S.J.Rozan/1996
シリーズ三作目はリディアがメイン。
舞台はNYの中国系アメリカ人社会。
今回の依頼人はリディアの兄の友人デザイナーということで、リディアの母もかつて働いていた縫製工場の裏事情など、いろいろ興味深い。
リディアは母や三人の兄の干渉を嫌っているけれど、それぞれが社会的に成功している三人の兄が常に気遣ってくれる、こんなに心強いことはないんじゃなくって?
まだ若いリディアにはわからないのか、わかっていても認めたくないのか。
- 作者: S.J.ローザン,S.J. Rozan,直良和美
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2000/04
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■罪の声/塩田武士
講談社
昭和の未解決事件「グリコ森永事件」をモデルにした犯罪小説。
日々いろんな事件のニュースに接していると昔の事件を思い出すこともないのだが、読みながらいろいろ記憶が蘇った。
そう、確かに脅迫電話は子供の声で録音したものだった。
この事件をモデルにした小説には高村薫の傑作『レディ・ジョーカー』があるが、あの声を録音した子供は今どうしているのか?という着眼は興味深い。これは、事件から30年以上の月日が流れた今だからこそのものだろう。
事件の真相は闇の中、でも、あの子供達はきっと今も何処かで生きているはずだ。
- 作者: 塩田武士
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2019/05/15
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- 作者: 高村薫
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2010/03/29
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- 作者: 高村薫
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『飢餓海峡』(監督内田吐夢)を観て『砂の器』『人間の証明』といったこの系譜の作品を思い起こしたばかりだったので、読み始めてすぐにラストが予想出来てしまったのはちょっとタイミングが悪かった。
相変わらず、将棋の世界には不案内で駒の進め方もわからないので、その辺りを十分楽しめなかったのは残念だが、“鬼殺しのジュウケイ”こと歴代最強の「真剣師」東明重慶のキャラクター造形は秀逸だと思う。
映像化されるとしたら、このキャスティングは重要な鍵になるだろう。
ちなみに、大宮北署は実在しません。
- 作者: 柚月裕子
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- 作者: 水上勉
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松本清張原作、何度も映像化されているが、やはりオススメは野村芳太郎監督のこちら👇
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- 作者: 松本清張
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- 作者: 森村誠一
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『ギケイキ2』への復習のための再読。
『湖畔の愛』はちょっと物足りなかったので、やっぱりこのグルーヴ感と飛躍!
これでなくっちゃねと思ったけれど、前回読んだ時に感じた義経の生意気さや弁慶の傲慢さはあまり感じなくて、二人の寄る辺なさや孤独が迫ってきた。
- 作者: 町田康
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本来ならば、大いに語りたいであろう壇ノ浦も何もかも、義経大活躍の下りはあっさりカットで、戦で名を挙げた義経は兄頼朝の目の上のたんこぶ的存在になっている。
義経は兄頼朝と共に源氏の再興を願っているのに!
ああ、義経の捨てられた子犬感が辛い。。。『ギケイキ2』は静御前との別れまで。
義経にとってはいよいよ辛い展開になる続編が待ちきれません。
- 作者: 町田康
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
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■贋作/ドミニク・スミス
茂木健訳
東京創元社
THE LAST PAINTING OF SARA DE VOS/Dominic Smith/2016
美術史と絵画修復を学ぶエリーは資産家弁護士マーティが所有する17世紀の女流画家サラ・デ・フォスの現存する唯一の作品「森のはずれにて」の贋作を製作する。
数十年後、故郷オーストラリアの大学で教えているサラは自分が描いた贋作と再会することになる。
過去に犯した罪の清算を迫られる展開だが、
因果応報とはならない意外性がいいし、17世紀を生きたサラの人生も同時に語られ、ストーリーに奥行きを与えている。
愛娘の死と蒸発した夫が残した借金。
苦労の多かった彼女の後半生が穏やかなものだったことに救われた。
- 作者: ドミニク・スミス,茂木健
- 出版社/メーカー: 東京創元社
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■ノアの羅針盤/アン・タイラー
中野恵津子訳
河出書房新社
NOAH'S COMPASS/Anne Tyler/2009
60歳にしてリストラされた教師リーアムは断捨離し小さなアパートに引っ越す。
しかし、引っ越し当日に強盗に頭を殴られ負傷、事件当日の記憶を失ってしまう。
人生後半に至って岐路に立たされた男の人生再生の物語。
取り立ててドラマティックな展開をみせるわけでもないのに読ませるのは、リーアムの元妻バーバラ、遣り手の弁護士姉ジュリア、個性豊かな三人の娘など主人公の周囲の女性陣のキャラクターが魅力的だからだろう。
引っ越しを手伝ってくれる末娘のBFダミアンのつかみ所のなさもお気に入り。
リーアムの新たな出発を素直に祝福したい!
- 作者: アンタイラー,中野恵津子
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2011/08/12
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■みをつくし料理帖 想い雲/高田郁
角川春樹事務所(ハルキ文庫)
今巻より新キャラクター版元坂村堂さん登場、つる家の常連となる。
天満一兆庵」江戸店の元料理人富三により佐兵衛失踪時の事情が明らかになるも、偽つる家がやらかした食中毒騒ぎで風評被害、ふきちゃんの弟健坊の家出騒動と騒々しいつる家の周辺。
伊勢屋の“弁天さま”美緒の一途な想いと澪の秘めた想い。
どちらの想いも先行きが明るいとは言えないのが切ない。
でも、澪さん、源斎先生の想いには気ずかず。柿って焼いて食べたことないけど、来年はやってみましょうかね。
来年はたくさんなるといいなあ。
〈収録作品〉
⚫︎豊年星/「う」尽くし
⚫︎想い雲/ふっくら鱧の葛叩き
⚫︎花一輪/ふわり菊花雪
⚫︎初雁/こんがり焼き柿
- 作者: 高田郁
- 出版社/メーカー: 角川春樹事務所
- 発売日: 2010/03/01
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■みをつくし料理帖 今朝の春/高田郁
角川春樹事務所(ハルキ文庫)
澪の幼馴染野枝ちゃんがあさひ太夫となった経緯が明らかに。このシリーズは、澪の料理人としての成長、「天満一兆庵」の再建、佐兵衛の行方、といろいろ気になるところだが、中でも気になるのがあさひ太夫の行く末。会うことすら難しい伝説の太夫、どうすれば野枝ちゃんを救い出せるのか?小松原の母の思いがけない来店、あらためて突きつけられる厳しい現実。おりょう伊佐三夫婦は元鞘におさまりひと安心。澪の怪我が気になります。
〈収録作品〉
⚫︎花嫁御寮/ははきぎ飯
⚫︎友待つ雪/里の白雪
⚫︎寒紅/ひょっとこ温寿司
⚫︎今朝の春/寒鰆の昆布締め
今朝の春―みをつくし料理帖 (ハルキ文庫 た 19-4 時代小説文庫)
- 作者: 高田郁
- 出版社/メーカー: 角川春樹事務所
- 発売日: 2010/09/15
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■リンカーンとさまよえる霊魂たち/ジョージ・サンダース
上岡伸雄訳
河出書房新社
Lincoln in the Bardo/George Saunders/2017
南北戦争真っ只中、幼い息子ウィリーを亡くしたリンカーン大統領はしばし納骨堂の息子の柩に寄り添い時を過ごしたという。
ソーンダーズはこの史実に着想を得たそうだが、何とも奇想天外。
納骨堂を訪れる大統領の姿に物見高い“さまよえる霊魂たち”が集まってくる。
ウィリーを何とか天国へ送り出そうと。
様々な文献からの引用、架空の人物が語る自らの人生、おびただしい声、声、声。
大きな歴史の分岐点。
しかし、歴史は英雄だけのものではない。
名もなき人々の物語の集積が歴史を作っていくということをあらためて考えさせる一冊だった。
- 作者: ジョージ・ソーンダーズ,上岡伸雄
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2018/07/24
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■大家さんと僕/矢部太郎
新潮社
人付き合いって結局のところ、適度な距離感の探り合いじゃないのかなと常々思っている。このお二人の場合は、(最初は戸惑いもあったようだし)大家さんのペースに矢部さんが巻き込まれた感が強いけれども、最終的にはお互いに得るものの大きい関係が作れたんじゃないかしら。一見チャラい矢部さんの後輩芸人が大家さんと矢部さんの関係に自然に馴染んでいて良かったなあ。
- 作者: 矢部太郎
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2017/10/31
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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