極私的映画案内

新作、旧作含め極私的オススメ映画をご案内します。時々はおすすめ本も。

これが私の人生設計


人生は短い!運をつかめ!


イタリア、アブルッツォ州の山村アンヴェルサで生まれたセレーナ・ブルーノ。
彼女は1歳と乳歯2本の時にはもう既に野心作を描いていたが、身内はその才能にまだ気づいていなかった。
彼女の才能に最初に気付いたのは幼稚園の先生だった。
セレーナはお人形遊びよりも
“建設業”に夢中!
村人は次々と他の田舎町に越していき、人口は半減。
それでもセレーナは
壁職人の父の仕事を手伝う毎日に満足だった。
高校の卒業制作の設計案が海外で賞を取り、
アップルのコンピュータ(スティーヴ・ジョブズのサイン入り!)を賞品としてゲット!
ローマ大学建築学部に進んだセレーナは優秀な成績で卒業すると、その後はモスクワ、北京、ドバイ、ワシントンと世界各国で修士号を取りまくり現在はロンドンで数々の現場を任されバリバリ働いていた。
しかし、仕事にはやりがいがあったが、
ロンドンのどんよりした天気にほとほとウンザリしたセレーナは故郷イタリアに帰ることを決意する。

次のステップを踏み出す時ね

ところが、故郷に帰ってみれば建設業界は男性優位。
いやハッキリ言えば、男尊女卑の世界
文句なしの輝かしい経歴を持つセレーナでも
なかなか仕事が見つからず、今の職場は地元民が死の三角地帯と呼ぶローマ郊外。
家具販売店でインテリアデザインのアルバイトで食いつなぐ日々。
建築の仕事といえば、
成金相手の霊廟のデザインくらいなもの。
更に泣きっ面に蜂、
セレーナは父親の形見のバイクを悪ガキ共に騙し取られ、バイクを追って荒廃した公共住宅団地に迷い込む。


住人でさえ自分の部屋がわからなくなるような画一的な公営住宅の作り。
そして、そこら中に水溜り。
そこでセレーナが目にしたのは、
“共同スペース案募集”の貼り紙。
これがセレーナの建築家魂に再び火をつける。

しかし、蓄えは一年で底をつき、
レストランでウェイトレスのアルバイトをすることに。
レストランオーナー、フランチェスコ
超ホットなバツイチ男!
店で働く女の子たちはみんな彼にメロメロ。
フランス語、ドイツ語、日本語までも操りメニューの説明をするセレーナにフランチェスコは目をとめる。

一方、ようやく面接にこぎつけたセレーナ。
採用と思いきや、契約書には
妊娠したら解雇の文言。
海外働いてきたセレーナにとってはあり得ない条項だった。

何かと親切なフランチェスコ
絶対に自分に気がある!とセレーナはすっかり思い込む(足マッサージはヤバいよ!)が、
実は彼はゲイだった!

すっかりその気になっていたセレーナと、
ゲイだということはセレーナも了解済みだと思っていたフランチェスコ
気まずいままだった二人はフランチェスコがセレーナのアパートを訪ねて仲直り。
二人は親友に。
公募の締め切りまであと10日。
アパートの立ち退きにあったセレーナはフランチェスコの家に間借りすることになる。

これで再び建築家モード!
再び団地を訪ね、不便に感じていること、
共有スペースには何が必要か、住民たちに聞いて回る。
女性たちが集まっておしゃべり出来る場所、
子供たちの遊び場、学生のための学習スペース。
住民たちの意見を設計案に反映させていく。

いよいよプレゼン当日。
応募者はほとんど男性。
勇気を奮い起こしプレゼンを始めようとすると、
審査員は応募者を
セレーナ・ブルーノではなく
ブルーノ・セレーナという男性だと思い込んでいることが発覚。
セレーナはとっさに
ブルーノ・セレーナは現在仕事で大阪に滞在中と嘘をつき、アシスタントのふりをしてプレゼンを切り抜ける。

セレーナの設計案は見事採用されるが、
設計士はブルーノ・セレーナ
設計案が正式承認されるまで3週間。
さあ、どうする?
セレーナ・ブルーノ!

セレーナがブルーノのアシスタント、ジュリア・コンティとして3週間詰めることになる設計事務所は、
所長に絶対服従
ところが、所長リパモンティはとんでもなく無能で実質の所長は彼の秘書のミケーラ。
バモンティはミケーラの献身の上に胡座をかく、
形ばかりの所長だった。
妊娠や性的嗜好、薄毛を隠して働き続ける所員、
所長のご機嫌をとるためにユヴェントスファン(本当はナポリのファン)を装う所員。
そんな設計事務所でセレーナはフランチェスコをブルーノの身がわりに正式承認までの3週間を乗り切ろうとするのだが。。。


この映画の製作は、
ローマ郊外に実在する公営住宅コルヴィアーレで採用された女性建築家グエンダリーナ・サリメイのリフォームプラン「緑の空間」がヒントになっている。
女性建築家が世界的に活躍することが珍しくないが、
ここで描かれるイタリア建設業界の男性優位の現状は多少の誇張はあれ現実のものなんだろう。
国によって違いはあれど、
女性というだけで正当に評価されなかったという経験は(女性であれば)誰にでも(多かれ少なかれ)あると思う。
しかし、女性が悔しい思いをしていることに対して、
意外と男性は無関心だし、忍耐を強いている人間は、
周囲の人間の我慢強さに鈍感だ。
この構図は、程度の差こそあれ、世界中どこの国のどの社会でも残念ながら一緒だろう。
そんな理不尽な状況の中で、
周囲を巻き込み協力を得て、
なんとか自分の仕事をやり遂げようとするセレーナの姿には誰もが共感できるはずだ。

周囲を巻き込むヒロインというのは、
ともすれば押しが強すぎて好感が持てないこともあるが、フランチェスコが言うように、
猪突猛進型だが、どこか間が抜けていて人がいいセレーナは放って置けないタイプだ。
しかし、ここぞという時には、はっきり主張し筋を通す強さも持つタフで魅力的なヒロインだと思う。

テンポよくスピーディなストーリー展開はコメディの必須条件。
本作はこの条件をクリアした楽しい作品であることはもちろんだが、観ればきっと元気をもらえる、
世の中の理不尽と闘うすべての大人に観て欲しい一本。

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これが私の人生設計/Scusate se esisto !
(2014 イタリア)
監督:リッカルド・ミラーニ
脚本:ジュリア・カレンダ,パオラ・コルテッレージ,フリオ・アンドレオッティ
出演:パオラ・コルテッレージ,ラウル・ボヴァ,マルコ・ボッチ,エンニオ・ファンタスティキーニ,コラード・フォルトゥーナ,ルネッタ・サヴィーノ,チェーザレ・ボッチ,フェデリカ・デ・コーラ,アントニオ・ダウジーリオ,フェリス・ファリーナ,フランカ・デ・シコ,フィロメナ・マクロ,マッテオ・フォティ,ステファニア・ロッカ,ジェノヴェッファ・サンドリーニ

※『ハリー・ポッター』シリーズでお馴染み、
ロンドン、キングス・クロス駅の9と3/4番線も登場!目を凝らしてよーく観て!



左から監督のリッカルド・ミラー二,セリーナ役のパオラ・コルテッレージ,レストランのセクシーなオーナー、フランチェスコ役のラウル・ボヴァ。
パオラ・コルテッレージは脚本にも参加、監督のリッカルド・ミラー二は実生活のパートナー。



男を作れ!とせっつくセレーナのママと言葉が訛りすぎていてセレーナさえ何を言ってるのかわからない伯母さん。いつも絶妙なタイミングで現れる。
二人が作る料理が美味しそう!
ご馳走になりたい!


公式サイトはこちら👉映画『これが私の人生設計』公式サイト

予告編はこちら👉世界を舞台に活躍してきた女性建築家が故郷イタリアに戻ったものの…!映画『これが私の人生設計』予告編 - YouTube


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