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極私的映画案内

新作、旧作含め極私的オススメ映画をご案内します。時々はおすすめ本も。

彼は秘密の女ともだち


本当の自分に出会うまで


化粧を施され美しいウェディングドレスを着せられたローラは今、棺に納められようとしている。
彼女は夫ダヴィッドと幼い娘リュシーを残して亡くなったのだ。

「ローラは親友でした
私の生涯の友…
出会った瞬間にひと目惚れしました
彼女も、そして私も
まだ7歳でしたが、“永遠の友達”だと確信しました」

「幼い頃と同じように、2人で約束しました
私はあなたに誓った
ローラ、この誓いを守り通すわ
私の命がある限り、
あなたの娘リュシーとダヴィッドを見守るわ」

7歳の時ローラが越して来て以来ずっと一緒だった
クレールとローラ。
お互い結婚後も近所に暮らし、
クレールはリュシーの名付け親になり、
二人はこれからもずっと一緒に年を重ねて行くはずだった。
しかし、彼女は旅立ってしまった。
ダヴィッドとリュシーを見守っていくと誓ったクレールだったが、葬儀後、まだダヴィッドに連絡出来ずにいた。
彼女自身ローラの死から立ち直れず、
仕事も手につかない状態だったのだ。
一週間休みをとり、ジョギングがてらダヴィッドを訪ねたクレールは、そこで思いもよらない光景を目にする。
リュシーにミルクを飲ませる金髪の女性、
それはウィッグをつけローラの服を着たダヴィッドだった。

驚いて帰ろうとするクレールを引き留めるダヴィッド。
彼は、結婚前からローラはダヴィッドの女装癖を知っていたこと、ローラがいた時は彼女の女性らしい存在に満たされ女装はしていなかったこと、ローラの死後ぐずるリュシーをあやすためにローラの香りが残る服を着たことを告白する。
ローラの香りに満たされ、彼女のいない苦しみが消え去ったと。

「僕を理解してほしい、ローラのように」

クレールに懇願するダヴィッド。

クレールがダヴィッドの女装癖を夫ジルに話そうかどうか迷っていると、
ダヴィッドから連絡が入る。

「会いたいんだ。
君と秘密を共有できてうれしい」

ダヴィッドとの関係をジルに疑われないようクレールは携帯の登録名をヴィルジニアに変更する。

リュシーを一週間ローラの両親に預けたダヴィッドは、クレールにショッピングに付き合ってほしいという。
そうヴィルジニアと一緒に。
ダヴィッドの女装に戸惑いながらも彼(彼女)のショッピングに付き合うクレール。
ショッピングをして、お茶を飲んで、映画を観る。
その時間は、まるでローラと過ごした時間が戻ったかのようにクレールには感じられた。
一方、ダヴィッドはヴィルジニアとして人目にさらされることで、これが本来の自分だと自覚を深めていく。
こうして二人は秘密を共有する女ともだちになる。


一緒に過ごすことでお互いローラの死から立ち直ろうとするがダヴィッドとクレールだったが、
その関係は次第に、(ローラの存在ぬきの)
ヴィルジニアとクレールの関係に発展していく。
本人の言うとおり、
ダヴィッドの女装はリュシーのためだけではない。
女装は、ローラの死をきっかけに彼の中の女性、
ヴィルジニアの存在がより大きくなったことの証だった。
そして、ヴィルジニアとの出会いによってクレールにも大きな変化があらわれる。
今までは華やかなローラの陰でどちらかといえば地味な存在だったクレール。
もちろんローラを愛していたが、
彼女に対するコンプレックスもあったはず。
辛い出来事ではあったがローラの死はクレールの中の本来の彼女を開放したのだ。
地味なパンツスタイルばかりだった彼女がスカートもはくようになり、小さなまとめていた髪を下ろし、
髪の色に映える赤いドレスを身に付ける。
彼女の愛車が、クレールの地味なファッションからは想像出来ない派手なMAZDAのスポーツカーだったことに驚いたが、これが本来のクレールの本質だったのだと思う。(彼女をこの車に乗せたのは、すごくいいチョイス!)

しかし、ヴィルジニアダヴィッドでもある。
ここがこの関係の一筋縄ではいかないところで、
二人は強く惹かれ合うものの、
クレールにとってダヴィッドと一線を越えることはローラへの裏切りで、男性の身体であるヴィルジニアとはセックス出来ない。
ヴィルジニアに惹かれている、
この自分の気持ちは一体何なのか?
クレールは混乱する。

クレールはローラとの出会いを一目惚れと表現しているが(フランス語ではどういうニュアンスなのか分からないが翻訳を信用すれば)、多分彼女には元々レズビアン的要素があったのかもしれない。
しかし、女装はしていても(ヴィルジニアであっても)、ダヴィッドが男性であることには間違いなくて、その場合クレールはレズビアンなのか?
ストレートなのか?

ダヴィッド=ヴィルジニア=ローラ
クレールにとってヴィルジニアはローラの生まれ変わり。
ダヴィッドにとってもクレールはローラの不在を埋めてくれる存在。
クレールはローラを失ってヴィルジニアと出会い、
本当の自分を見つけた。
一方、ダヴィッドはローラを失って自分の中のヴィルジニアと再会し、クレールに恋したのだ。
それは間違いない。


ラストシーン。
7歳(きしくもクレールがローラと出会った歳)になったリュシーを迎えるクレールとヴィルジニア
落ち着いた髪の色、
そしてパンツスタイルのヴィルジニア
クレールは大きなお腹。

クレールのお腹の子の父親はジルだろうか?
それともヴィルジニアだろうか?
ジルが父親であれば、ヴィルジニアになったダヴィッドをジルが受け入れ、ヴィルジニアとクレールは(かつてのローラとクレールのように)女ともだち。
(しかし、路上に立つ女装の娼婦に嫌悪感を露わにするジルのシーンもあった)
ヴィルジニア父親であるとすれば、
クレールが男性の身体のヴィルジニアを受け入れ、
多分ジルは二人の元を去ったのだろう。


女装はしていても、
妻も子もいる家庭を持っている人もいるし、
もちろん男性に惹かれる人もいる。
女装しているといっても、
性的指向は人それぞれで単純に一括りには出来ない。
ただ、自分が自分らしくいられる人と共に生きる幸せは誰もが求めているものだと思う。

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●彼は秘密の女ともだち/Une nouvelle amie
(2014 フランス)
監督・脚本:フランソワ・オゾン
原作:ルース・レンデル『女ともだち』
出演:ロマン・デュリス,アナイス・ドゥムースティエ,ラファエル・ペルソナ,イジルド・ル・ベスコ,オーロール・クレマン,ジャン=クロード・ボル=レダ,ブルーノ・ぺラール,クロディーヌ・シャタルアニタ・ジリエ,アレックス・フォンダ,ジタ・ハンロ

日本では唯一(と言ってもいいかも)新作がもれなく公開されるフランソワ・オゾン
前作『17歳』は、主人公と自分の違い過ぎる年齢(自分の子どもみたいな年齢)とあまりの美少女ぶりに感情移入するのが難しかったけれど、
今作は、クレール、ダヴィッド(ヴィルジニア)、
ジル、それぞれの立場で考えることが出来て色々と面白かった。
LGBTという言葉は大分ポピュラーになったが、
本当に人それぞれなので、簡単にカテゴライズすることはすれ違いや誤解の原因になる思う。




ロマン・デュリスヴィルジニアは素晴らしかった!
単純に女装するだけならラファエル・ペルソナ(実際監督の構想にあった)の方が美しかったかもしれないが、その仕草ひとつでダヴィッドの中のヴィルジニアを体現していた。
どちらかといえば、彼は男性としては華奢な身体つきだが(足がキレイ!)、髭は濃い。
それが逆にリアル。
本来は濃い胸毛もキレイに剃ってた!




アナイス・ドゥムースティエは
今回はじめましての女優さん。
とびきりの美人ではないけれど、
GIRL NEXT DOOR的な雰囲気がキュートで
クレールの混乱を身近に感じさせてくれました。



クレールとダヴィッドの二人の関係が怒涛の展開を見せるのに対して、ちょっと一人蚊帳の外で気の毒なクレールの夫ジルを演じたラファエル・ペルソナ。
こんな素敵な旦那さんにゴハン作ってもらったら
私なら絶対裏切りませんよ!




7歳のローラを演じたMayline Duboisちゃん
(写真上)。
彼女がもの凄い美少女だったので、
大人になったローラはどんな美人になったの?
と期待してたので、心の中で思わず
「えっ⁈」と絶句してしまいました。
ごめんなさい、イジルド・ル・ベスコさん。。。
(棺の中の彼女は美しかった!)
でも、容姿はクレールのコンプレックスになってるはずなのでローラが華やかな美人であることは重要。


公式サイトはこちら👉彼は秘密の女ともだち | 『フランス映画祭2015』公式サイト

予告編はこちら👉亡くなった親友の旦那が女装!?映画『彼は秘密の女ともだち』予告編 - YouTube


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