極私的映画案内

新作、旧作含め極私的オススメ映画をご案内します。時々はおすすめ本も。

マン・アップ!60億分の1のサイテーな恋のはじまり


つながる易しさと出会う難しさ

34歳の独身女性ナンシーは、
友人カップルの婚約パーティーに出席するためにホテルに滞在中である。
彼らに
「紹介したい人がいる」
と言われていた彼女は少しナーバスで、
鏡の前で初対面の予行演習中。
もちろん期待がないといえば嘘になるが、
34歳ともなれば、それなりに失望の経験も積み重ね、臆病にもなるというもの。
やっぱり、やめた!
ルームサービスを頼んで、セリフもソラで言えるほどのお気に入り映画『羊たちの沈黙』をひとり鑑賞。
そこに、妹の恋愛ライフを心配する姉エレインから電話がかかってくる。
「私、もういい年なんだよ」
とパーティーを渋るナンシーに
「まだ34歳でしょ」
と叱咤するエレインはナンシーにノートに記した抱負を読み上げさせる。

・冒険する
・勝負する
・脚を鍛える
・自由人になる
・フランス語を習う
・料理する
・中東問題を理解する
・もっと人生を楽しむ

エレインの激励を得てパーティー乗り込んだナンシーだったが、テンパった彼女は下ネタ連発。
相性ぴったりと紹介されたライアンはシスコンで
あえなく撃沈。
ナンシーはまたもや失望の経験も積み重ねてしまう。
すっかり意気消沈した彼女はロンドンに戻る列車で若い女ジェシカと相席になる。
ナンシーとエレインの電話の内容を聞いていた彼女は自分が読んでいた本
『60億人とあなた』
をナンシーに読むように勧める。
貸してあげたいが、デート相手との待ち合わせの目印に使うから貸してあげられないというジェシカ。
しかし、その手の自己啓発本に対し(多分)懐疑的なナンシーは、ジェシカの提案を一蹴する。
やがて、列車は終点に到着。
会話を一方的に終わらせ寝入ってしまったナンシーに
ジェシカは本を押し付けて先に降りてしまっていた。
本には栞代わりに紙ナプキンが挟んであり、
そのページには、
“マイナス思考で人生台なし”の文字。
カッとなってジェシカを追うナンシーだったが、
本を手に偶然待ち合わせ場所を通りかかった彼女はデート相手ジャックにジェシカだと勘違いされてしまう。
一方的に喋りまくるジャックに面喰らうナンシー。
しかし、彼が『羊たちの沈黙』のレクター博士のモノマネをしたことで、ビビッ!
I am waiting for you!
彼女はジェシカのフリをしてジャックとデートすることに。
今夜は両親の結婚四十周年のパーティーでスピーチすることになっているのに!


年齢を重ねるということは、
デート、恋愛、結婚、と人生経験も重ねること。
でも、それはもちろん成功体験だけではない。
ジャックの離婚やナンシーの失恋、散々なデート、
失敗の経験もそれだけ重ねることになるし、
失敗や失望の経験は人を臆病にする。
諦めるのはまだ早い!
試してみなけりゃ分からない!
分かってはいても、経験によって作り上げた理論が、
二の足を踏む言い訳を作ってしまうのだ。

ジャックもまた失敗の経験が心の傷になっている四十男。夫婦で行きつけだったバーにナンシーを連れて行くのもまだ離婚の傷が癒えていない証拠だし、24歳のジェシカとデートしようとしたのも浮気をした妻への当てつけだ。

年をとっても、何度初デートを経験しても、
デートの達人になんてなれない。
初デートは相手次第、相性次第なのだ。
いくらきっと合うはずと紹介されても、
合わないときは合わないし、
まったく共通点のない相手を好きになることもある。
人類はインターネットというツールを得て、
つながることは確かに簡単になった。
でも、本当に自分が自然でいられて楽しい時間を過ごせる相手に出会うことは相変わらず難しいのだ。


デート相手の強奪という一見サイテー出会いをしたナンシーとジャック。
しかし、蓋を開けてみれば、
お互いが、60億分の1の“あなた”
まさに、嘘から出たまこと。
人違い、ストーカーの脅迫と妨害、元妻の出現。
誤解やすれ違いを乗り越え結ばれるラブコメ定番の展開は、
大団円のパーティーへとなだれ込む。
まず、ナンシーとジャックのカップルがチャーミングだし、二人の仲を邪魔だてするストーカー、ショーンのキャラクターが最高!
ナンシーの抱負が、後々の伏線になっているのも楽しい!
ほぼ一晩に設定されテンポ良く展開するストーリーが心地よい良作です。

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●マン・アップ!60億分の1のサイテーな恋のはじまり/Man Up(88分)
(2015年 イギリス/フランス)
監督:ベン・パルマ
脚本:テス・モリス
出演:サイモン・ペッグ,レイク・ベル,ロリー・キニア,ケン・ストット,ハリエット・ウォルター,オリヴィア・ウィリアムズシャロン・ホーガン
※『マン・アップ!恋のロンドン狂騒曲』のタイトルでWOWOWにて放送


盟友ニック・フロストは『カムバック!』でラブコメ出演済みですが、サイモン・ペッグのラブコメは意外にもこれが初出演かも。
相変わらずキュートなサイモン・ペッグですが、
あくまでヒロイン、レイク・ベルを前面に出し、
少し控えめなのが好印象。
トイレでシクシク泣くペッグたん、可愛い❤️



『ミリオンダラー・アーム』でジョン・ハム演じる主人公のスポーツエージェントの借家人で(後の妻となる)ヒロイン役の彼女を見たときから、すごく感じのいい女優さんだなと思っていたレイク・ベル!
今作でも、等身大の30代女性を自然体で体現していてステキ!
よくよく見れば、170センチ超のスラリとした体型のナイスバディ。
映画の中では、サイモン・ペッグ演じるジャックが絵を描きたいと言っていましたが、
レイク・ベルの趣味は絵を描くことだそう。
女優業だけではなく脚本家、監督としても活躍中!



ナンシーの同級生でストーカーのショーン。
何処かで見たなーと思ったら、『イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密』で、アラン・チューリングの取り調べをする刑事役を演ってました、ロリー・キニア
慰めの報酬』以降の007シリーズにも出演してますね。
出演作を調べてたら、TVドラマ『ナイトメア〜血塗られた秘密〜』の人造人間役は彼だったのか!
今作では、二人の恋の行方の鍵を握る重要人物をコミカルに好演!
振り幅の大きい演技の出来るいい役者さんです。


公式サイトはこちら👉マン・アップ 60億分の1のサイテーな恋のはじまり

予告編はこちら👉「マン・アップ! 60億分の1のサイテーな恋のはじまり」 - YouTube


👇バーでナンシーとジャックがノリノリで踊るのは、
この曲、デュラン・デュランの「THE REFLEX」。
80年代を舞台にした『シング・ストリート』でも大々的にフューチャーされてましたが、もしや今年はデュラン・デュランに再びスポットライトが当たるのか?
24歳のジェシカはこの曲では踊れまい。
「THE REFLEX」はこのアルバムに収録されています。

Seven & The Ragged Tiger

Seven & The Ragged Tiger


👇ナンシーがセリフをソラで言えるほどお気に入りで、ジャックもレクター博士のモノマネを披露するサイコホラーの傑作『羊たちの沈黙』のBlu-rayはこちら


👇ナンシーとジャックがセリフを引用し、ジェシカが『ウルフ・オブ・ウォールストリート』と勘違いしていたマイケル・ダグラスチャーリー・シーン共演の『ウォール街』のBlu-rayはこちら


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