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極私的映画案内

新作、旧作含め極私的オススメ映画をご案内します。時々はおすすめ本も。

スポットライト 世紀のスクープ

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ニュースは選べない

2001年夏、
ボストンの地元紙ボストン・グローブ紙は、
マイアミから新しい編集局長、
ユダヤ人のマーティ・バロンを迎える。
他所からやって来た新しい上司に対し、
戦々恐々、疑心暗鬼、
様々な思惑が入り乱れる初めてのミーティングで、
バロンはコラム欄で取り上げられたカトリック教会の神父による児童に対する性的虐待疑惑について更に調査、深く掘り下げるよう命じる。
この任を受けたのは、ウォルター“ロビン”・ロビンソン率いる少数精鋭、極秘調査を基づく特集記事欄を手がける《スポットライト》チームだった。

ボストンという街においてカトリック教会が
人々にとってどういう存在なのか?
地域にどんな影響力を持っているのか?
それを想像することは難しい。
何故なら、カトリック教会に変わるような存在がこの国にはないからだ。
カトリック教会はボストンの経済界、警察、
あらゆるところで大きな力を持っていた。
チームにはあらゆる方面から圧力がかかる。
性的虐待という事件の性質上、
被害者の口も重い。
そんな中、四人の記者は粘り強く調査を続け、
徐々に事実が明らかになっていく。
それは、大勢の神父が同じ罪を犯し、
それを教会が組織ぐるみで隠蔽していたおぞましいものだった。
そして9月。
同時多発テロが発生、記者は総動員され、
チームの調査は一時中断を余儀なくされる。

購読者の半数以上がカトリック信者というグローブ紙。
記事が出た時にどんな影響があるかは計り知れないものがあったはずだ。
それは相当なリスクだったに違いない。
しかし、様々な圧力、同時多発テロ発生にも挫けずに、メンバーは地道な調査を続けようやく記事の掲載にこぎ着ける。


街中で、国内で、世界中で、
毎日様々な事件が起き、新聞社、テレビ局といった報道機関には膨大なニュースが届くはずだ。
しかし、そのニュースがすべて記事になり、
放送されるわけではない。
何を報道するのか?
ニュースは報道機関によって取捨選択されている。
わたしたちはニュースを選べないのだ。


「君の探している文書は、かなり機密性が高いね。
これを記事にした場合、責任は誰がとる?」

判事にこう問われたレゼンデス記者はこう切り返す。

「では、記事にしない場合の責任は?」


記事にしなければ被害者の悲痛な声は届かず、
神父たちの犯罪はカトリック教会による隠蔽工作によって表に出ることなく、闇に葬られただろう。

報道機関にはわたしたちが知るべきニュースを伝える社会的責任がある。
犯罪の隠蔽といった社会の不正や、
投票という義務を果たすために判断材料となるような事実を伝える社会的責任が。


映画を観るという行為には、
様々な側面がある。
アクション映画を観てスカッとストレスを解消したい時もある。
ロマンティックなラブストーリーにウットリしたい時もある。
コメディ映画を観て思いきり笑いたい時もある。
そういうエンターテイメントとしての側面がまず一つ。
そしてもう一つは、
“知らなかった事実を知る”という側面だ。
実際にあったことを知るには、本を読んだり、ニュースを見たり(!)、ドキュメンタリーを見たりという方法もある。
しかし、エンターテイメントの側面も備えた映画という媒体は何よりも分かりやすい。

映画の中で編集部の紅一点ファイファーが、
男性メンバーのひとりと恋愛関係になる構想があった。
しかし、実際のファイファーさんはきっぱり断ったそうだ。
記者たちが地道に真実に迫っていく姿を淡々と追うこの映画は、少し地味に映るかもしれない。
しかし、この映画は“知らなかった事実を知る”ための映画であって、過度にドラマティックな脚色や演出は必要ないのだ。


今、わたしたちは知るべき事実を、
ニュースを本当に知ることが出来ているだろうか?
わたしたちの《スポットライト》チームはあるのだろうか?
わたしたちはニュースを選べない。
出来るのは、それぞれが何を知るべきなのかを考え、
どの報道機関がきちんと仕事をしているのかを
冷静に判断し、
もしもわたしたちの《スポットライト》チームがあるならば、彼らの仕事を評価し、支えることなのではないかと私は思う。


ボストン・グローブ紙記者、マイケル・レゼンデスさんとサーシャ・ファイファーさんのインタビュー記事はこちら👇
(フロントランナー)米紙ボストン・グローブ記者 マイケル・レゼンデスさん、サーシャ・ファイファーさん 調査報道にスポットライトを:朝日新聞デジタル


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⚫︎スポットライト 世紀のスクープ
/Spotlight (2015 アメリカ)
監督:トム・マッカーシー
脚本:ジョシュ・シンガー,トム・マッカーシー
出演:マーク・ラファロマイケル・キートンレイチェル・マクアダムスリーヴ・シュライバージョン・スラッテリー,ブライアン・ダーシー・ジェームズ,スタンリー・トゥッチビリー・クラダップ,ジェイミー・シェリダン,リチャード・ジェンキンズ(声のみの出演)



マイケル・キートンは前年の『バードマン 無知がもたらす予期せぬ奇跡』に続き、出演作がオスカー獲得し、完全復活。
ちなみに、この作品に出演したマーク・ラファロ(『アベンジャーズ』、リーヴ・シュライバー(『X-MEN』)といった俳優陣もマイケル・キートン同様、ヒーロー映画に出演している。


公式サイトはこちら👉映画『スポットライト 世紀のスクープ』公式サイト


予告編はこちら👉映画『スポットライト 世紀のスクープ』予告編 - YouTube


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👇ボストングローブ紙〈スポットライト〉チームによるノンフィクションはこちら

スポットライト 世紀のスクープ カトリック教会の大罪

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