極私的映画案内

新作、旧作含め極私的オススメ映画をご案内します。時々はおすすめ本も。

LIFE!

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“LIFE”の真髄

 
LIFE誌のネガ管理部門で働く冴えない中年男ウォルター・ミッティ。
年老いた母親と女優志望の妹の面倒を見る実直な男だが、気になる職場の女性シェリルに気軽に声を掛けることも出来ず、彼女が登録するeハーモニーに登録してはみたものの、あと一歩勇気が出ずコンタクトする(“ウィンクを送る”)ことが出来ない。
そんな折、LIFE誌の休刊が決定。
最終号の表紙を飾る写真家ショーン・オコンネルの写真のネガが送られてくるが、表紙にと指定された肝心の25番のネガがない。
各地を転々と移動するショーンをつかまえる事が出来ず、ウォルターは送られてきたネガに写っていたものを手掛かりにショーンの行方を追うことに…。
ショーンは何処に?
そして、25番のネガには一体何が写っているのか?
ウォルターはシェリルに思いを伝えることが出来るのだろうか?
 
今作は1947年ダニー・ケイ主演作『虹を掴む男』のリメイク作品。
しかし、オリジナルとの共通点は“代わり映えのしない毎日を送る空想癖のある男”というウォルターのキャラクターの一部のみ。
オリジナルは、ウォルターの空想シーンでダニー・ケイの芸達者ぶりを見せるスター映画だったが、こちらは、それまでは空想するしかなかった景色やなりたかった自分を現実のものにしていく人生賛歌になっている。
リメイク作品というのは、大抵オリジナルには及ばないものだが、このアイディアがとても賢かったと思う。
 
アクション映画並みのウォルターの空想シーンはリメイクならではだが、それ以上に現実である直線的なニューヨークの街並みと曲線的なアイスランドやヒマラヤの自然の対比が鮮やかで美しい。
父親が母親に贈ったピアノ、フィギュア、母親お手製のケーキ、バックパック、スケートボード、そして(LIFE誌のスローガンが刻印された)ショーンから贈られたサイフ。これらの小道具による伏線の張り方も心憎いし、LIFE誌の休刊、アイスランドの火山噴火など現実のニュースもストーリーに巧みに取り込んでいる。
ウォルターの冒険の第一歩を後押しするArcade Fire の「Wake Up」、
David Bowieの「Space Oddity」など音楽の使いどころも絶妙で見事だった。
 
To see the world,
things dangerous to come to,
to see behind walls,
to draw closer,
to find each other, and to feel.
That is the purpose of LIFE.
 
世界を見よう
危険でも立ち向かおう
壁の裏側をのぞこう
もっと近づこう
お互いを知ろう
そして感じよう
それが人生(ライフ)の目的だから
 
LIFE社のスローガンが
観る人ひとりひとりの心に響く。
どんな景色が見たかったのか?
どんな大人になりたかったのか?
立ち止まって考える時は誰にでも来る。
その時、一歩を踏み出すのか?
その勇気が持てるのか?
その先にバラ色の人生が待っていることはないだろう。
でも、少なくともウォルターは見たい景色を見て、
自分がどんな大人になりたかったのか思い出したはずだ。
そして、それまでの自分の人生が価値あるものだと悟ったはずだ。
 
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LIFE!/THE SECRET LIFE OF WALTER MITTY  
                                    (2013 アメリカ)
脚本:スティーヴ・コンラッド
出演:ベン・スティラー,クリスティン・ウィグ,ショーン・ペンシャーリー・マクレーンアダム・スコット,キャスリーン・ハーン,パットン・オズワルド
 
1947年のオリジナルのプロデューサーはハリウッドの大立者サミュエル・ゴールドウィン。
そして、そのリメイクである今作のプロデューサーは、その息子であるサミュエル・ゴールドウィン・Jr.とジョン・ゴールドウィン。
 
 
公式サイトはこちら👉映画「LIFE!」オフィシャルサイト
 
 
 
 
 
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最初は冴えない中年男にしか見えなかったウォルターが次第に、“冒険心と勇気と創造力がある”シェリルの理想の男に見えてくる不思議!
 
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コメディエンヌの印象の強いクリスティン・ウィグが、(なりたての)シングル・マザーをナチュラルに演じていて好印象!
 
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ウォルターを導く写真家ショーン・オコンネルはショーン・ペン
このカッコ良さは反則です。
 

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虹を掴む男 [DVD]

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 👇最近多くの映画でその楽曲が印象的に使われることの多いデヴィッド・ボウイ

この映画での「Space Oddity」はテーマ曲と言ってもいいほど重要なシーンで使われている。

「未知の世界へ行く勇気を讃える」歌だ。

スペース・オディティ

スペース・オディティ

 

 👇既存曲のチョイスのセンスも絶妙な『LIFE!』のサウンドトラックはこちら

LIFE! オリジナル・サウンドトラック

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