極私的映画案内

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シュガーマン 奇跡に愛された男

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豊かさと幸せの物差し

 
かつて、これ程数奇な運命を辿ったミュージシャンがいただろうか?
 
一枚のアルバムのヒットのためには、
音楽性の豊かさやクオリティの高さだけでは
十分とは言えない。
運とタイミングといった偶然に左右される要素まで
味方につけなければならないし、
時代にも愛されなければならない。
そう考えれば、
ひとりのミュージシャンあるいはひとつのバンドが世に出てスターになることこそ、奇跡なのかもしれない。
1970年代、あるプロデューサーに才能を見出されたロドリゲスが制作した一枚のアルバムがまったく売れなかったのは、むしろありふれた話なのかもしれない。
しかし、ロドリゲスの物語が非凡だったのは、そのアルバムが、どういう訳か海を渡り、
アパルトヘイトの嵐吹き荒れる南アフリカでプロテスト・ソングとして受け入れられ、
大ヒットを記録したということ。
アルバムのプロデューサーや本人さえ
まったく知らないところで。
ところが、二枚目のアルバムがCD化されたことをきっかけに彼の消息が調査されることになる。
ミュージシャン本人のプロフィールが謎のままだった南アフリカでは、ロドリゲスはステージ上で拳銃自殺したという死亡説がまことしやかに伝えられ、信じられていた。
 
地元デトロイトで健在だったロドリゲスの消息が突き止められ、南アフリカに凱旋した彼の第一声がいい。
 
「生きてたよ!」
 
インタビューを受ける彼は降って湧いたような成功を
実に淡々と受けとめているように見え、
その姿はもはや仙人のようだ。
彼にとってはアルバム制作、それ自体が既に幸せで、
売れなかったことは失敗でも挫折でもなかったのだろう、きっと。
 
彼の豊かさや幸せの物差しは金でもモノでもない。
南アフリカに凱旋した彼を
大勢のファンが熱狂的に迎えたこと、
それさえ彼にとっては余得だったのかもしれない。
印象的なのは、
ロドリゲスの三人の娘をはじめ関係者が
まるで自分のことのようにとても嬉しそうに彼について語る姿だ。
南アフリカでのヒットの恩恵を唯一受けたであろうレコード会社のオーナー、クラレンス・アヴァントを除いては。しかし、その彼でさえロドリゲスの才能と楽曲の素晴らしさについては賞賛している。)
南アフリカではスーパースターとして愛され、また身近な人々にもとても愛されている人だということがよくわかる。
 
誰を恨むことなく、
人として正しく地道に生きてきた彼の姿は
とても清々しく、カッコ良く、心を動かされる。
全編を彩る彼の楽曲もまた、
今も色褪せない素晴らしいものだった。
 
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    Searching for Sugerman
            (2012スウェーデン/イギリス)
監督:マリク・ベンジェルール
出演:ロドリゲス
 
 
 

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