極私的映画案内

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僕の大事なコレクション

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過去は未来を照らし出す


ほとんどの日本人にとっては、
”ルーツ探し”と言っても正直ピンと来ないだろう。
しかし、アメリカ人にとってルーツ探しは、
ネット上にそれ専用のサイトがあるくらいで特別なことではないらしい。
ネットやなんかを駆使してルーツを辿り、
家系図を作る人も珍しくはないそうだ。
ほとんどのアメリカ人は、元々どこか別の国からの移民だから、自分の身体の中にどんな血が流れているのか、先祖の故郷はどこなのか知りたいというのは無理もない話なのかもしれない。


家族にまつわるさまざまな”もの”(その時々の記憶が思い起こされるようなさまざまな”もの”)
をコレクションしているちょっと風変わりなユダヤ系アメリカ人のジョナサン。
ある日、彼は病床の祖母から亡き祖父からだとダビデの星のペンダントと一枚の写真を手渡される。
写真には若き日の祖父が若い女性と一緒に写っており、裏には、
「アウグスチーネとトラキムブロドにて」
と記されている。
アウグスチーネは誰かと聞いても祖母は何も答えてくれない。
どうも祖父はこのアウグスチーネという女性のおかげでアメリカに渡ることが出来たらしいのだが、
彼女についてもトラキムブロドについても何も分からないまま、ジョナサンは写真だけを手がかりに祖父の故郷であるウクライナへ旅立つ。

そんなジョナサンのガイドとなるのが、
アメリカかぶれの青年アレックス。
ガイド業は戦後祖父が始めた。
主なお客はルーツを探しにやってくるユダヤ人。
しかし、金持ちのユダヤ人を嫌う祖父は自分は引退したんだと運転手を務めることを拒む。
しかし、客がトラキムブロドを探している聞くと一転、運転手をやると言い出す。
目が悪いと言い張る彼の相棒であり、
盲導犬であるサミー・デイヴィス.Jr.Jr.を一緒に連れて行くことを条件に。
レックスは、大金を払ってウクライナへルーツ探しにやってくる人間をバカだと思っている。彼にとって過去は過去。
もう終わったことなのだ。
しかし、彼はジョナサンとの旅を通してその考えを改めることになる。

トラキムブロドは今や地図にものっていない。
誰か知っている人はいないか、写真のふたりに見覚えのある人はいないかと尋ねるが
知っているという人は現れない。
レックスは起きているのに夢を見ているような、心ここにあらずの祖父の様子が気になっている。
それは、かつてウクライナが反ユダヤだったこと、ジョナサンの祖父がアメリカに渡り生き残ったユダヤ人だったことに関係あるのか?
 
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やがて、祖父はある場所で車を止める。

辿り着いたトラキムブロドには、ジョナサンと同じようにかつてそこに暮らしていた人々にまつわるさまざまな”もの”をコレクションしながら、静かに彼等を待つ人がいて、そこで見つけた過去の出来事は、アレックスとジョナサンの人生をシャツの表と裏のように結び付けるとことになる。

過去は過去。もう終わったこと。
でも、過去は今に、そして未来につながっている。
過去は未来を照らし出すのだ。

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●僕の大事なコレクション/EVERYTHING IS ILLUMINATED
(2005年 アメリカ)
監督・脚本:リーヴ・シュライバー
原作:ジョナサン・サフラン・フォア
出演:イライジャ・ウッド,ユージン・ハッツ,ボリス・レスキン,ラリッサ・ローレット,ジョナサン・サフラン・フォア
 
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リーヴ・シュライバーは俳優としても活躍しているが(因みにパートナーは女優のナオミ・ワッツ)、監督、脚本家としても相当優秀だと思う。
監督としての今後のキャリアも楽しみです。
 
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キャストに名を連ねていなくても、実は名脇役が”一匹”。
目が悪いと言い張るアレックスじいさんの相棒サミー・デイヴィス.Jr.Jr.。
レックスのあやしい英語のおかげもあってお世辞にもお互いの意思が上手く伝わってるとは言えない一行の中で、彼女(メス犬なの)だけはすべてをわかってる、そんな気がする。名演技です。

原作者のジョナサン・サフラン・フォアもひっそりと特別出演。
 
 
 
 
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 ジョナサン・サフラン・フォアによる原作小説『エブリシング・イズ・イルミネイテッド』はこちら👇

エブリシング・イズ・イルミネイテッド

エブリシング・イズ・イルミネイテッド