運命?それとも大いなる勘違い?
この映画の主人公である建築家志望でありながらグリーティングカードの会社でくすぶっている心優しき青年トムが一目惚れした新入社員のこと。
彼女の名前がサマー。
『(500)日のサマー』というタイトル通り、トムの恋は500日をもって終了してしまうのだが、その出会いからほろ苦い別れまでの500日を描いたのが本作。
この映画、出会いの1日目から描かれるのではなく、488日目がファーストシーンで、次は1日目に飛びそして290日目へ、再び1日目に戻るいう具合に時制が激しく前後する。
確かにわかりにくい部分もあるのだが、
彼が恋に落ちてからの舞い上がったり落ち込んだりの激しい感情の起伏を表現するのに、
運命の人に出会うまでは幸せになれないと信じる心優しき好青年トム。
1月のある日、彼は新入社員サマーに一目惚れれ。
ところが、なかなかきっかけが掴めない。
しかし、そんなトムにチャンスが訪れる。
エレベーターに乗り合わせたサマーがトムのヘッドホンからもれるザ・スミスを聴いて、
しかし、サマーを運命の人と信じるトムに対して、彼の思いを知ってか知らずか彼女は、
「恋人は欲しくない」
「愛なんて絵空事」
”友達”といいながらサマーの態度は恋人のそれそのもの。
二人の関係をはっきりさせたいトムはそんな彼女の態度に振り回されるが…。
確かにトム視点で見れば、
思わせぶりにさんざん振り回しておいて、
そう言いたいのもよくわかる。
でも、
サマーもトムが好き。
でもその”好き”は”運命の人”までは届かない。
一緒に楽しい時間を過ごすことは出来ても、
思わせぶりな態度も彼女にとってみればその時の自分の感情に素直に従って行動しただけなのでは?
こんな感情のすれ違いはよくあることだと思う。
”運命”なんて”偶然”を特別なものしたい誰かの強い意志が働いてはじめて”運命”になるのだ。
”サマー”の後には”オータム”が
”運命”の後にも人生は続く。
この映画、脚本家の実体験を元に書かれたということでもよくわかるように、
トムの拡大解釈、サマーのためらい、
そう、これはありふれたストーリーなのだ。
でも、その”ありふれた話”がマーク・ウェブのセンスと俳優の好演によって
ちょっと”特別な話”になっていると私は思う。
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●(500)日のサマー
出演:ジョゼフ・ゴードン=レヴィット、ズーイー・デシャネル、ジェフリー・エアンド、クロエ・グレース・モレッツ、マシュー・グレイ・ギュブラー、クラーク・グレッグ、レイチェル・ボストン、ミンカ・ケリー
監督のマーク・ウェブは元々ミュージックビデオの監督。
欧米だけでなく日本でもミュージックビデオ界出身の映画監督は少なくないが、
映画監督としてどうかと問われれば、
疑問符がついてしまう場合もよくある。
でも、このマーク・ウェブはミュージック・ビデオで培ったセンスをいかんなく発揮。
特にトムの妄想全開の至福のシーンをバックアップする音楽として、
ホール&オーツの「You make my dreams」を使ってくれたことに個人的に感激。
『インセプション』ではクールに仕事をこなすプロフェッショナル、
『キルショット』では、日本のヤクザ映画なら鉄砲玉として映画が始まって15分くらいで退場しそうなチンピラ、
本作では、運命の出会いを信じる心優しい青年と出演する作品によって全く印象の違うジョゼフ・ゴードン=レヴィット。
どのジョゼフ・ゴードン=レヴィットが好きかというと、やっぱりどこにでもいそうなまさに等身大といったトムを演じた彼かしら?
父親は映画カメラマン、母親と姉は共に女優と正に映画一家に育ったズーイー・デシャネル。本編中に登場する彼女の幼い頃の映像は実のお父さんが撮ったものではないかと思う。
ちなみに彼女はサリンジャーの小説『フラニーとズーイー』にちなんで名付けられたそうです。
少し頼りない兄トムに的確で愛情深いアドバイスを送る妹を演じた今ではすっかり大人びたクロエ・グレース・モレッツ!
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