極私的映画案内

新作、旧作含め極私的オススメ映画をご案内します。時々はおすすめ本も。

今月の読書 〜2019年5月〜

今月の読書2019年5月分をお届けします。
オススメは、フォークナー『響きと怒り
真藤順丈『宝島』木下古栗『人間界の諸相』
ジェームズ・ボールドウィン『ビール・ストリートの恋人たち』皆川博子『夜のリフレーン』


響きと怒りウィリアム・フォークナー
平石貴樹、新納卓也訳
岩波書店岩波文庫
THE SOUND AND THE FURY/William Faulkner/1929

一時は隆盛を極めたコンプソン家の滅びの物語。
上巻では、障害を持つ一家の末子ベンジー実妹キャディへの許されない愛に苦悩する長男クエンティンの思考を辿るスタイルをとっているため、激しく時制が入れ替わる。
親切にも時制変化の一覧が巻末についているのだが、
これと脚注を逐一参照しながら読んだので、
読み進めるのに、まあ、時間がかかること!
これから読んでみたいと思っている方には、
最初は参照せずに一気に読むことをおすすめします。
読み終わってみると前半の混沌は、滅びていくコンプソン家を象徴するものだったと気付く。
上巻の語り手クエンティンとベンジーが愛していたのは妹そして姉のキャディ。
彼女が家を出た(結婚)ことが二人にとって死刑宣告にも等しいものだったし、キャディの娘クエンティンの遁走がコンプソン家崩壊の決定打となる。
一家の中で唯一、昔とは違うんだという現実を生きていたジェイソンがそれなりに平穏な人生を手に入れたことも腑に落ちた。
読後もコンプソン家の人々が頭の中に住みついてしまった。まごうことなき名作です。

響きと怒り (上) (岩波文庫)

響きと怒り (上) (岩波文庫)

響きと怒り (下) (岩波文庫)

響きと怒り (下) (岩波文庫)


■終わりなき夜に生まれつく/アガサ・クリスティー
矢沢聖子訳
早川書房クリスティー文庫
ENDLESS NIGHT/Agatha Christie/1967

夜ごと朝ごと
みじめに生まれつく人もいれば
朝ごと夜ごと
甘やかな喜びに生まれつく人もいる
甘やかな喜びに生まれつく人もいれば終わりなき夜に生まれつく人もいる

ウィリアム・ブレイク『無垢の予兆』

石油王だった祖父の唯一の相続人であり、
いわば“甘やかな喜びに生まれつく人”エリー。
素晴らしい家を手に入れ、愛する人と暮らすという夢を胸に職を転々とする青年マイケル。
この二人の出会いからして何か作為的なものを感じる。
クリスティーには『アクロイド殺し』(信頼出来ない語り手)の例もある。
案の定、マイケルにはエリーの財産を奪うという計画があった訳だが、果たして彼は「終わりなき夜に生まれつく人」だったのか?
死にゆくルドルフが言ったようにマイケルにも別の道を選ぶチャンスがあったように見える。
しかし、その時には、
共犯者クローディアの存在が邪魔になる。
結局、マイケルの選択は既に成されていたのだ。

終りなき夜に生れつく(クリスティー文庫)

終りなき夜に生れつく(クリスティー文庫)


■宝島/真藤順丈
講談社

1952年アメリカ占領下の沖縄。
嘉手納基地襲撃の失敗後、行方不明になった戦果アギヤーの英雄オンちゃん。
オンちゃんの行方、そして手に入れたらしい「予定にない戦果」とは何か?
その後の戦果アギヤー達の人生が縦糸だとしたら、
度重なる米兵による事件、コザ暴動など史実を横糸としたエネルギー溢れるエンタメ作品。
何よりもショックだったのは、戦後の沖縄について自分がいかに無知だったのかということ。
なんくるないさ〜」は南国に暮らす人々の楽天的気質からの言葉だと思っていたが、
怒り、哀しみを乗り越える強さを表す言葉だったのだ。
本土復帰は沖縄の人々を幸せにしたのだろうか?
住宅地の上を飛ぶ軍用機墜落の危険性、騒音、米兵による事件、事故。
本土復帰から50年近く経っても何も変わっていない。
「これ以上、基地はいらない!」
沖縄の意思表明を現政権は無視し続けている。

第160回直木賞受賞 宝島

第160回直木賞受賞 宝島


■ゼロ時間へ/アガサ・クリスティー
三川基好訳
早川書房クリスティー文庫
TOWARD ZERO

アガサ・クリスティーの作品をはじめ多くのミステリーでは、まず事件〈ゼロ時間〉が起き、
それから謎解きが始まるが、この作品は、事件が起きるまで〈ゼロ時間〉に向かってストーリーが進行する。
それぞれの思いを抱えて海辺の屋敷に集う人々。
そして、身体の不自由な屋敷の主レディ・トレシリアンが殺される。
〈ゼロ時間〉が指すのは老婦人の死かと思いきや、実は…。
真相が明かされる時、〈ゼロ時間〉がいつを指すのかがようやく分かる。
自殺未遂の若者、バトル警視の娘のトラブル、伏線の張り方もお見事。
ノンシリーズの犯人、サイコパス率高いです。

ゼロ時間へ (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

ゼロ時間へ (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)


■人間界の諸相/木下古栗
集英社
VARIOUS ASPECTS OF HUMAN WORLD

初めての木下古栗。
くだらん!と怒り出すお方もいるやもしれんが、
私的には、大出版社である集英社さんからこういう本が出版されるってまだまだ捨てたもんじゃないなぁとしみじみ嬉しい気持ちになった。
お気に入りは「鳥貴族」「お茶会」「活字市場」辺り。
何かと全裸になる男性陣が束になっても菱野時江の破天荒さにはかなうまい。
「DREAM ON」のカリスマ全裸わいせつナンパ師早乙女アキラの元ネタはポール・トーマス・アンダーソンマグノリア』でカリスマナンパ師を演った トム・クルーズかしら?
トムは白ブリーフはいてたけど。
時江の勤務先の精神科病院の経営者が城之内健作(「位置情報」)で同僚が山森正太郎(「或るリスクテイカーの死」)かな?
連作としての構成の妙あり。

〈収録作品〉
⚫︎淑女の嗜み
⚫︎想像的破壊
⚫︎鳥貴族
⚫︎DREAM ON
⚫︎遠隔操作
⚫︎位置情報
⚫︎お茶会
⚫︎visionary
⚫︎活字市場
⚫︎或るリスクテイカーの死
⚫︎市場原理
⚫︎minēsis
⚫︎毛のない猿の蛮行
⚫︎幻の淑女

人間界の諸相

人間界の諸相


■ニック・メイソンの脱出への道/スティーヴ・ハミルトン
越前敏弥訳
角川書店(角川文庫)
EXIST STRATEGY/2017

前作のストーリーなどさっぱり忘れている私のような者にもさり気なくこれまでの内容に触れて記憶を喚起してくれる親切設計。
今作のニック・メイソンはトム・クルーズか?っていうくらいに不死身。
しかし、負傷して恋人ローレン宅に逃げ込む迂闊。
メインキャラを景気良くあの世へ送り、舞台はジャカルタへ。
ダライアス・コールもまた何者かの支配を受ける下っ端に過ぎないっていうのは、ちょっと風呂敷広げすぎな気もするが、これもシリーズ継続のための方便か?
個人的には、シカゴという街もこのシリーズには欠かせない要素だと思う。

ニック・メイソンの脱出への道 (角川文庫)

ニック・メイソンの脱出への道 (角川文庫)


■ビール・ストリートの恋人たち/ジェームズ・ボールドウィン
川副智子訳
早川書房
IF BEALE STREET COULD TALK/James Baldwin/1974

幼馴染だったティッシュとファニー。
二人はある時点で恋に落ち、共に人生を歩むことを決意する。
しかし、ファニーは無実の罪に問われ逮捕され、二人はガラスの壁にあちらとこちらに隔てられてしまう。
ファニーが陥った苦境は偏見や社会に巣食う差別故のものだが、
ティッシュの一人称で語られるからなのか、
それを殊更訴えるような重さは感じられない。

「あたしたちは黙々と歩いた。
全方位から音楽が鳴り響いているような沈黙。
たぶんあたしは、生まれてはじめて幸せに酔い、
幸せであることを自覚していたんだろう。」

若い二人が共に歩くこと、笑いあうこと、
このことの圧倒的な正義。
ラストの曖昧さは、
この二人の未来は、
物語を読んだ人が何をどう感じ、考え、
行動するかに託されている、というメッセージじゃないだろうか?

ビール・ストリートの恋人たち

ビール・ストリートの恋人たち


■動く指/アガサ・クリスティー
高橋豊訳
早川書房クリスティー文庫
THE MOVING FINGER/Agatha Christie/1943

確かドラマ版を観ていたので、ストーリーはうっすら記憶には残っているものの、
やはり真相はすっかり忘却の彼方であった。
一応、ミス・マープルものだが、後半になってようやく真打ち登場。
なんだかとってつけたような登場のさせ方で、
マープルものである必要があるのかどうか、ちょっと疑問を感じてしまう。
クリスティーの自選ベストのなかの一冊だが、
どうも私はミステリーにロマンス要素が加わると若干冷めてしまうようです。
ちなみに、ドラマ版で語り手のジェリー・バートン役を演じていたのは、ジェームズ・ダーシー(『ダンケルク』)。

動く指 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

動く指 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)


■三つ編み/レティシア・コロンバニ
齋藤可津子訳
早川書房
LA TRESSE/Laetitia Colombani/2019

ランフレッディ家の家業が毛髪加工で、サラの乳がんが発覚した時点で三つのストーリーがどう繋がっていくのかは大体想像出来たが、それにしても“髪”で三人の女性を繋ぐ構成が巧み(プロローグとエピローグの語り手はウィッグの編み手だ)。
不可触民スミダの境遇の厳しさが際立つが、
エリート弁護士サラは病気でキャリアは風前の灯、
家業を継いだジュリアも時代の変化についていけなければ作業場どころか住むところさえ失いかねない。
殊更フェミニズム小説の括りで語られる小説でもないと思うが、三人それぞれの背中を押すことになるのが、“ウィッグ”であるのは女性ならではだと思う。

三つ編み

三つ編み


■密告者/ファン・ガブリエル・バスケス
服部綾乃、石川隆介訳
作品社
LOS INFORMANTES/Juan Gabriel Vázquez/2004

疎遠だった父親から心臓手術を受けることになったとジャーナリストの息子に突然電話がかかってくる。
これをきっかけに息子は父親の隠された過去と対峙することになる。
と、こういうプロットだけならありがちだが、
ここにコロンビアという国の時代背景が絡むと一気に混沌としてくる。
戦中戦後のコロンビアでは、枢軸国出身者としてブラックリストに載せられ人生を狂わされた移民の人々が数多く存在した。
何故彼が密告者となったか?
それよりも、父親の過去を遺産として受け継ごうとする息子の姿勢や、彼の謝罪を拒否した被害者が、
彼の死によって再び過去から逃れられなくなる皮肉な展開が印象に残った。

密告者

密告者


■トリック/エマヌエル・ベルクマン
浅井晶子訳
新潮社(新潮クレスト・ブックス)
DER TRICK/Emanuel Bergman/2016

激動の時代、ラビの息子として生まれながらユダヤ人であることを捨て、奇術師“大ザバティーニ”として生きたモシュ。
現代のLAで両親の離婚話に胸を痛める10歳のマックス。
この二人の物語がどう繋がっていくかには、
正直あまり驚きはなかったものの、そこにあの“トリック”を使ったのは巧い。
同胞の苦難を横目にユダヤ人であることを隠し続けたモシュの贖いともいうべきあの“トリック”が、人生の最期に彼の心に平安をもたらす。魔法を信じられるギリギリ、マックスの10歳という年齢設定も絶妙でした。

トリック (新潮クレスト・ブックス)

トリック (新潮クレスト・ブックス)

  • 作者: エマヌエルベルクマン,Emanuel Bergmann,浅井晶子
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2019/03/29
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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■夜のリフレーン/皆川博子
KADOKAWA

未刊行短編から編まれた〈幻想小説系〉の短編集。
これまで皆川作品は海外を舞台にした長編しか読んでいなかったので、短編は初めて。
ほぼ年代順に収録されているが、冒頭の表題作からもう怖いのなんの!
クオリティは最初から高いが、年代を追うごとにどんどん凄みを増していっている。
個人的に印象深かったのは、戦中戦後の小笠原諸島の記憶を描く「島」(恥ずかしながら全然知らなかった!)、上海租界を舞台にした「赤い鞋」(ラストのキレ味)、戦後の公営団地を舞台にした「青い扉」(川島雄三『しとやかな獣』を思い出す)辺り。

〈収録作品〉
⚫︎夜のリフレーン
⚫︎夜、とらわれて
⚫︎スペシャル・メニュー
⚫︎赤姫
⚫︎夜明け
⚫︎陽射し
⚫︎恋人形
⚫︎赤い砂漠
⚫︎紡ぎ唄
⚫︎踊り場
⚫︎笛塚
⚫︎虹
⚫︎妖瞳
⚫︎七谷屋形
⚫︎島
⚫︎赤い鞋
⚫︎青い扉
⚫︎新吉、おまえの
⚫︎桑の木の下で
⚫︎そ、そら、そらそら、兎のダンス
⚫︎水引草
⚫︎メタ・ドリーム
⚫︎蜘蛛が踊る
⚫︎そこは、わたしの人形の

夜のリフレーン

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戦後の公営団地を舞台にした『しとやかな獣』はこちら👇

しとやかな獣 [DVD]

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同じく主人公の両親が公営団地に暮らす市川崑『私は二歳』はこちら👇

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今月の読書 〜2019年4月〜

今月の読書4月分をお届けします。
オススメは、ケン・リュウ『生まれ変わり』エトガル・ケレット『クネレルのサマーキャンプ』トム・ハンクス『変わったタイプ』、短編集が三冊となりました。


■生まれ変わり/ケン・リュウ
古沢嘉通・他訳
早川書房(新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)
THE REBORN AND OTHER STORIES/KEN LIU/2019

すべての小説は現実を反映しているものだが、このケン・リュウの新作はSF的設定はその「現実」をひときわ際立たせるものだということを痛感させる。
個人の記憶と民族や国の歴史認識、アジアの搾取工場、介護ロボット、不法移民の強制退去、不死、性被害、人種差別、世界の何処かで起きている悲劇に対してどうあるべきなのか?
SFとはいえ、考えさせられるしんどいテーマが多かった。
「七度の誕生日」はテッド・チャンの「わたしの人生の物語」の影響を受けているのだろうか?
お気に入りは「生まれ変わり」「訪問者」「ビザンチン・エンパシー」あたり。

〈収録作品〉
⚫︎生まれ変わり
The Reborn
⚫︎介護士
The Caretaker
⚫︎ランニング・シューズ
Running Shoes
⚫︎化学調味料ゴーレム
The MSG Golem
⚫︎ホモ・フローレシエンシス
Homo floresiensis
⚫︎訪問者
The Visit
⚫︎生きている本に関する、短くて不確かだが本当の話
A Briefand Inaccurate but True Account of Origin of Living Books
⚫︎ペレの住民
The People of Pele
⚫︎揺り籠からの特報:隠遁者ーマサチューセッツ海での四十八時間
Dispatches from the Cradle:the Hermit-Forty-Eight Hours in the Sea of Massachusetts
⚫︎七度の誕生日
Seven Birthdays
⚫︎数えられるもの
The Countable
⚫︎カルタゴの薔薇
Carthaginian Rose
⚫︎神々は鎖に繋がれてはいない
The God Will Not Be Chained
⚫︎神々は殺されはしない
The God Will Not Be Slain
⚫︎神々は犬死はしない
The God Will Have Not Died in Vain
⚫︎闇に響くこだま
Echoes in the Dark
⚫︎ゴースト・デイズ
Ghost Days
⚫︎隠娘
The Hidden Girl
⚫︎ビザンチン・エンパシー
Byzantine Empathy

生まれ変わり (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

生まれ変わり (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)


■クネレルのサマーキャンプ/エトガル・ケレット
母袋夏生訳
河出書房新社
KNELLER'S HAPPY CAMPERS AND OTHER STORIES/Etgar Keret

日常から半歩ずれた世界、とでも言ったらいいのか、どの話も発想が面白いバラエティーに富んだ短編集。
短編というより中編といったほうがいいような表題作「クネレルのサマーキャンプ」は、この世とあの世の中間のような世界で自殺者達が生前と同じように暮らしているお話。
語り口は軽いが、登場人物は全員自ら命を絶つ理由のあった人たちだ。全編に漂う死の気配と乾いたユーモアの絶妙なバランス。
登場人物に自殺者が目立つが、エトガル・ケレットが小説を書き始めたきっかけは、親友オーウェンの兵役中の自殺だったそうだ。
その時の作品が最後に収録されている「パイプ」だ。
表題作の他、「君の男」「でぶっちょ」「びん」「善意の標的」辺りがお気に入り。
過去との折り合いのつけ方を考えさせる「靴」も好きでした。

〈収録作品〉
⚫︎クネレルのサマーキャンプ
Kneller's Happy Campers
⚫︎物語のかたちをした考え
A Thought in the Shape of Story
⚫︎ラビンが死んだ
Rabin's Dead
⚫︎君の男
Your Man
⚫︎アングル
Angle
⚫︎ジェットラグ
Jet lag
⚫︎最後の話、それでおしまい
One Last Story and That's It
⚫︎トビアを撃つ
Shooting Tuvia
⚫︎でぶっちょ
Fatso
⚫︎赤子
Baby
⚫︎びん
Bottle
⚫︎きらきらぴかぴかの目
Glittery Eyes
⚫︎シェリ
Shriki
⚫︎神になりたかったバスの運転手の話
The Story about a Bus Driver Who Wanted to Be God
⚫︎子宮
Uterus
⚫︎地獄の滴り
A Souvenir of Hell
⚫︎ぼくの親友
My Best Friend
⚫︎アブラム・カダブラム
Abram Cadabram
⚫︎死んじゃえばいい
Hope They Die
⚫︎善意の標的
Good Intentions
⚫︎壁をとおり抜けて
Through Walls
⚫︎靴
Shoes
⚫︎点滴薬
Drops
⚫︎ガザ・ブルース
Gaza Blues
⚫︎冷蔵庫の上の娘
The Girl on the Refrigerator
⚫︎外国語
Foreign Language
⚫︎キッシンジャーが恋しくて
Missing Kissinger
⚫︎壁の穴
Hole in the Wall
⚫︎絵
Painting
⚫︎長子の災い
Plague of the Firstborn
⚫︎パイプ
Pipes

クネレルのサマーキャンプ

クネレルのサマーキャンプ


■春にして君を離れ/アガサ・クリスティー
中村妙子訳
早川書房クリスティー文庫
ABSENT IN THE SPRING/Agatha Christie/1944

クリスティーの小説は山ほど殺人事件が起きてもさほど陰惨な感じがしないのが特徴だと思っていたが、これはほぼヒロイン(?)の独白で誰一人死なないのに、読後暗澹たる印象を残す。
こういうのを「イヤミス」っていうのかな。
「妻も妻なら、夫も夫」という意見ももっともだが、
「私は悪くない!」の一点張りで、反論とか他人の意見を一切受け入れない人に相対すると、無力感に襲われて諦めてしまうのも確かである。
結局、そういう人とは距離が出来てしまうけど、そんな人間関係は哀しい。

春にして君を離れ (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

春にして君を離れ (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)


■1R1分34秒/町屋良平
新潮社

第160回芥川賞受賞作。
デビュー戦をKO勝ちで飾るもその後は二敗一分けと勝てないボクサーの敗戦から次戦までの逡巡。

「他人の生活なんてどうでもうい。
世界なんてどうでもいい。
カタストロフに丸ごと呑みこまれてしまいたい。」

「女の子はすごい。」

が正直に同居し、新たな出会いと信頼のシステムと唯一の友達の見せる芸術世界で

「人生。たのしいかも。」

の境地。頭でっかち過ぎない文体のオリジナリティーも心地良く、清々しい読後感。

「勝つよ。きっと勝つ。」

第160回芥川賞受賞 1R1分34秒

第160回芥川賞受賞 1R1分34秒


■心霊電流/スティーヴン・キング
峯村利哉訳
文藝春秋
REVIVAL/STEPHEN KING/2014

若く意欲あふれる新任の牧師チャールズ・ジェイコブスと、彼を受け入れ、家族ぐるみで付き合うようになるモートン一家。
牧師であると同時に科学(電気)に対する並々ならぬ関心を持つジェイコブスはモートン家の末っ子ジェイミーと特に親しくなる。
悲劇的な妻子の死、「惨憺たる説教」をきっかけにジェイコブスは解任される。
極端にふれ過ぎかもしれないが、ジェイコブスが信仰を失ったとしても、それはそれで致し方なしと感じてしまう私はやっぱり不信心者。
ジェイミー、ジェイミーの兄コンラッドに対するジェイコブスの「治療」がどんな結果をもたらすのだろうか?
献辞を捧げている作家の中で筆頭はメアリー・シェリー、そして稲妻。
という時点で、ジェイコブスの最終目的は死者を蘇らせることだと予想がついてしまったが、
妻子を蘇らせるのかと思いきや(流石に、骨になってしまった死体では無理か)、まさかあの世への扉を開けることだったとは!
でも、少しあの世のイメージが貧困というか、
具体的なビジュアルイメージは必要なかったんじゃないだろうから?
奇跡の治療がもたらす思わぬ後遺症、
これだけで十分不気味。
治療を受けて健康を取り戻すと同時に、時限爆弾を抱えることになるのだから。

心霊電流 上

心霊電流 上

心霊電流 下

心霊電流 下


■されど私の可愛い檸檬舞城王太郎
講談社

『私はあなたの瞳の林檎』と対になる『されど私の可愛い檸檬』。
登場人物たちは『私はあなたの〜』より人生の階段を登り、既婚者となっている。
年をとったから、結婚したから、就職したから、人はかしこく要領よく幸せになれる訳でもなく、相変わらず、いや益々面倒くさい。
夫や妻、親、兄弟、友人、思っていても口に出さないことが増える。
でも、舞城が描く人たちは違う。
面と向かって口に出してはっきり思ってることを伝える。
ただ、真っ直ぐに。口に出してしまって気まずくなるとかどうとかそんなことは恐れないのだ。
でも、そんな度胸、私にはない。

されど私の可愛い檸檬

されど私の可愛い檸檬

姉妹編『私はあなたの瞳の林檎』はこちら👇

私はあなたの瞳の林檎

私はあなたの瞳の林檎


■ねじれた家/アガサ・クリスティー
田村隆一
早川書房クリスティー文庫
CROOKED HOUSE/Agatha Christie/1949

怨恨、金、愛。
人が罪を犯すまでには様々な動機、事情がある。
罪を犯したことを後悔する人もいれば、そうでない人もいるだろうが、一番手に負えないのは、ここに登場する犯人のようなタイプじゃないか?
この犯人は自分が悪いことをしたなんて思ってないし、罪悪感なんて感じないんだから。
クリスティ自身お気に入りの作品だそうだが、
うーん、意地が悪い。
現在、映画化作品が公開中。
よくあるキャスティングで犯人が想像できてしまうというネタバレにはなってません!


■すべての、白いものたちの/ハン・ガン
斎藤真理子訳
河出書房新社
THE WHITE BOOK/Han Kang/2016

世界はさまざまな色にあふれているが、やっぱり「白」という色が人に与えるインパクトは特別で、だから記憶に強く残るんだろう。
散文詩ともエッセイとも小説とも違う一種独特な世界。
最初から日本語で書かれたかのような斎藤真理子さんの訳も相変わらず素晴らしい。
「白」といっても、
砂糖の「白」と小麦粉の「白」は違う。
それは、微妙に違う「白い」ページが教えてくれる。

〈収録作品〉
1.私
ドア/おくるみ/産着/霧/白い街/闇の中で、あるものたちは/光ある方へ/乳/彼女/ろうそく
2.彼女
窓の霧/霜/翼/こぶし/雪/雪片たち/万年雪/波/みぞれ/白い犬/吹雪/灰/塩/つき/レースのカーテン/息/白い鳥たち/ハンカチ/天の川/白く笑う/白木蓮//糖衣錠/角砂糖/灯たち/幾千もの銀の点々が/輝き/白い石/白い骨/砂/白髪/雲/白熱灯/白夜/光の島/薄紙の白い裏側/舞い散る/静けさに/境界/白い蝶/魂/米と飯
3.すべての、白いものたちの
あなたの目/壽衣/お姉ちゃん/博士の上に書かれたいくつかの言葉のように。/白服/煙/沈黙/下っ歯/わかれ/すべての白いものたちの

すべての、白いものたちの

すべての、白いものたちの


■変わったタイプ/トム・ハンクス
小川高義
新潮社(新潮クレスト・ブックス)
UNCOMMON TYPE/Tom Hanks/2017

あの“トム・ハンクス”が小説を書いた!ということで、ネームバリューゆえの出版じゃないかと意地悪な見方をしていたけど、『ニューヨーカー』にも、クノッフ社にも、新潮クレスト・ブックスにも謝らなければならない。
超アクティブな彼女との疲労困憊の日々を描いた「へとへとの三週間」からグッと引きこまれた(「アラン・ビーン、ほか四名」「スティーヴ・ウォンは、パーフェクト」の二編も同じキャラが登場。)。
「光の街のジャンケット」「配役は誰だ」は
俳優としてのキャリアが垣間見える作品。
「クリスマスイヴ、一九五三年」「ようこそ、マーズへ」「コスタスに会え」辺りもお気に入り。
献辞の「ノーラがいたから」のノーラというのは、脚本家で映画監督でもあるノーラ・エフロンのことじゃないかしら。
俳優としての仕事も多忙でしょうが、トム・ハンクスには小説も書き続けて欲しいと思います。

〈収録作品〉
⚫︎へとへとの三週間
Three Exhausting Weeks
⚫︎クリスマス・イヴ、一九五三年
Christmas Eve 1953
⚫︎光の町のジャンケット
A Junket in the City of Light
⚫︎ハンク・フィセイの「わが町トゥデイ」
ー印刷室の言えない噂
Our Town Today with Hank Fiset
ーAn Elephant in the Pressroom
⚫︎ようこそ、マーズへ
Welcome to Mars
⚫︎グリーン通りの一週間
A Month on Green Street
⚫︎アラン・ビーン、ほか四名
Alan Bean Plus Four
⚫︎ハンク・フィセイの「わが町トゥデイ」
ビッグアップル放浪記
Our Town Today with Hank Fiset
ーAt Loose in the Big Apple
⚫︎配役は誰だ
Who's Who?
⚫︎特別な週末
A Special Weekend
⚫︎心の中で思うこと
These Are Meditations of My Heart
⚫︎ハンク・フィセイの「わが町トゥデイ」
ー過去に戻って、また戻る
Our Town Today with Hank Fiset
⚫︎過去は大事なもの
The Past Is Important to Us
⚫︎どうぞお泊まりを
Stay with Us
⚫︎コスタスに会え
Go See Costas
⚫︎ハンク・フィセイの「わが町トゥデイ」
エヴァンジェリスタエスペランサ
Our Town Today with Hank Fiset
ーYour Evangelista Esperanza
⚫︎スティーヴ・ウォンはパーフェクト
Steve Wong Is Perfect

変わったタイプ (新潮クレスト・ブックス)

変わったタイプ (新潮クレスト・ブックス)


■花だより みをつくし料理帖 特別巻/高田郁
角川春樹事務所(ハルキ文庫)

〈収録作品〉
⚫︎花だより/愛し浅蜊佃煮
⚫︎涼風あり/その名は岡太夫
⚫︎秋燕/明日の唐汁(からじる)
⚫︎月の船を漕ぐ/病知らず

偽の水原東西の出現で桜も今年限りと思い込んだ種市の大坂行きの顛末「花だより」、あさひ太夫と又次の出会いと野江が掴んだ新たな幸せを描く「秋燕」、澪と源斎夫婦の新たな苦難と再起を描く「月の船を漕ぐ」。そして小野寺家の様子が分かる「涼風あり」。
このシリーズはキャラの立った登場人物が多いが、小野寺家の嫁、乙緒さんもなかなかの強者。
小野寺夫妻が仮面夫婦じゃなくて救われる思いだし、
早帆さんの料理下手が相変わらずなのも楽しい。
澪が本当の意味で故郷に帰れたのも嬉しいけれど、
「お澪坊〜!」の種市には泣かされました。

花だより みをつくし料理帖 特別巻

花だより みをつくし料理帖 特別巻


ゲティ家の身代金/ジョン・ピアースン
鈴木美朋訳
ハーパー・コリンズ・ジャパン
ALL THE MONEY IN THE WORLD/JOHN PEARSON/1995/2017

ケヴィン・スペイシーの不祥事で公開まですったもんだあったR・スコット監督『ゲティ家の身代金』の原作本。
結局、石油王で稀代の吝嗇家ジャン・ポール・ゲティ役は代役のクリストファー・プラマーが素晴らしく適役だったけど、ゲティ家の物語の真の主役(プラマーは助演扱い)はジャン・ポール・ゲティだと益々強く思う。
誘拐という一家の危機にまともに向き合うこともできなかった祖父ジャン・ポールと父親Jr.。
母親ゲイルの孤軍奮闘ぶりは映画の通り。
事件後の一家の姿は、金は必ずしも人を幸せにしないという事実をあらためて突きつけている。
酒やドラッグに溺れていく一族の人間が多かった中で、
ゲティ一族にとって幸いだったのは、ジョン・ポール・ゲティJr.の弟ゴードン、誘拐されたジョン・ポール・ゲティ三世の弟マークなど各世代に莫大な財産に振り回されない堅実な人物がいたことだろう。
マーク・ゲティはゲッティ・イメージズの共同創始者
ジョン・ポール・ゲティ三世の息子は俳優のバルサザール・ゲティ(『ロスト・ハイウェイ』)である。

ゲティ家の身代金 (ハーパーBOOKS)

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すったもんだの末、再撮影、ギャラの格差問題を経て公開されたリドリー・スコットによる映画版はこちら👇

ゲティ家の身代金 [DVD]

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ビューティフル・デイ


その身体が語るもの

シンシナティ
ホテルの一室。
ベッドに横たわり、ビニール袋をかぶって荒い息を繰り返す男。
アジア系の少女が写った写真を焼き、
血まみれのハンマーを拭う。
“Sandy ”のネームネックレス、携帯電話、その他もろもろをビニール袋に放り込む。
ホテルの裏口から出た男に襲いかかるもう一人の男。
男はあっという間に頭突きで倒す。
タクシーで空港に向かう男。
空港で男は公衆電話から電話をかける。
相手はおそらく仕事の依頼主ジョン・マクリアリー。

「完了した」

そうメッセージを残し、男はニューヨークへ戻る。

自宅に戻った男を待っていたのは年老いた母親。
母親は眠っているフリをして息子を騙す。
テレビで『サイコ』を観ていたという母親は、眠るまでそばにいてほしいと息子に言う。
男の名前はジョー。
襲われた時に殴られた肩を冷やすジョー。
その背中には大きな傷あとがある。

翌朝。
ベッドに仰向けになっているジョーは刺さっても構わないとばかりにナイフを弄ぶ。
バスルームから彼を呼ぶ母親の声がする。
歯ブラシが見つからないという母親はバスルームを水浸しにしている。

とある雑貨店。
店内で商品を並べているのは昨夜、ジョーの自宅の近くの友人宅を訪ねていた店主の息子だった。
店主エンジェルは仕事の仲介役。
報酬を受け取ったジョーはエンジェルに息子に自宅を知られたことを告げる。
息子をは偶然友人と一緒にいただけで、無知な子どもだとエンジェルは言う。

「俺たちは終わりだ、エンジェル」

仕事の依頼主マクリアリーの事務所に向かうジョー。
事務所は花であふれている。
ジョーが無事連れ戻したシンシナティの少女の両親からの贈り物だという。
ジョーの仕事は行方不明人を探し、連れ戻すこと。
エンジェルとは手を切り、別の仲介役を探すと告げるジョーに、次の仕事の依頼をするマクリアリー。

依頼主は州上院議員アルバート・ヴォット。
マクリアリーが議員の父親を警護していた縁だという。
ヴォットは2年前妻を自殺で亡くし、
それ以来10代の娘ニーナは家出したまま。
娘と連絡が途絶えたヴォットがマクリアリーに連絡してきたのだ。
ヴォットは現知事ウィリアムズの再選に向けて選挙運動中。
警察沙汰は避けたい。
報酬は5万ドル。
手がかりはヴォットに届いた匿名メールに記されたある住所。

「東31丁目235番地」

そこは、未成年の少女たちが働かされている売春宿だった。

「やつらを痛めつけてくれ」


依頼通りに奴らを痛めつけ、
ニーナを救い出したジョー。
ヴォットとの待ち合わせ場所に辿り着いたニーナとジョーだったが、そんな二人の元にヴォットがホテルの22階から飛び降りたというニュースが飛び込んでくる。
娘を迎えにくるはずのヴォットが自殺するはずがない。
しかし、それを知っているのは、ジョーとニーナ、そしてマクリアリーだけだった。
その直後、モーテルに踏み込んできた警察にニーナは連れ去られてしまう。
一体、何が起きているのか?

「まっすぐ立て 猫背は女々しいぞ」

ジョーの父親は妻に暴力をふるうDV夫だった。
幼いジョーはクローゼットに隠れクリーニングのビニール袋をかぶって耳を塞いでいた。
数をカウントすることで、自分の身に起きていることを感じないようにしているニーナの姿にも重なる。

金網越しに菓子をねだる少女。
駆け出した少女を銃で撃ち、菓子を奪う少年。
その断末魔で痙攣する少女の足。
戦地での過酷な記憶。

トラックの荷台で、折り重なって死んでいる買われてきた少女たちの姿。

ジョーを襲うフラッシュバック。
抱えているトラウマ。
彼の心はすでに死んでしまったのだろう。
彼が死なずにいるのは母親がいるからだ。
母の存在がジョーを辛うじて生かしている。

ハンマー一本でクズどもを倒す強靭な肉体。
しかし、その身体は徹底して鍛え上げられたギリシア彫刻のようなものでは決してない。
その身体は、ジョーが抱える虚無感、痛み、怒りをまさに体現している。
極端に台詞の少ない中で、ジョーを演じるホアキン・フェニックスの役作りは、ほとんどがこの身体を作り上げることだったんじゃないだろうか?
その身体がジョーという男を語っている。


Let's go.
It's a beautiful day.

さらに多くを失ったジョーは、
この先、何のために生きるのだろう?
そして、心を取り戻すことは出来るのだろうか?

=+=+=+=+=+=+=+=+=+=+=+=+=+=+=+=+=+=+=+=+=
ビューティフル・デイ
You Were Never Really Here

(2017 イギリス/フランス/アメリカ)
監督・脚本:リン・ラムジー
原作:ジョナサン・ジェイムズ『ビューティフル・デイ
撮影:トーマス・タウネンド
音楽:ジョニー・グリーンウッド
編集:ジョー・ビニ
出演:ホアキン・フェニックス,エカテリーナ・サムソノフ,アレックス・マネット,ジョン・ドーマン,ジュディス・ロバーツ,ダンテ・ペレイラ=オルソン,アレッサンドロ・二ヴォラ,フランク・バンド

原作小説も、100ページ程度の短編だが、90分という無駄のない尺が素晴らしい。
眠ったふりをしていた母親の老眼鏡をジョーが外すシーン、仲介役エンジェルの息子がジョーが自宅に戻ったところを偶然見てしまうシーン、これが後で活きてくる。
ジョーにとっては、とても皮肉なかたちで。
自ら手掛けた監督リン・ラムジーの見事な脚本。
余韻の残るラストシーンも印象的だ。
そして、ホアキン・フェニックスの雄弁な身体、
効果的に挿入されるフラッシュバック、
ジョーの心情に寄り添う音楽。
まさに映画にしか出来ない方法で
ストーリーを紡ぐことに見事に成功している。

第70回カンヌ国際映画祭映画祭コンペティション部門出品作品。
ホアキン・フェニックスが男優賞、リン・ラムジー脚本賞を受賞している。

『ジンジャーの朝〜さよなら、私が愛した世界』でクズ中のクズ親父を演じたアレッサンドロ・二ヴォラが、またしてもクズ中のクズを演じている。
これって彼のキャリアにとってどうなんでしょうね?


ビューティフル・デイ』公式HPはこちら
👉 http://beautifulday-movie.com/info/top

ビューティフル・デイ』予告編こちら
👉 https://youtu.be/PEr7c5jHUTw

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ビューティフル・デイ』DVD、Blu-rayはこちら👇

ビューティフル・デイ [Blu-ray]

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ビューティフル・デイ [DVD]

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終始、ジョーの心情に寄り添う音楽がまた素晴らしい。
レディオ・ヘッドのメンバーでもあるジョニー・グリーンウッドリン・ラムジー作品以外に、『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』以降のポール・トーマス・アンダーソンの作品でも音楽を担当している。サウンドトラックはこちら👇

ビューティフル・デイ -オリジナル・サウンドトラック

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ジョナサン・エイムズの原作本はこちら👇

ビューティフル・デイ (ハヤカワ文庫NV)

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エズラ・ミラーを世に出したリン・ラムジー監督『少年は残酷な弓を射る』のDVDはこちら👇

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少年は残酷な弓を射る』(ライオネル・シュライヴァー)原作本はこちら👇

少年は残酷な弓を射る 上

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少年は残酷な弓を射る 下

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アレッサンドロ・二ヴォラがクズ中のクズを演じているエル・ファニング主演『ジンジャーの朝〜さよなら、わたしの愛した世界』はこちら👇

今月の読書 〜2019年2月、3月〜

今月の読書2月分3月分をお届けします。
特に2月はあまり読めませんでしたが、中身の充実した読書時間でした。
オススメは、ナオミ・オルダーマン『パワー』
エリザベス・ストラウト『何があってもおかしくない』ジョーダン・ハーパー『拳銃使いの娘』
リチャード・フラナガン『奥のほそ道』
そして、一冊づつ噛みしめながら読んだ
高田郁『みをつくし料理帖シリーズ、
とうとう読み終わってしまいました。


■パワー/ナオミ・オルダーマン
安原和見訳
河出書房新社
THE POWER/Naomi Alderman/2016

十代の少女が特殊能力を得たことにより男女の権力構造が逆転していくディストピア小説
行きつく先の世界は女にとっても決して居心地のいい世界だとは思わないけれど、逆転以前の世界はそのままリアルな現代社会。
昨今のこの国の様々な状況も鑑みるに、女にとって現代社会って軽く地獄。
この小説があぶりだしているのはそこだと思う。
まあ、地獄は言い過ぎだとしても、逆転後の世界が異様に映るならば、それ以前の世界も異様なはずだ。
どちらか一方が力を持つ社会は、本来誰にとっても居心地のいい世界ではないと思う。
「私は間違っていた」と最近しみじみ思うのは、電車や映画館や夜道で嫌な思いをした時に「自分に隙があったんだ」と落ち込んだこと。もちろん防犯意識は必要だけど、自分を責めるのは間違っていたと思う。

パワー

パワー

今作を読んでこの作品を思い出した人も多かったようです。
マーガレット・アトウッド侍女の物語』はこちら👇

侍女の物語 (ハヤカワepi文庫)

侍女の物語 (ハヤカワepi文庫)


ピアノ・レッスンアリス・マンロー
小竹由美子訳
新潮社(新潮クレスト・ブックス)
DANCE OF THE HAPPY SHADES/Alice Munro/1968

アリス・マンローの初期作品集。
初期の作品ということで、後年の作品に見られるような1年を描いて前後数十年を想像させるような奥行き、広がりといった点でいうと物足りなさはあるが、市井の人々の人生の一瞬を切り取る鋭さは最初から持っていたことが分かる。
多分彼女は幼い頃から周囲の大人たちを鋭く観察していた子供だったんだろう。
年齢を重ね、経験を積み、より豊かなストーリーを紡ぐことが出来るようになるという、作家としての成長を確認出来る作品集でもある。

〈収録作品〉
⚫︎ウォーカー・ブラザーズ・カウボーイ
Walker Brothers Cowboy
⚫︎輝く家々
The Shining Houses
⚫︎イメージ
Images
⚫︎乗せてくれてるありがとう
Thanks for the Ride
⚫︎仕事場
The Office
⚫︎一服の薬
An Ounce of Cure
⚫︎死んだとき
The Time of Death
⚫︎蝶の日
Day of the Butterfly
⚫︎男の子と女の子
Boys and Girls
⚫︎絵葉書
Postcard
⚫︎赤いワンピース 一九四六年
Red Dress-1946
⚫︎日曜の午後
Sunday Afternoon
⚫︎海岸への旅
A Trip to the Coast
⚫︎ユトレヒト講和条約
The Peace of Utrecht
⚫︎ピアノ・レッスン
Dance of the Happy Shades

ピアノ・レッスン (新潮クレスト・ブックス)

ピアノ・レッスン (新潮クレスト・ブックス)


■何があってもおかしくない/エリザベス・ストラウト
小川高義
早川書房
ANYTHING IS POSSIBLE/Elizabeth Strout/2017

作家ルーシー・バートンの故郷イリノイ州アムギッシュを舞台にした連作短編集。
前作でルーシーと母リディアの会話に登場したアムギッシュの住民たちの物語だ。
どれも良作揃いだが、ルーシーと疎遠だった兄姉との再会を描く『妹』が泣けた。
作家として成功したルーシー、
一方、田舎でくすぶる兄姉。
今では別世界の住民になってしまった兄妹。
でも、同じ家に生まれ、あの母親に育てられたのはこの世界にたった三人だけなのだ。
その事実は何があっても変わらない。
彼らはこの再会によって、それを再確認したはずだ。
誰にでも語るべき物語がある。
そう思わせる一冊だった。

〈収録作品〉
⚫︎標識
⚫︎風車
⚫︎ひび割れ
⚫︎親指の衝撃論
⚫︎ミシシッピ・メアリ
⚫︎妹
⚫︎ドティーの宿屋
⚫︎雪で見えない
⚫︎贈りもの

何があってもおかしくない

何があってもおかしくない

ルーシー・バートンと母リディアが語らう前作『私の名前はルーシー・バートン』はこちら👇

私の名前はルーシー・バートン

私の名前はルーシー・バートン



■ベルリンは晴れているか/深緑野分
筑摩書房

1945年7月英仏米露の四カ国の統治下にあるベルリンで起きた毒殺事件を巡るミステリー。
ユダヤ人視点で語られることの多いこの時代の物語の中で、共産主義者の娘アウグステ、ユダヤ人のような外見の元役者の泥棒カフカ、家族に見捨てられた同性愛者の青年ハンスといった登場人物のキャラクター設定が巧みだ。
戦中の彼らの苦難と現在進行形の事件の顛末を同時に語る構成も、前作と比べ格段に巧くなっている。
ただ、『奥のほそ道』のような作品を読んだ後だと、
なぜ、日本の戦争を書かないのだろう?と思ってしまうのも事実。

ベルリンは晴れているか (単行本)

ベルリンは晴れているか (単行本)


ミッテランの帽子/アントワーヌ・ローラン
吉田洋之訳
新潮社(新潮クレスト・ブックス)
LE CHAPEAU DE MITTERRAND/Antoine LAURAIN/2012

キャリア停滞中の会計士ダニエルは妻子の留守中独りで行ったブラッスリーで偶然ミッテラン大統領と隣席になる。
忘れられた大統領の帽子が、ダニエル、
不倫を断ち切れない作家志望のファニー、
スランプの天才調香師ピエール、退屈したブルジョア男ベルナールの手に次々と渡り、
彼らの人生に変化をもたらす。
とはいうものの、帽子に魔力がある訳でもなく(ダニエル以外はミッテランの帽子だと知らずに手にした)、
帽子が彼らに与えたのはちょっとした自信、
自己肯定感だ。
それぞれの人生を変えたのは彼ら自身である。
映像の世界出身の著者らしく、作品はいかにも映像向きな大人のおとぎ話だ。

ミッテランの帽子 (新潮クレスト・ブックス)

ミッテランの帽子 (新潮クレスト・ブックス)


■美雪晴れ みをつくし料理帖/高田郁
角川春樹事務所(ハルキ文庫)

芳は「一柳」の女将となってつる家を去り、世間知らずのお嬢さんだった美緒は母となって逞しくなり、
つる家には“臼”というキャラの濃い新メンバーが加わる。
このお臼さんが、小野寺と澪の縁談が持ち上がった時の後任候補の料理人政吉の妻だったとは!
又次に命を救われた摂津屋さんも今後大きな役割がありそうだし、物語が終わりに向かって大きく動き出した感あり。
何気にりうさんの入れ歯の衝撃!

〈収録作品〉
⚫︎神帰月(かみかえりづき)/味わい焼蒲鉾
⚫︎美雪晴れ/立春大吉もち
⚫︎華燭/宝尽くし
⚫︎ひと筋の道/昔ながら

美雪晴れ―みをつくし料理帖 (時代小説文庫)

美雪晴れ―みをつくし料理帖 (時代小説文庫)


■天の梯(そらのかけはし)みをつくし料理帖/高田郁
角川春樹事務所(ハルキ文庫)

佐平衛と登龍楼の因縁は一般には製造を禁止されていた「酪」にあり。
「天満一兆庵」江戸店の元料理人富三の今際の際の告白によって登龍楼は取り潰しとなり健坊はつる家に引き取られ姉弟は共に暮らすことが出来るようになる。
小野田のとりなしで釈放された佐兵衛は料理の道に戻り、澪は鼈甲珠の製造法と販売の権利を売るウルトラCであさひ太夫を身請け、現斉先生と気持ちを確かめ合い、共に大坂へ。
最終巻で見事な大団円を迎えたこのシリーズ。。
ラストは最初から決めていたそうだが、このラストに向けて緻密に構成されたシリーズだったなあとあらためて感心。
堪能しました。

〈収録作品〉
⚫︎結び草/葛尽くし
⚫︎張出大関/親父泣かせ
⚫︎明日香風/心許し(こころばかり)
⚫︎天の梯/恋し栗おこし

天の梯 みをつくし料理帖 (ハルキ文庫)

天の梯 みをつくし料理帖 (ハルキ文庫)


■クロストークコニー・ウィリス
大森望
早川書房(新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)
CROSSTALK/CONNIE WILLS/2016

テレパシー能力なんてなくても、「ここにいる人全員が今何か考えてる」と想像しただけで圧倒されて電車を降りてしまった経験がある身としては、カップルが愛情だけを確認しあえるEED手術なんて、そんなイイトコ取り出来るわけない!と拒否反応。
それでもさすがはコニー・ウィリス
最後はブリディとC.B.がくっつくって最初っから分かっていても(C.B.を信じず、胡散臭いトレントの正体を見破れないブリディに若干苛々するものの)読ませる力はジェーン・オースティン並み、と言ったら褒め過ぎですか?


■拳銃使いの娘/ジョーダン・ハーパー
鈴木恵訳
早川書房(HAYAKAWA POCKET MYSTERY BOOK)
SHE RIDES SHOTGUN/JORDAN HARPER/2017

刑務所内で〈アーリアン・スティール〉総長の弟を刺殺し殺害指令が下されてしまった元武装強盗ネイト・マクラスキーと娘ポリーの逃亡劇。
TVドラマシリーズの脚本を手がけていたというジョーダン・ハーパー。
すでに映像化が念頭にあるかのようなスピード感溢れるストーリー展開と場面転換である。
読みどころは、父親ネイトとの再会後、ごく普通の小学生だったポリーがいかに覚醒していくかというところだが、彼女の覚醒ぶりは痛快であると同時に、痛々しい。
こんな子どもが命がけで闘わなくてはならないこの“すばらしきクソ世界”よ!
解説では影響を与えた作品として「子連れ狼」「レオン」「ペーパー・ムーン」といった作品が言及されているが、私が思い出したのはX-MENシリーズスピンオフの「ローガン」。
ポリーはダフネ・キーンちゃんで脳内変換。
ジョーダン・ハーパー自身の脚本で映像化されるそうだが、監督、キャストはどうなるのか楽しみ。

拳銃使いの娘 (ハヤカワ・ミステリ1939)

拳銃使いの娘 (ハヤカワ・ミステリ1939)

若山富三郎による『子連れ狼』はこちら👇

リュック・ベッソン監督、ジャン・レノナタリー・ポートマン共演の『レオン』はこちら👇

レオン 完全版 [Blu-ray]

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レオン 完全版 [DVD]

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ライアン・オニールテイタム・オニール親子共演の『ペーパームーン』はこちら👇

ペーパー・ムーン スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]

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X-MENシリーズ、ウルヴァリンを主人公にしたスピンオフシリーズの最終作『LOGAN ローガン』はこちら👇


■奥のほそ道/リチャード・フラナガン
渡辺佐智江
白水社
THE. NARROW ROAD TO THE DEEP NORTH/Richard Flanagan/2013

例えばこの本が読書会のテーマだったとしたら、
私は何が言えるだろう?
勿論、いろいろ思うことはあるけれど、
簡単に言葉にできない。
どの時代にも戦争があって、多くの人が死に、傷つき、
大きくその運命を変えられてきたわけだけれど、
人が生まれてきて死ぬって、一体どういうことなんでしょうね?
戦争には否応なくその時代を生きるすべての人が巻き込まれるけれど、問われるのは、戦後、それをどう総括し共有していくかってこと。
ここに描かれた日本兵の、戦中よりも戦後の姿に、
今に続くこの国のあり方が問われているんだと思う。


■穴あきエフの初恋祭り/多和田葉子
文藝春秋

いつもの言葉遊びは控えめながら、どれも一筋縄ではいかない短編集。
スリードにまんまと引っかかったり、はぐらかされたり…。
「胡蝶、カリフォルニアに舞う」「文通」
物理的な距離は近くても、まったくかみ合わない人間関係の不穏さ。
「てんてんはんそく」
これって携帯電話の機種変更の話だと思うんだけど、こういうことをこういうストーリーに仕立てるって、作家って凄い。

〈収録作品〉
⚫︎胡蝶、カリフォルニアに舞う
⚫︎文通
⚫︎鼻の虫
⚫︎ミス転換の不思議な赤
⚫︎穴あきエフの初恋祭り
⚫︎てんてんはんそく
⚫︎おと・どけ・もの

穴あきエフの初恋祭り

穴あきエフの初恋祭り


■IQ/ジョー・イデ
熊谷千寿訳
早川書房(ハヤカワ・ミステリ文庫)
IQ/Joe IDE/2016

犯罪が多発する貧困地域から抜け出すには、
カルのように才能があってチャンスに恵まれれば音楽業界を目指すか、あるいは学業成績が良ければ、奨学金をもらって大学に進学するか。そうでなければギャングの下っ端からその道でのし上がっていくか?
奨学金を得られる“IQ”の持ち主でありながら街に留まり探偵業を営んでいるのが今作の主人公アイゼイア。
とある事情から金が必要になった彼が頼ったのは腐れ縁の元ギャング、ドッドソン。
ドッドソンに紹介された依頼人はスランプに陥っている人気ラッパー、カル。
IQとドッドソンの因縁が明かされる過去パートと脅迫事件の現在パートが交互に語られる構成。
ミステリーとしての面白みより、アフリカ系コミュニティという舞台設定が新鮮。
独特のノリについていけなかったという意見も見かけるけれど、『ストレイト・アウタ・コンプトン』『DOPE/ドープ!!』あたりの映画を観ておくとこの物語世界の理解に役立つかも。

IQ (ハヤカワ・ミステリ文庫)

IQ (ハヤカワ・ミステリ文庫)

伝説のヒップホップグループN.W.Aの栄枯盛衰を描いた作品『ストレイト・アウタ・コンプトン』はこちら👇

IQを思わせるヒップホップオタクの少年と仲間たちがヤバい取引に巻き込まれる『DOPE ドープ!!』はこちら👇

DOPE/ドープ!! [DVD]

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今月の読書 〜2019年1月〜

今月の読書2019年1月分をお届けします。
1月のオススメは、アッティカ・ロック『ブルーバード、ブルーバード』ミランダ・ジュライ『最初の悪い男』


■ブラック・スクリーム/ジェフリー・デーヴァー
池田真紀子訳
文藝春秋
THE BURIAL HOUR/JEFFERY DEAVER/2017

稀代のページターナー、のはずだったのだが、対「私」という意味ではこの新作、その威力も少々弱まったか。
これまでならあっという間読み終わってしまうのだが、今回は思いのほか時間がかかってしまった。
ディーヴァーはいつもタイムリーな社会問題を盛り込むが、今作ではヨーロッパの難民問題を取り上げている。
ということで舞台はイタリア。
執筆がもう少し後なら“キャラバン”が盛り込まれたのかもしれないが、舞台がニューヨークを離れたことも乗り切れなかった理由かも。
森林警備隊エルコレのキャラクターは好きでした。

ブラック・スクリーム

ブラック・スクリーム


みをつくし料理帖 夏天の虹/高田郁
角川春樹事務所(ハルキ文庫)

「料理の道を行く」という自ら下した決断の当然の帰結とはいえ、小野寺との縁談が破談となったことの代償は大きかった。
澪の体調不良、料理番付の降格、小野寺の結婚。
仕方のないこととはいえ、想うひとが別のひとと夫婦となる。これは胸が痛い。
更に、料理人にとっては致命的になりかねない嗅覚の喪失。
シリーズ開始以来、こんなに次々と試練が澪を襲う巻もなかった。
そして、更に大きな喪失。
しかし、この出来事をきっかけに澪の嗅覚が戻るという何という皮肉。辛い。

〈収録作品〉
⚫︎冬の雲雀/滋味重湯
⚫︎忘れ貝/牡蠣の宝船
⚫︎一陽来復/鯛の福探し
⚫︎夏天の虹/哀し柚べし

夏天の虹―みをつくし料理帖 (角川春樹事務所 (時代小説文庫))

夏天の虹―みをつくし料理帖 (角川春樹事務所 (時代小説文庫))


みをつくし料理帖 残月/高田郁
角川春樹事務所(ハルキ文庫)

前巻は喪失に次ぐ喪失の巻だったが、今巻は小野寺の母里津の死や伊佐三おりょう夫婦の引越しなど別れもあれば、澪がふきちゃんに料理を教え始めたり、佐兵衛(捨吉)との再会、柳吾、坂村堂親子の和解、芳が柳吾の後添えに望まれたりと前向きな展開も。
でも、登龍楼の引き抜き話には絶対裏があるはず!

〈収録作品〉
⚫︎残月/かのひとの面影膳
⚫︎彼岸まで/慰め海苔巻
⚫︎みくじは吉/麗し鼈甲珠
⚫︎寒中の麦/心ゆるす葛湯
⚫︎秋麗の客

残月 みをつくし料理帖 (ハルキ文庫)

残月 みをつくし料理帖 (ハルキ文庫)


■トム・ハザードの止まらない時間/マット・ヘイグ
大谷真弓訳
早川書房(新☆ハヤカワ・SFシリーズ)
HOW TO STOP TIME/MATT HAIG/2017

1581年生まれ437歳。
しかし、見た目は40代の壮年男性。
現在ロンドンで歴史教師として暮らしているトム・ハザードは著しくゆっくりと年をとるというアナジェリア(遅老症)を患っている(そもそもこれは病気なのか、それとも特殊能力なのか)。
遅老症であることは隠しているので、普通のスピードで年をとる人たちと人間関係を築くことは難しい。
この設定なら様々な時代を描く事が出来るので、
そこはなかなか面白いが、「今を精一杯生きる」ってそれに気付くのに400年もかかったんかい⁈って突っ込んでいいですか?

トム・ハザードの止まらない時間 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

トム・ハザードの止まらない時間 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)


大統領の陰謀[新版]/ボブ・ウッドワード、カール・バーンスタイン
常盤新平
早川書房(ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
ALL THE PRESIDENT'S MEN/Carl Bernstein and Bob Woodward/1974

ロバート・レッドフォードダスティン・ホフマンが二人の記者を演じた映画はだいぶ前に観ていたけれど、『ペンタゴン・ペーパーズ最高機密文書』のラストがウォーターゲート事件だったので、映画を再見したついでに原作となったノンフィクションを手に取る。
原作を読んであらためて感じるのは、元CIA局員達の仕事の杜撰さもさることながら、外交も内政(経済)も好調だったニクソンが再選のために何故こんな汚い手を使ったのかということ。
一度、権力を手にすると、どんなことをしても手放すまいとする人間の愚かさ、権力が人を狂わせる恐ろしさをまざまざと感じさせる。

大統領の陰謀〔新版〕 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

大統領の陰謀〔新版〕 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

アラン・J・パクラ監督による1974年の映画版はこちら👇

大統領の陰謀 [Blu-ray]

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大統領の陰謀』の前日譚ともいえるスティーブン・スピルバーグの『ペンタゴン・ペーパーズ最高機密文書』はこちら👇

ウォーターゲート事件の情報提供者“ディープスロート”ことマーク・フェルト(事件当時FBI副長官)を描いた映画『ザ・シークレット・マン』はこちら👇

ザ・シークレットマン [Blu-ray]

ザ・シークレットマン [Blu-ray]

ザ・シークレットマン [DVD]

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■私はあなたの瞳の林檎/舞城王太郎
講談社

「なんだかあの子が気になって仕方ないけど、この気持ちはなんだろう?」とか「何かを成し遂げたい!何者かになりたい!」とか「生きることに意味はあるのか?」とか、誰でも青春時代の何処かでぶつかった難問。
この難題を乗り越えるキックスターターとは、
すなわち恋。
誰かを好きになったら、グズグズウジウジ考えてたことなんてあっという間に何処かに吹き飛んでしまう、それが恋。
でも、恋が愛に変わるかどうかは、また別の話。

「好きだ好きだ言ってるだけでじゃあどうしたいのかがないなんておかしいよ。付き合いたいがない好きなんて偽物じゃん!」
『私はあなたの瞳の林檎』

「私はこの諦感の中で私の内心の『でも何かを成し遂げたい。何者かになりたいんだー!』っていうのをどうしたらいいんだろう?」
『ほにゃららサラダ』

「生きることも死ぬことも、何もかも、意味をつけてるのは自分よ。もともと全部、意味なんてないんや。」
『僕が乗るべき遠くの列車』

〈収録作品〉
⚫︎私はあなたの瞳の林檎
⚫︎ほにゃららサラダ
⚫︎僕が乗るべき遠くの列車

私はあなたの瞳の林檎

私はあなたの瞳の林檎


■ブルーバード、ブルーバード/アッティカ・ロック
高山真由美訳
早川書房(ハヤカワポケットミステリ)
BLUEBIRD BLUEBIRD/ATTICA ROCKE/2017

テキサス・レンジャーとは、テキサス州公安局に属するアメリカ最古の州法執行機関。
元々は先住民族の襲撃に対抗するするための自警団だったそうだから、この後組織自体がこの地の特殊性だと言える。
主人公は伯父の跡を継ぎテキサス・レンジャーとなったダレン・マシューズ。第1の被害者となったのは、都会から生まれ故郷に戻ってきた男。事件の鍵を握るのは、地元でカフェを営むジェニーヴァ。
町を出て行った者と留まった者。両者の間で事件が起き、この対比がストーリーに奥行きを与えている。

著者のアッティカ・ロックは、ドラマシリーズ『Empire/エンパイア 成功の代償』のプロデューサーとしても名を連ねていた人。
あちらは、ストリートから成り上がって音楽業界のトップに登りつめるライオン家の話だから、この小説の世界とは真逆の世界といってもいいが、どちらも現代を生きるアフリカ系アメリカ人の姿を描くというところでは共通している。

ブルーバード、ブルーバード (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

ブルーバード、ブルーバード (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

テレンス・ハワード、タラジ・P・ヘンソン出演のドラマシリーズ『Empire /エンパイア 成功の代償』はこちら


■最初の悪い男/ミランダ・ジュライ
岸本佐和子役
新潮社(新潮クレスト・ブックス)
THE FIRST BAD MAN/Miranda July/2015

NPO法人〈オープン・パーム〉のベテラン職員43歳独身シェリル・グリックマン。
耳の形が自慢で理事のフィリップにあらぬ妄想を抱き長年“ヒステリー球”に苦しんではいるが、
独自のルールで表面上は平和に暮らす彼女の生活が、
NPO創設者夫婦のひとり娘、足の臭い巨乳女クリーの乱入で風雲急を告げる。
積極的に友だちになりたいかといえば、否だけど、
世界のどこかでシェリルのような人が暴走し躓いて転んで傷だらけになりながら、
それでも立ち上がって生きている。
それを想像すると何だかすごく元気が出ませんか?

「“乳”“貯蔵脂肪”“肉”といった言葉が、たちまち窓を蒸気で曇らせた。脂身の少ない言葉ではこうはいかない。二人でクリーミーな雲に包まれているようだった。」

岸本佐和子さんの訳、最高です。

昔、ものが飲み込みにくくなって、胃薬常用も一向によくならない時期があったけど、あれはきっと“ヒステリー球”だったんだと思う。私の場合、何故良くなったかというと、ハワイ。あちらの空港に降り立った瞬間から(飛行機の中でも胃薬飲んでたのに)スーッと喉元から胃にかけてスッキリ楽になりました。

最初の悪い男 (新潮クレスト・ブックス)

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ミランダ・ジュライの過去作はこちら👇
『あなたを選んでくれるもの』は映画『ザ・フューチャー』(ミランダ・ジュライ自身が監督)の原作になっている。
ちなみに、ミランダ・ジュライの夫は映画監督マイク・ミルズ

いちばんここに似合う人 (新潮クレスト・ブックス)

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『あなたを選んでくれるもの』について詳しくはこちら👉あなたを選んでくれるもの - 極私的映画案内


ミランダ・ジュライの監督作品『君とボクの虹色の世界』『座・フューチャー』はこちら👇

君とボクの虹色の世界 [DVD]

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ザ・フューチャー [DVD]

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『ザ・フューチャー』について詳しくはこちら👉ザ・フューチャー - 極私的映画案内

2018年のオススメ本

韓国映画界が次々と傑作を生み出しているんだから、
韓国文学が面白いのも当然といえば、当然。
この流れは、2019年も続きそうです。
というわけで、2018年のベストには韓国文学の三冊を選びました。
(翻訳は三冊とも斎藤真理子さん!)
また、シリーズものとしてここには挙げませんでしたが、ドン・ウィンズロウ『犬の力』『ザ・カルテルコニー・ウィリス『ブラックアウト』『オール・クリア』高田郁『みをつくし料理帖もオススメです。
特に順位はつけず、読んだ順番に並べています。


■ピンポン/パク・ミンギュ
斎藤真理子訳
白水社(エクス・リブリス)
Ping-pong/Park Mingyu/2006

中学生の釘とモアイがチスをリーダーとするグループから受けるイジメは最早イジメというより暴行傷害だし恐喝のレベルだ。
もちろん、釘もモアイもそんな毎日から抜け出したいと思っているが、そこから抜け出せたとしても、
何のために生きるのか?幸せって何なのか?
彼らにそれを問われても答えられる自信が私にはない。
きっと「ハレー彗星を待ち望む会」の入会希望者には大人も沢山いるに違いないから。
自分の意見を持つことを忘れてしまった大人こそ、自分のラケットを持って原っぱの卓球台でインストールかアンインストールか選ばなくっちゃね。
転がってきたピンポン球からこんな奇想天外なストーリーを紡ぎ出すパク・ミンギュ。
面白い作家だなあ。
アメリカで死んだモアイの従兄がファンだったという作家のジョン・メーソンって、カート・ヴォネガットの小説に登場するキルゴア・トラウトが元ネタなんじゃないかな?

ピンポン (エクス・リブリス)

ピンポン (エクス・リブリス)



■彼女のひたむきな12ヵ月/アンヌ・ヴィアゼムスキー
原正人訳
DU BOOKS
UNE ANNEÉ STUDIEUSE/Anne WIAZEMSKY/2012

ロベール・ブレッソンバルタザールどこへ行く』出演後のアンヌは気鋭の映画監督ジャン=リュック・ゴダールと恋に落ちる。
祖父はノーベル賞作家、父はロシア貴族という上流家庭で育ったアンヌ。
17歳の年上のバツイチ男と娘の関係を家族が歓迎するはずもなく、アンヌは直情的なゴダールと家族の間で板挟みになってしまう。
とにかくアンヌを側に置いておきたいゴダールの行動が大人気ないが、ゴダール人脈に次々と引き合わされて、これはアンヌにとってすごい財産になったんじゃなかろうか?
続編があるそうで、関係崩壊が描かれるのか、そちらの方が興味あるかも。

彼女のひたむきな12カ月

彼女のひたむきな12カ月

アンヌが出演したロベール・ブレッソンバルタザールどこへ行く』はこちら👇


ビリー・ザ・キッド全仕事/マイケル・オンダーチェ
福間健二
白水社(白水Uブックス)
The Collected Works of Billy the Kid:Left-Handed Poems/Micheal Ondaatje/1970

実在したアメリカ西部開拓時代のアウトロービリー・ザ・キッドの架空の人物伝。
太く短く生きたビリー・ザ・キッドをモデルにした多くの映像化作品が存在するが、マイケル・オンダーチェは詩、挿話、インタビューなど様々な形式でその姿を浮かび上がらせる。
その存在自体が詩情をかきたてるのか、詩のパートが特に印象深いが、その人物像と共に、馬の嘶きやひずめの音、吹き付ける土埃、乾いた血のにおいまで漂ってくるような読書体験だった。
是非、オンダーチェの詩集も読んでみたい。
私はこの本を読む前にサム・ペキンパーの『ビリー・ザ・キッド 21歳の生涯』を観ていたが、「リンカーン郡戦争」については知っておいた方が理解しやすいと思います。

サム・ペキンパー監督(クリス・クリストファーソンジェームズ・コバーンボブ・ディラン出演)
ビリー・ザ・キッド21才の生涯』はこちら👇
ビリー・ザ・キッド 21才の生涯 特別版 [DVD]

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■地下鉄道/コルソン・ホワイトヘッド
谷崎由依
早川書房
THE UNDERGROUND RAILROAD/Colton Whitehead/2016

南北戦争以前に黒人を南部から北部へと逃す組織があったことは何かで読んで知ってはいたが、
その組織は“地下鉄道”と呼ばれていた。
作者は文字通り“地下鉄道”を走らせて15歳の少女コーラの逃亡劇を描く。
当時の南部の奴隷農場の過酷さは頁を捲るのを躊躇わせるほどだが、州境を越えれば全く違った環境があるという状況にも驚かされる。
危機を脱したかと思うとまた危機、ストーリーの起伏を作るのもうまいが、脇役の名前が冠された章が印象深い。
その運命を知った後の“シーザー”の章、その運命を知らされる“メイベル”の章、内面に矛盾を抱えた“リッジウェイ”、“スティーブンス”、“エセル”の章は、当時を生きた人々の姿を重層的も浮かび上がらせる。

「何年も経って、おれはこのごろではアメリカン・スピリットの方がいいと思うようになった。俺たちを旧世界から新世界へと呼び出し、征服し、建設し、文明化せよと呼びかける精神だ。破壊すべきものは破壊せよと。劣等民族の向上に努めよ。向上できなければ従えよ。従えられなければ撲滅せよ。それが神に定められたおれたちの天命ーアメリカの至上命令だ」

リッジウェイはこう語るが、100年以上経った今でもこの“アメリカン・スピリット”を信奉しているアメリカ人は少なくないのかもしれない。

「盗まれた身体が、盗まれた土地で働いている。それは永久機関のような動力だった。空っぽになったボイラーは人間の血で満たす」

一方こちらは、コーラの目から見たアメリカの姿。

地下鉄道

地下鉄道


リンドグレーンの戦争日記1939-1945/アストリッド・リンドグレーン
石井登志子訳
岩波書店
KRIGSDAGBOCKER1939-1945/Astrid Lindgren/2015

子供の頃にピッピやカッレ君、ロッタちゃんといったリンドグレーンのキャラクターに親しんだ本好きは少なくないだろう。
しかし、1939年第二次大戦開戦時、彼女はまだ作家デビュー前、二人の子供の母親で弁護士事務所の事務員だった。
これはドイツがポーランドに侵攻した日から終戦までのリンドグレーンの日記。
幸いスウェーデンは戦場にならず、彼女は手紙検閲局で仕事をすることで戦争当事国の国民より情報にアクセスしやすい立場にあった。
ドイツに占領された北欧諸国についての記述が多いが、ヨーロッパの戦局がどう推移していったのかとてもわかりやすい。
ノルマンディ上陸やダンケルク撤退、スターリングラードの攻防など映画や小説 などで局地的なエピソードに触れる機会は多いが、前後にどんな出来事があったのか時系列で繋げられないことがままあったので、個人的にとても有り難い本だった。
隣国が戦火に覆われ人々が苦しんでいるのに、自分たちはほぼ変わらない生活を続けられている、苦しんでいる人々に何も出来ないという罪悪感、不甲斐なさが日記の執筆動機になっているのだろうが、スウェーデンもいつ戦争に巻き込まれてもおかしくなかった。
この状況の中で、スウェーデンはよく踏み止まり中立を保ったと思うが、他のの北欧諸国は軒並みナチスドイツに占領された。
中でも、フィンランドソ連に無理難題を押し付けられやむなくドイツと手を組むしかなかっのだ。
リンドグレーンナチスドイツの暴虐に対する怒りの一方で、ソ連を同じくらい恐れていたのが印象的だった。


■野蛮なアリスさん/ファン・ジョンウン
斎藤真理子訳
河出書房新社
SAVAGE/Hwang Jung-eun/2013

都市近郊の架空の街コモリ。
地名の由来は“墓”。
今、多くの人が行き交う四つ角に立つ女装のホームレス、アリシアが生まれ育った街だ。
アリシアが暮らしていた頃、その街は再開発計画に揺れ、人々の欲望と思惑が渦巻いていた。
朝鮮戦争で家族を失い貧困から這い上がった年老いた父親、父親を嫌い家に寄り付かない異母兄姉、満足な教育を受けさせてもらえなかった恨みつらみを子供たちにぶつける母親。
終わりのない穴を落ち続ける少年アリスアリシアとその弟。
「兄ちゃん」とお話をせがむ弟の声が耳から離れない。間違いなく年間ベスト級の一冊。

「 まだ落ちてて、今も落ちてるんだ。すごく暗くて長い穴の中を落ちながら、アリス少年が思うんだ、僕ずいぶん前に兎一匹追いかけて穴に落ちたんだけど……どんなに落ちても底につかないな……ぼく、ただ落ちている……落ちて、落ちて、落ちて……ずっと、ずっと……もう兎も見えないのにずっと……って考えながら落ちていくんだ。いつか底に着くだろう、そろそろ終わるだろうって思うんだけど終わらなくて、終わんないなーって、一生けんめい考えながら落ちていったんだよ。」

野蛮なアリスさん

野蛮なアリスさん


■日本人の恋びと/イザベル・アジェンデ
木村裕美訳
河出書房新社
EL AMANTE JAPONÉS/Isabel Allende/2015

ホロコーストに日系アメリカ人の強制収容所収容にエイズ禍に人身売買に児童ポルノ
登場人物たちには20世紀初頭から現在に至るまでに人類が被ってきたありとあらゆる災厄が襲う。
何とかそれを乗り越えてきた彼らが善意の人との出会いによって癒されていくのは、こうあって欲しいというアジェンデの願いなのかもしれない。
人生で唯一の愛、その愛をもってしても越えられなかった壁。
愛を手に入れた者は同時にそれを失う苦しみや痛みを引き受けなければならず、愛することにも愛されることにも勇気が必要。
それにしても、愛+官能=最強です。
タカオ・フクダがシークリフの館に植えた桜の木を思わせるゴッホの『花咲くアーモンドの木の枝』を使った表紙も素敵。

日本人の恋びと

日本人の恋びと


■マザリング・サンデー/グレアム・スウィフト
真野泰訳
新潮社(新潮クレスト・ブックス)
Mothering Sunday/Graham Swift/2016

1924年3月30日、メイドに許された年に一度の里帰りの日、マザリング・サンデー。
6月を思わせるお天気のその日、帰る家のないジェーンは秘密の恋人に会うため、自転車を走らせる。
ジェーンにとって生涯忘れられないその日が行きつく戻りつつ描かれるのは、(100歳近くまで生きた)彼女がその後の人生でこの日を何度も何度も反芻したからだろう。

「突然で意外な自由の感覚が体にみなぎった。わたしの人生は始まったところだ」

ジェーンの中の作家としての“種”は、この日、芽を出したのだろう。
同時に喪失をともなって。
ジェーンは知ることのなかったアプリィ邸のメイドやエマ・ホブデイの行動や思いを様々想像しているが、ポール・シェリンガムは、ベッドに横たわるジェーンの姿を見て何を思い、どんな思いで身支度を整え、車を走らせたのだろうか?

マザリング・サンデー (新潮クレスト・ブックス)

マザリング・サンデー (新潮クレスト・ブックス)


■地球にちりばめられて/多和田葉子
講談社

帰る国を失い北欧諸国を難民として転々とし「パンスカ」という独自の言語を獲得したHiruko。
彼女のTV出演に端を発して奇妙な縁で繋がる人々。
それぞれがそれぞれの事情で生まれ育った場所とは別の場所で生きる彼らはデンマークからドイツへ、そしてノルウェー、遂にはフランス、アルルへと辿り着く。
彼らはまさに「地球にちりばめられて」いる。
たとえ、こんな国にはもう住んでいたくないと思ったとしても多くの人にとって海外移住は高いハードルだ。
でも、あなたも私も地球人、地球にちりばめられた一人だと思うと、少しだけ心が軽くなった。

地球にちりばめられて

地球にちりばめられて


■あなたを愛してから/デニス・ルヘイン
加賀山卓朗訳
早川書房(ハヤカワポケットミステリ)
SINCE WE FEEL/DENNIS LEHANE/2017

父の顔どころか名前さえ知らずに育ったレイチェル。
娘に父親について何も語らないまま突然亡くなった母との確執、その後の父親探し。
これがストーリーの発端だが、この作品は中盤以降、劇的にギアチェンジし、思いもよらない着地点を迎える。
そもそも女性視点のデニス・ルヘイン作品が珍しいが(少なくとも私は初めて)、ここまで予測不能のストーリー展開も珍しい。
レイチェルがようやく辿り着いた真実を受け止め、
前に進んでいく姿はある意味清々しい。
多くのルヘイン作品が映像化されているが、これも間違いなく映像化されそうだ。


■飛ぶ孔雀/山尾悠子
文藝春秋

「シブレ山の石切り場で事故があって、火は燃え難くなった」

火が燃え難くなった世界を共有する『飛ぶ孔雀』と『不燃性について』。
前者の主な舞台となるのは川中島Q庭園での大寄せ茶会、後者は山頂ラボの新人歓迎会、そして飛ぶ孔雀と地下に蠢く大蛇。この場面とこの場面、あの人とあの人、繋がりを辿ろうとすれば出来なくもないようでいて、
かえって混乱するような。
ああ、この感覚、なんだろう?と思ったら、
ツイン・ピークス The Return 』ですよ!みなさん!
深追いすればするほど、迷宮に落ちていくのです。

飛ぶ孔雀

飛ぶ孔雀


■贋作/ドミニク・スミス
茂木健訳
東京創元社
THE LAST PAINTING OF SARA DE VOS/Dominic Smith/2016

美術史と絵画修復を学ぶエリーは資産家弁護士マーティが所有する17世紀の女流画家サラ・デ・フォスの現存する唯一の作品「森のはずれにて」の贋作を製作を依頼される。
数十年後、故郷オーストラリアの大学で教えているサラは自分が描いた贋作と再会することになる。
過去に犯した罪の清算を迫られる展開だが、因果応報とはならない意外性がいいし、17世紀を生きたサラの人生も同時に語られ、ストーリーに奥行きを与えている。
愛娘の死と蒸発した夫が残した借金。
苦労の多かったサラの後半生が穏やかなものだったことに救われた。

贋作

贋作


■ガルヴェイアスの犬/ジョゼ・ルイス・ペイショット
木下眞穂訳
新潮社(新潮クレスト・ブックス)
GALVEIAS/José Luis Peixoto/2014

ある晩、ポルトガルの小さな村ガルヴェイアスに大きな衝撃を伴い何かが落下する。
村は騒然となるが、続く豪雨がおさまると村人は皆何事もなかったかのように日常に戻る。
村には硫黄の匂いが立ち込め、パンは酸っぱくなっているというのに。
少しづつこの村の人と人との繋がりが明らかになっていく展開にこちらも「落下した何か」の存在を忘れてしまうという罠。
「落下した何か」は、押し寄せる難民かもしれないし、とんでもない悪法かもしれない。
そこにあるのに、それが何かを良く知ろうともせずに日常に逃げ込んでしまう人間の狡さ、愚かさ。

ガルヴェイアスの犬 (新潮クレスト・ブックス)

ガルヴェイアスの犬 (新潮クレスト・ブックス)


■インヴィジブル/ポール・オースター
柴田元幸
新潮社
INVISIBLE/Paul Auster/2009

入れ子構造」はポール・オースターお馴染みの手法だが、これはどんどん横にずらされていく感じ(自分でも何言ってるのかよくわからない)。
コロンビア大で文学を学ぶアダム・ウォーカーが全体の語り手かと思いきや、これは後年死を前にした彼が書いた自伝的作品『1967年』であり、地の語り手(?)は原稿を託された友人ジム 。
最後は、パリに留学したアダムに恋したセシルの日記で締めくくる構成の妙。
アダムと姉グウィンの間に何があったのか?
ボルンとは何者だったのか?
セシルの父の事故の真相は?
全てはインヴィジブル。

インヴィジブル

インヴィジブル


■鯨/チョン・ミョングァン
斎藤真理子訳
晶文社
THE WHALE/Cheon Myeong-Kwan/2004

生まれて、死ぬ。このまぎれもない真実の間に起きることが「物語」だとしたら、この世界は「物語」に満ちていることになるが、ここで語られる女たち(と彼女たちを巡る男たち)の「物語」のなんと濃密なこと!
あらゆる欲望、愛と憎しみ、憐れみと慈しみ、僥倖と非情な運命に翻弄されつつ、頁をめくる手を止められなかった。
クムボクを圧倒した鯨、市場を練り歩く象のジャンボ、積み上げられた赤煉瓦、群れ飛ぶ蜜蜂、鯨劇場、そして一面に咲き乱れるヒメジョオン
映画業界出身の著者らしい視覚イメージを刺激してくれる描写も強い印象を残す傑作!

「私が書いた小説はすべて、自分が映画にしたかった物語なのです」

こう著者が語るだけあって、
ガープの世界』『東京流れ者』『嫌われ松子の一生』『イングロリアス・バスターズ』等々、様々な映画が頭をよぎった。
桜庭一樹赤朽葉家の伝説』(これ映画にすればいいのに!)、ガブリエル・ガルシア=マルケス百年の孤独』ホセ・ドノソ『夜のみだらな鳥』などラテンアメリカ文学の香りも。

鯨 (韓国文学のオクリモノ)

鯨 (韓国文学のオクリモノ)

この小説を読みながら、思い出した映画と小説はこちら👇
ジョージ・ロイ・ヒルガープの世界

ガープの世界 [DVD]

ガープの世界 [DVD]

鈴木清順東京流れ者中島哲也嫌われ松子の一生クエンティン・タランティーノイングロリアス・バスターズ
イングロリアス・バスターズ [DVD]

イングロリアス・バスターズ [DVD]

ガブリエル・ガルシア=マルケス百年の孤独
百年の孤独 (Obra de Garc´ia M´arquez)

百年の孤独 (Obra de Garc´ia M´arquez)

ホセ・ドノソ『夜のみだらな鳥』
夜のみだらな鳥 (フィクションのエル・ドラード)

夜のみだらな鳥 (フィクションのエル・ドラード)

今月の読書 〜2018年12月〜

今月の読書12月分をお届けします。
オススメは、ジョゼ・ルイス・ペイショット
ポール・オースター『インヴィジブル』
コニー・ウィリス『ブラックアウト』『オール・クリア』チョン・ミョングァン『鯨』
年末に年間ベスト級続々の豊作の12月。


■このサンドイッチ、マヨネーズ忘れてる/ハプワース16、1924年/J・D・サリンジャー
金原瑞人
新潮社
THE SANDWICH HAS NO MAYONNAISE/HAPWORTH16,1924/J.D.Salinger

初めて『ライ麦〜』を読んだ時にはホールデンよりも少し年上だったので正直あまりピンとこなかった(グラース家サーガの方が好きだった)けれど、親世代になった今の方がホールデンの堂々巡りの行き場のなさに寄り添えそうな気がする不思議。
ライ麦畑で崖から落ちそうになった子供達をキャッチする人になりたかったホールデンは戦場で同じことをしたかったのだろうか?
シーモア7歳にしてこの天才性!30歳になったらもうすっかり空っぽになってしまっても無理もない。
天才の孤独と空虚をひしひしと感じる『ハプワース16、1924年』。

〈収録作品〉
⚫︎マディソン・アベニューのはずれでのささいな抵抗
Slight Rebellion off Madison/1946
⚫︎最後の休暇の最後の日
Last Day of the Furlough/1944
⚫︎フランスにて
A Boy in France/1945
⚫︎このサンドイッチ、マヨネーズ忘れてる
This Sandwich Has No Mayonnaise/1945
⚫︎他人
The Stranger/1945
⚫︎若者たち
The Young Folks/1940
⚫︎ロイス・タゲットのロングデビュー
The Long Debut of Lois Taggett/1942
⚫︎ハプワース16、1924年
Hapworth16,1924/1965


■ガルヴェイアスの犬/ジョゼ・ルイス・ペイショット
木下眞穂訳
新潮社(新潮クレスト・ブックス)
GALVEIAS/José Luis Peixoto/2014

ポルトガルの小さな村ガルヴェイアスにある晩、
大きな衝撃を伴い何かが落下する。
村は騒然となるが、続く豪雨がおさまると村人は皆何事もなかったかのように日常に戻る。
村には硫黄の匂いが立ち込め、
パンは酸っぱくなっているのに。
少しづつ人と人との繋がりが明らかになっていく展開にこちらも「落下した何か」の存在を忘れてしまうという罠。
「落下した何か」は、押し寄せる難民かもしれないし、とんでもない悪法かもしれない。
そこにあるのに、それが何かを良く知ろうともせずに日常に逃げ込んでしまう人間の狡さ、愚かさ。

ガルヴェイアスの犬 (新潮クレスト・ブックス)

ガルヴェイアスの犬 (新潮クレスト・ブックス)


■インヴィジブル/ポール・オースター
柴田元幸
新潮社
INVISIBLE/Paul Auster/2009

入れ子構造」はポール・オースターお馴染みの手法だが、これはどんどん横にずらされていく感じ(自分でも何言ってるのかよくわからない)。
コロンビア大で文学を学ぶアダム・ウォーカーが全体の語り手かと思いきや、これは後年死を前にした彼が書いた自伝的作品『1967年』であり、地の語り手(?)は原稿を託された友人ジム 。
最後は、パリに留学したアダムに恋したセシルの日記で締めくくる構成の妙。アダムと姉グウィンの間に何があったのか?ボルンとは何者だったのか?セシルの父の事故の真相は?全ては“インヴィジブル”。

インヴィジブル

インヴィジブル


みをつくし料理帖 小夜しぐれ/高田郁
角川春樹事務所(ハルキ文庫)

「つる家」の名前の由縁、
種市の亡き娘おつるの死の真相。
もう、このシリーズ、
若い娘に対する試練が酷すぎやしませんかっ!
将軍のご落胤だかなんだか失礼な客に家康の歌で切り返すあさひ太夫のカッコよさにシビれたのもつかの間、
源斎先生の想いを知り番頭爽助との縁談を受け入れた美緒の切ない決断に涙が止まリません。
御膳奉行小野寺数馬(小松原の真の姿)のスピンオフが一服の清涼剤。
数馬の妹、料理下手の早帆さん、いいキャラだなあ。

〈収録作品〉
⚫︎迷い蟹/浅蜊の御神酒蒸し
⚫︎夢宵桜/菜の花尽くし
⚫︎小夜しぐれ/寿ぎ膳
⚫︎嘉祥/ひとくち宝珠

小夜しぐれ (みをつくし料理帖)

小夜しぐれ (みをつくし料理帖)


みをつくし料理帖 心星ひとつ/高田郁
角川春樹事務所(ハルキ文庫)

坂村堂さんのご実家が料理番付の行司役、日本橋の名店『一柳』の御子息だったとは!
どうりで舌が肥えてるはずだ。
翁屋、登龍楼、双方からの魅力的な出店の誘いに澪だけでなくつる家の面々の心も揺れる。
自分の料理を食べて喜んでくれる客の顔が見えるつる家でやっていくと決めた澪。
そして、小松原(小野寺)の妹早帆の再登場。
全巻のスピンオフはこのための伏線だったのか!
料理人としての人生か、惚れた男に寄り添い生きる人生か、どっちか選べなんて残酷過ぎます。

〈収録作品〉
⚫︎青葉闇/しくじり生麩
⚫︎天つ瑞風/賄い三方よし
⚫︎時ならぬ花/お手軽割籠
⚫︎心星ひとつ/あたり苧環

心星ひとつ みをつくし料理帖 (角川春樹事務所 時代小説文庫)

心星ひとつ みをつくし料理帖 (角川春樹事務所 時代小説文庫)


■ブラックアウト(新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)/コニー・ウィリス
大森望
早川書房(A HAYAKAWA SCIENCE FICTION SERIES )
BLACKOUT/CONNIE WILLIS/2010

オックスフォード大学史学部タイムトラベルシリーズの第三弾。
ドゥームズデイ・ブック』から時は流れて12歳だったコリンは17歳のイートン校生になり史学部学生のポリーに恋をしている。
今回は、第二次大戦下のイギリスに旅立ったポリー、
メロピー、マイクルの三人が1940年で囚われの身となってしまう。
二段組768ページ!
まあ、話が進まないが、これだけ細かい描写のおかげで読んでいる方もこの時代にどっぷりタイムトリップしている感覚に浸れる。
最後に1940年に降下したのはコリン?
それともダンワージー先生?

ブラックアウト

ブラックアウト


■オール・クリア1/オール・クリア2(新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)/コニー・ウィリス
大森望
早川書房(A HAYAKAWA SCIENCE FICTION SERIES )
ALL CREAR/CONNIE WILLS/2010

第二次大戦下のイギリスに降下し、それぞれ降下点が使えなくなったポリー、メロピー(アイリーン)、
マイクル(マイク)の三人がロンドンに結集。
降下中の他の史学部生に接触して2060年に戻ろうとするが、それぞれに自分たちの存在が歴史を変えてしまったのではないかと不安を抱えている。
『ブラックアウト』に続き、1944年のアーネスト、
メアリの動きが重要な伏線であることは間違いないが、とにかく焦れったい!
クリスティの小説のごとく、状況を逆から見れば、歴史を変えたのではなく、歴史をあるべき姿にするための降下点の消失。
史学部生三人にも、ボドビン姉弟はじめ時代人にも歴史に対する重要な役割があった訳だが、時代人のそれは結果的にその役割を果たしたのに対し、三人は結果を知った上で大きな犠牲を払い役割を受け入れた。
この小説世界においては、時間は一方方向の線ではなく、円環だったのだ。
それにしても、章の配置といい、構成が絶妙、堪能しました。当初もっと長かったらしいが、コリンが三人に辿り着く辺りは大分削られたんじゃないかな?
ダンケルク』『イミテーション・ゲーム』『刑事フォイル』等の映画やドラマシリーズが作品世界の理解に役立ちます。

オール・クリア1

オール・クリア1

オール・クリア2

オール・クリア2

同時代を描いた映像作品として参照したいのはこちら👇

刑事フォイル DVD BOX1

刑事フォイル DVD BOX1


■任務の終わり/スティーヴン・キング
白石朗
文藝春秋
END OF WATCH/STEPHEN KING/2016

前作『ファインダーズ・キーパーズ』で不気味な復活を遂げた“メルセデス・キラー”ことブレイディ・ハーツフィールドは時代遅れのゲーム機“ザビット”を介して他人を操れるようになる。
一作目『ミスター・メルセデス』から退職刑事ホッジズの健康不安(←心臓)は、暗い影を落としていたけれども、まさかシリーズ最終作でこんな病を得るとは!
ホッジズを襲った病がタチの悪いガンだったとは言え、まさか“END OF WATCH”が墓碑銘だったとは。
他人を操るだけでなく、他人の身体まで乗っ取るメルセデス・キラーが得た超能力も、スティーヴン・キングということを考えれば、あり得ない展開ではないのかもしれないが、個人的にはこのシリーズはミステリーだという認識で読んできたので、(身体を乗っ取る云々は)ちょっと禁じ手に感じてしまった。
ホッジズ、ホリー、ジェロームのトリオが魅力的だったので、これで終わってしまうのは残念。

シリーズ一作目『ミスターメルセデス』はこちら👇

シリーズ二作目『ファインダーズ・キーパーズ』はこちら👇


■鯨(韓国文学のオクリモノ)/チョン・ミョングァン
斎藤真理子訳
晶文社
THE WHALE/Cheon Myeong-Kwan/2004

生まれて、死ぬ。このまぎれもない真実の間に起きることが「物語」だとしたら、この世界は「物語」に満ちていることになるが、ここで語られる女たち(と彼女たちを巡る男たち)の「物語」のなんと濃密なこと!
あらゆる欲望、愛と憎しみ、憐れみと慈しみ、僥倖と非情な運命に翻弄されつつ、頁をめくる手を止められなかった。
クムボクを圧倒した鯨、市場を練り歩く象のジャンボ、積み上げられた赤煉瓦、群れ飛ぶ蜜蜂、鯨劇場、そして一面に咲き乱れるヒメジョオン
映画業界出身の著者らしい視覚イメージを刺激してくれる描写も強い印象を残す傑作!
「私が書いた小説はすべて、自分が映画にしたかった物語なのです」
というだけあって、『ガープの世界』『東京流れ者』『嫌われ松子の一生』『イングロリアス・バスターズ』等々、様々な映画が頭をよぎった。『赤朽葉家の伝説』(これ映画にすればいいのに!)『百年の孤独』等、小説も想起。

鯨 (韓国文学のオクリモノ)

鯨 (韓国文学のオクリモノ)


〈私的オススメ関連作品〉

ジョン・アーヴィングガープの世界

ガープの世界〈上〉 (新潮文庫)

ガープの世界〈上〉 (新潮文庫)

ガープの世界〈下〉 (新潮文庫)

ガープの世界〈下〉 (新潮文庫)

ジョージ・ロイ・ヒル監督(ロビン・ウィリアムス主演)の映画化作品はこちら👇
ガープの世界 [DVD]

ガープの世界 [DVD]

鈴木清順監督(渡哲也主演)『東京流れ者』はこちら👇

桜庭一樹赤朽葉家の伝説』はこちら👇

赤朽葉家の伝説 (創元推理文庫)

赤朽葉家の伝説 (創元推理文庫)

赤朽葉家の伝説

赤朽葉家の伝説

山田宗樹嫌われ松子の一生』はこちら👇

嫌われ松子の一生 (上) (幻冬舎文庫)

嫌われ松子の一生 (上) (幻冬舎文庫)

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