極私的映画案内

新作、旧作含め極私的オススメ映画をご案内します。時々はおすすめ本も。

ツイン・ピークス The Return Episode 11 〈第11話〉

EPISODE 11


ツイン・ピークス:某所

兄弟とみられる少年たちが家の前で
キャッチボールをしている。
まだ幼い末っ子に気を使って
やさしいボールを投げる長男。
ところが、次男の投げたボールがそれて道路に出てしまう。
ボールを取りに行った長男は、
道路脇の森から這い出ててきたミリアム・サリヴァンを発見する。
リチャード・ホーンに襲われたミリアムは血まみれだ。

「誰かいるぞ…ママ呼んでこい!」

※このシーンで、一番年嵩の少年を演じているのは、
Travis Frost。
多分、この子はクリエイターのマーク・フロストのお孫さんじゃないかと思う。


ツイン・ピークス:ニュー・ファット・トラウト・トレーラーパーク

レベッカベッキー)・バーネットが誰かと電話中。

「えっ?どこで?
ったく!でも私、車持ってない!!!」

絶叫するベッキー

RRダイナーで仕事中のシェリー。
ベッキーからの電話を受ける。

ベッキー?」
「ママ!車貸して!スティーヴンなの!」
「何があったの?」
「スティーヴンなんだって!
お願い!車貸して!急いで!」
「今からすぐ行く!
ごめん、ノーマ、行かなきゃ!」

心配そうな表情を浮かべ、シェリーを見送るノーマ。

シェリーを待つベッキーはソファの下から銃を持ち出す。
シェリーがトレーラーパークに到着。
許さない、許さないとベッキーは独り言のように呟きながらシェリーから車のキーを奪うと車に乗り込む。
ベッキーを止めようとシェリーは車のフロントにしがみつくが、ベッキーは車をバックターンさせてシェリーを振り払うと猛スピードで走り去る。

騒ぎを聞きつけた管理人のカール・ロッドがシェリーに歩み寄る。
RRダイナーまで送ってくれるようカールに頼むシェリー。
カールの笛のひと吹きで、いつものヴァン。

「何があったんだ?」
ベッキーがスティーヴンとケンカした」
「あー、まったく…」

ヴァンの車中からノーマに電話をするシェリー。

「ノーマ、ベッキーがどっかに飛び出して行っちゃったの、どうすればいい?」
「ボビーに電話したらどう?」

それを隣で聞いていたカールは無線で保安官事務所のマギーと交信、ボビーを呼び出してもらう。

「ボビー、シェリーよ
ベッキーが車で出てった」
「誰の車だ?」
「あたしの!行き先はわかんないけど、
あの子銃を持ってんの!」

「ああ、まったく…」

嘆くカール。

※カールの笛のひと吹きでやって来るヴァン。
(カールは朝のお出掛けの時にもこのヴァンを利用)
ヴァンに装備されてる保安官事務所直通の無線。
カールって何者?ただの管理人じゃないのかも。


ツイン・ピークス:とあるアパート

ティーヴンがいるらしいアパート。
銃を持ったベッキーが階段を駆け上がってくる。
208号室の前までくるとドアを銃で乱暴にノック。

「スティーヴン!!!
いるのはわかってんだから!!
出て来なさいよっ!この腰抜け!!」

「いないよ、さっき、二人で出てった
だから留守だよ、誰もいない!」

ベッキーが銃を持っていることに気付いた隣人女性は慌てて部屋に引っ込む。

ベッキーは怒りに任せてドアに向かって銃弾を打ち込む。

「ふざけんな!!!スティーヴン!!!」

ベッキーが上がってきた階段とは反対側の階段の下で身を潜めているスティーヴンと部屋の住人らしい女。

※スティーヴンの浮気相手(らしい)の女は、
ローラ・パーマーの親友だったドナ・ヘイワードの妹でヘイワード先生の次女ガースティン・ヘイワードらしい。
ガースティンはスティーヴンより大分年上だよね。
〈追記/訂正〉ガースティンはヘイワード家の三女。次女はハリエット。ファースト・シーズンで夜間家を抜け出すドナのアリバイ作りに協力。


サウスダコタ州バックホー

FBIの一行とバックホーン署のマックレー刑事がウィリアムズ・ヘイスティングスがブリッグス少佐と会ったという寂れた場所に到着。

マックレー刑事の車に同乗していたヘイスティングスにタミーが詳しい事情を聞く。

「ここね?ブリッグス少佐を見たのは」
「ええ、そうです」
「どうやって中に入ったの?」
「フェンスの裂け目から」
「そこからどのくらい進んだ?」
「5メートルから6メートル」
「その後どうなったの?」
「何があったか、覚えてない」

ヘイスティングスの視線の先、
フェンスの奥の廃屋とコンテナの間でWoodsman の姿が現れ、そして消える。

怯えるヘイスティングス
Woodsman の姿はゴードンとアルバートも見ていた。

フェンスをくぐり、廃屋に近づいて行くゴードンとアルバート

上空を見上げるゴードン。
すると、上空に雲を巻き込み凄い勢いで竜巻のような渦が出現する。

上空に両手を差し出したゴードンは渦に吸い込まれそうに見える。
やがて、ゴードンは渦の中心に、
階段の上に立っている3人のWoodsman たちの姿を見る。

吸い込まれそうになっているゴードンを慌ててアルバートが引き戻す。
すると、もう渦は消えている。

「こういうことなんですね」
「こういうことだな」

ふと、アルバートが廃屋の周辺に視線を移すとそこには女性の首なし死体が。
どうやらルース・ダベンポートの死体らしい。
(そしてまたWoodsman の姿)
死体の左腕の内側には、場所を示す座標の数字。

タバコを吸っていたダイアンはマックレー刑事の車の背後に忍び寄るWoodsman の姿を見る。
車に近付くWoodsman 。
やがて、グシャッという嫌な音と共に頭部を潰されるヘイスティングス
慌てて車から降りるマックレー刑事。

「おいっ!嘘だろ?
クソっ!おい、おい、おい!至急応援を頼む!
場所はシカモア2240!シカモア2240だ!」

車内を覗き込むダイアン、ゴードン、アルバート、タミー。

※ルース・ダベンポートの残りの遺体が発見され、用済み(?)となったウィリアム・ヘイスティングスも殺される。
シカモア2240、この住所からもここがブラックロッジの入り口であることを示している。
前シーズン、ツイン・ピークスの森の中にあったブラックロッジの入り口には、確かスズカケの木があったと思うんだけど、スズカケの木とシカモアの木はとてもよく似ているらしい。


ツイン・ピークス:RRダイナー

家族会議中のボビー、シェリー、娘のベッキー
カウンターの中から3人を見守るノーマ。

「で、お前はどうしたいんだ?」
「もう終わりにしたい」
「じゃ、別れるのか?」
「でも、愛してるの」
「あのアパートのドアは弁償しなきゃならないぞ」
「なんで私が?あの女の部屋だよ!
私は払わないから!だってお金なんかないし!」
「俺が保安官助手じゃなければ、
お前は今頃檻の中だぞ」
「お金はあたしが貸す」
「あー、ダメ、もうママからお金はもらえない
ちなみに今までも全部スティーヴンが使ったんだけど」
「金は俺が貸す
だから返すんだぞ、しっかりしなきゃダメだ」
「トレーラーハウスからも出て、
ティーヴンと距離を置くの」
「彼、今は色々キツい時期なだけだよ」
ベッキー、俺もあいつだって最後はお前を大事にすると思ってた
だがどうだ?ただの期待はずれだ」
「まだはずれてないって!
彼、根は真面目だし、仕事だって毎日探しに行ってる、
と思ってた…」
「いつも揉めてるってカールが心配してた」
「あいつお前を殴るのか?」
「えっ?それはないよ!さすがに…手は上げない
ホントだって!」
「だといいんだが、この先ヤツがお前に触れたり法を犯したりしたらタダじゃおかない!
俺がブチのめす!」
「聞いて、ベッキー
あんたは結婚もしてるし、もう立派な大人よ
でもあたしたちは親で、あんたを愛してる
だから大事な娘を失いたくないの」

泣き崩れるシェリーに車から振り落としたことを詫びるベッキー
抱き合う母と娘。

店の中のシェリーに気付き、窓の外から近寄ってくるレッド。
レッドに気付き、微笑むシェリー。
席を立ってレッドの元へ向かうシェリー。
店の外で熱いキス。
複雑な表情のボビーとベッキー

ボビーとベッキーの視線に気付いて場所を移した二人は再び熱いキス。

満面の笑みをたたえて席に戻ってきたシェリー。
しかし、気まずい雰囲気が漂う。

そこに銃声が響く。
RRダイナーに銃弾が撃ち込まれた!
慌ててその場に伏せる客。
銃を構えて店の外に出るボビー。

どうやら箱に入ってた銃を、
それとは知らずに母親が後部座席に置き、
その銃を持ち出した幼い子供が触って暴発させてしまったらしい。
妻が、黙って銃を車内に持ち込んだ夫を大声でなじっている。
後続車両がクラクションを鳴らし続けている。
銃声を聞きつけ駆け付けた保安官助手のジェシーに夫婦の身元確認と周辺の交通整理を頼むボビー。
母親から銃を預かったボビーは後続車両にクラクションを鳴らすのをやめるよう言いに行く。

「いったい、何やってんのよおー!
あたしたちは家に帰りたいの!
もう遅刻なのよ!夕食に遅れるでしょ?
もうとっくに6時半過ぎてる!
なんで、こうなるのよおー!
見たわよ!車の中から銃を撃つのを見た!
彼女のおじが夕食に来るの!
いい?ホントにホントに久しぶりに彼女はおじに会えるんだから!
なのに遅刻する!まだ家まで大分あるのにぃー!
お願い!家に帰らせてよ!彼女、病気なの!」

ボビーが女性の剣幕に呆気にとられていると、
助手席のシートに沈み込んでいた“病気の彼女”が口から何か液体を吐きだしながら運転席の窓の方の近づいて来る。

※どうやらボビーとシェリーの二人は、
結婚しベッキーを授かったものの、今はもうすでに別れてしまったらしい。
二人がいまも夫婦なら、ベッキーが飛び出して行った時にシェリーはノーマではなく、まずボビーに連絡しただろうし、ボビーがシェリーとレッドを黙って見ているはずがない。
それにしても、第2話でレッドから誘いをかけられていたシェリー。二人の仲はここまで発展していたのか
詳しくはこちら
👉ツイン・ピークス The Return Episode 2 〈第2話〉 - 極私的映画案内
しかし、レッドはドラッグディーラー。
悪い男に惹かれてしまうシェリー!
まだ懲りてないの?

銃を暴発させてしまった(とボビーは思った)少年。
しかし、このキメポーズと不敵な面構え。
後続車両の女性は「車の中から銃を撃つのを見た」と証言している。
多分、後続車両の病気の女性はこの先のストーリーには関係ないのだろうが、こういう話の筋には関係ない、不気味で気持ちの悪いシーンを入れてくるのが、
いかにもデヴィッド・リンチ

第8話でも少し触れたが、
シェリーの現在の恋人らしいドラッグディーラー、
レッドを演じているのはバルサザール・ゲディ
彼はパトリシア・アークエット演じる女に翻弄される青年役で『ロスト・ハイウェイ』にも出演している、いわばデヴィッド・リンチ組。
彼の曽祖父ジャン・ポール・ゲティは石油で巨万の富を築き“石油王”と呼ばれた人物でゲティ財団(芸術機関としては世界一の資産を保有)の創設者。
父親のジョン・ポール・ゲティ三世は16歳の時にイタリアマフィアに誘拐され家族に身代金が要求されるが、普段から放蕩生活を送っていたジョンの狂言誘拐だと思われ、吝嗇で有名だったゲティ卿は身代金の支払いを拒否する。
しかし、ジョンの一房の髪と切り取られた耳が送られきた段階で、ようやく身代金の支払いに応じ、ジョンは約半年ぶりに生きて解放された。
当初要求された身代金は1700万ドルだったが、最終的に支払ったのは約290万ドルだというから交渉上手というかなんというか。
ジョン・ポール・ゲティ三世は俳優として何本か映画にも出演しているが、長年アルコールや薬物の依存症に苦しみ、54歳という若さで亡くなっている。
ちなみにこの誘拐事件については、リドリー・スコット監督で映画化されるようだ。
(「All the Money in the World(原題)」)
詳しくはこちら
👉リダイレクトの警告
ゲッティイメージズの共同創業者で共同経営者マーク・ゲティはバルサザールの叔父にあたる。


ツイン・ピークス:保安官事務所

ブリッグス少佐からもたらされた情報について検討しているトルーマン保安官とホーク。

「ブリッグス少佐の情報を聞いて思うところがありました。
きっと俺の地図で説明すればわかりやすいかと」

ホークはそう言って先住民族に伝わる地図を広げてみせる。


「地図自体はかなり古いものですが、
常に新しくなっていて、いわば生ける地図だ
ここにかつて少佐の基地があり、このブルー・パイン・マウンテンは極めて崇高かつ神聖な場所です
少佐は我々にここへ向かうよう示唆したのかもしれない」
「この焚き火のようなものは何だ?」
「焚き火ではなく、これ火の象徴です
「というと?」
「つまり炎の一種ですが、
炎というよりも現代の電気に近いもの」
「善か?」
「それは意志次第
火の背後にあるのが善か悪かによります
少佐は行くべきは明後日と日付も示してくれ、
この星々が告げているのも同じ日付なんです
そして、ここへ行けと」
「これは?」
「とうもろこしで肥沃さを示している
だが黒い、意味するのは、病、異常、死だ
この二つの象徴を足した場合、意味するのは」
「黒い火」
「その通り」

「この絵は少佐が残してくれたあの小さな紙にも書いてあったが、何なんだ?」
「フランク、これについては何も知らない方がいい」
「決してか?」
「決して」

そこへ丸太おばさんからホークへ電話がかかってくる。

「探し物を見つけたのね」
「そうだ、すまない、君に知らせるべきだった」
「何を見つけたの?ホーク」
「マーガレット、それは言えないんだ」
「私の丸太が火を怖がってる
あなたの進む先には火があるわ
ホーク、あなたの進む先には火がある」
「わかったよ、マーガレット」
「おやすみ、ホーク」
「おやすみ、そしてありがとう」

そこへノックの音。
ドアをノックしたのは、保安官助手のジェシーだった。
保安官に自分の新しい車を見せたいらしい。
車は明日見せてもらうと体良く追い払う保安官。

※ブリッグス少佐が残した小さな紙はこちら。

ホーク保安官に知らない方がいいといったあの絵は、
第2話でバッド・クーパーがダーリャに見せていたカードに書いてあった絵と同じ。
バッド・クーパーはこれが欲しいと言っていたが、
一体どんな意味があるのか?
詳しくはこちら
👉ツイン・ピークス The Return Episode 2 〈第2話〉 - 極私的映画案内


サウスダコタ州バックホーン警察署

マックレー刑事のオフィス。
ゴードンの手が小刻みに震えている。

「まるで怯えた猫だな、こんなに震えるとは」
「今コーヒーを用意してくれてますが、
やめた方が賢明でしょうね」
「コーヒー、私は是非飲みたい」
「ホットミルクの方がいいのでは?猫には
緊張もとれます」
「ああ、写真を撮ってたな
ルースの写真を見せてくれ」

アルバートがゴードンにルース・ダベンポートの腕の写真を見せていると、横から覗き込んでいるダイアンが口を小さく動かしながら数字を記憶しようとしているような様子。
それをアルバートに気づかれ目をそらすダイアン。

「あの座標が示す場所はどこだったんだ?」
「後半の数字がいくつか消えてしまってましたが、
北にある小さな町…」

アルバートがそこまで答えたところで、
マックレー刑事とタミーがコーヒーとドーナツを運んでくる。

「さて、怪しい人物は見つかりませんでしたが、
あの遺体はルース・ダベンポートでした」
「だが、ブリッグス少佐の頭部はまだ出てこないか?」
「探しましたが、痕跡はありません
銃声を聞いた者も弾も出ずです」
ヘイスティングスは撃たれた死に方じゃない」
「ええ、まだ車を精査中です」
「男を見たぞ、アルバートもだ、二人で見た」
ルースの遺体があった場所より奥にいた
「どんな風貌?」
「一見ホームレスみたいだった
ボロ服にヒゲ、ニット帽」
「似た男が車から出て行くのを見たかもしれない」
あっ、でも多分、見間違い」
「私も乗ってましたが、特に誰も見てません」
「私も誰も見てません」
「だから多分見間違い」
「今思い出した、ある部屋にいた男たちを見た
アルバートと見た男に似たヒゲを生やした男たちだ
汚れてヒゲ面の男たちがある部屋にいた」

アルバートが言いかけた北にある小さな町とはツイン・ピークスのことなのか?
ダイアンは座標をバッド・クーパーに知らせようとしているのか?


■ラスベガス:ラッキー7保険

マリンズ社長がダギー(クーパー)をオフィスに呼び出す。
フィルのコーヒーに誘導され、オフィスにやってくるクーパー。
デスクで腕立てしながら待つマリンズ社長。
オフィスの外ではアンソニー・シンクレアが様子を伺っている。

「ダギー、時間をかけてよく考えたんだが、
君が調査してくれたおかげで汚職警官がらみの事態が起きていることがわかったし、
組織犯罪とつながった人間が社内にいるのも明らかだ
最近、二度も命を狙われたろ?
車を爆破され、銃でも襲われた
こりゃもう間違いない
一方で、君のおかげでミッチャム兄弟の案件は
放火じゃないことが判明した
だが、失火でも保険金の請求は合法だ
だから私としては、ミッチャム兄弟はたとえ黒い噂があったとしても、本件には無関係だと思う
ということはだ、君の命を狙ったのは別の誰かということになるぞ」
「別の誰か…」
「ああ、君の言う通りだ
だが興味深いことに、兄弟から私に電話があった
君に直接会って話がしたいそうだ
まあ、普通なら大事な社員をあんな連中と接触させたりはしないが、今回の場合、
君は彼らに代わって間違いを正した訳だし、
きっと歓迎されるはずだ、これもあるしな
見ろ、3000万ドル分の小切手だ
あ、今君はこう思ってるな?
こんな小さな会社が3000万ドルなんて支払ったら自殺行為だ、だろ?
だが、バトリング・バドはいつも常に上の階級の相手に挑んできた
うちが入っている保険会社にバックアップ・プランを適用させたんだよ
火事が事故なのは事実だからな
我々の損失を補填できた上、プラスもある
ブッシュネルは抜け目ない
バトリング・バドすぐに体勢を立て直す
指定してきた時間は5時半だ
迎えの車が来る」

うなずきあうブッシュネルとクーパー。

※バトリング・バドはマリンズ社長のボクサー時代のニックネーム。
確か、クーパーが初めてラッキー7保険に出社した時、アンソニーが会議で放火が疑われたが保険金が支払われることになったと言っていたのがミッチャム兄弟のホテルの案件。
てっきり、ミッチャム兄弟が企んだ保険金詐欺にアンソニーもかんでいて、その不正をクーパーが暴いたのかと思ったが、そうではないらしい。
アンソニーが命令を受けていたのはダンカン・トッド。
事故を放火に見せかけ、保険金の支払いをさせないよう仕組んだのかもしれない。


■ラスベガス:ミッチャム兄弟の邸宅

テーブルにセッティングしてあるのは朝食のようだが、
時刻はすでに午後2時過ぎ。
新聞を読みながら、シリアルを食べているロドニー。
そこへブラッドリーも起きて来る。
機嫌の悪そうなブラッドリー。

「なあ、ロドニー、夢を見たんだ、朝までずっと
ダグラス・ジョーンズを殺してた
憎くてたまらねえ、殺したくてウズウズするんだ」
「あと3時間待てるか?」
「ギリギリな!…食欲ねえ」

大きくため息をつくブラッドリー。


■ラスベガス:ラッキー7保険

ビルのロビーまでクーパーを連れてくるブッシュネル社長。
しかし、ロビーの隅のコーヒーショップから片腕の男、フィリップ・ジェラードがクーパーを手招きしている。
コーヒーショップに向かうクーパー。

外に出て来たクーパーはダンボールを抱えている。
ミッチャム兄弟の迎えのリムジンの運転手はクーパーがジャックポットを連発した夜、自宅まで送り届けてくれた運転手だ。

ブッシュネル社長はクーパーがレストランに招待されたと思い込んでいるが、リムジンは賑やかの通りを抜け、砂漠へと向かっている。


■ラスベガス:砂漠の真ん中

クーパーを待ち受けているミッチャム兄弟。

「何が不満なんだ?喜べよ!
もうすぐあいつを始末出来るんだ
俺たちをコケにしてくれたどアホをな!」
「アイクを片付けてくれた恩がある」
「俺たちのためじゃねえ
ヤツのせいで3000万ドルがパーで
カジノからは47万2000ドル奪われた」
「ああ、確かにその通りだ」
「ああ、俺が正しい!」

「何?」
「俺の夢だ」
「ああ、また夢か」
「夢の中だと、夢の中だと、キャンディに殴られた傷が治ってた」
「えっ?」
「この傷がキレイに」
「バカな!」
「見てみよう」

ブラッドリーが、嫌がるロドニーの左頬の絆創膏を無理矢理剥がすと、傷はキレイに治っていた。

「おいっ!嘘だろ?」

信じられないロドニー。

「他にも見た、だが思い出せねえ」

クーパーを乗せたリムジンが到着する。
車を降りたクーパーがダンボール箱を持っているのを見てブラッドリーが何か思い出す。
ロドニーは運転手を返そうとするが、ブラッドリーが引き止める。

「あいつ、箱を持ってるだろ?」
「ああ」
「あれも夢で見た」
「まったく…」
「違う!聞いてくれ!頼むから
あの中に何か入ってる
それがもし俺が夢に見たものと同じなら
あいつを殺せねえ」
「寝ぼけたこと言ってる…」
「俺は本気で言ってるんだって!
もしあの箱の中にヤツがあれを入れてるとしたら
俺たちはあいつを殺せない」
「なぜ?」
「ヤツが俺たちの敵じゃねえからだよ!」
「そんなことなぜわかる?」
「俺はただ夢で見たままを言ってるだけだ
だから中身があれじゃなけりゃ、忘れてくれていい」
「あれって?」
「万に一つの可能性しかないが
もしも入ってたら、約束してくれ
この件では、俺たちの答えはひとつだと」
「わかった」
「あいつのこと、殺さない」
「わかった、くどいぞ!あれって?」

ロドニーの耳元で何事がささやくブラッドリー。
クーパーに銃を向けるロドニー。

「よし、答えろ!
その箱の中身はチェリーパイなのか?」
「チェリーパイ…」

ブラッドリーが箱を開けると、
そこには本当にチェリーパイが入っていた。
クーパーの内ポケットから3000万ドルの小切手を見つけたブラッドリーは大喜び!
雄叫びを上げるミッチャム兄弟。

「あいつ、気に入った!
ダギー!会えてホントに嬉しい」

※意外なところで、チェリーパイの再登場!
ミッチャム兄弟、面白い!
今シリーズ、一番のお気に入りキャラかも!


■ラスベガス:レストラン

ご機嫌なミッチャム兄弟がクーパーを接待中。
シャンパンで乾杯している。

「つまりお前さんちの子供は持ってないってことか?
遊具セットがない?」
「遊具セットがない…」
「俺たちが育った施設にも遊具セットはあった」
「子供には遊具セットを与えるべきだ」

そこへ、クーパーに教えられた台でジャックポットを出した老婆がすっかり見違えた姿でクーパーに声をかける。

「ミスター、ジャックポット
是非また会いたかったの
毎日あなたを思って感謝し続けたのよ
おかげで人生が変わったわ
この子は息子のデンバー、私の元へ戻って来てくれてねえ
今は犬も飼ってるし、家だってあるのよ
あなたのおかげで人生を取り戻せたの
あなたにはお礼の言葉もない
気付いていらっしゃるかしら?
あなた方は今特別な方と食事をしていらっしゃるのよ
彼は私の恩人だわ」
「我々にとってもですよ」
「ありがとう、ホントに感謝してる
よかったわ、ミスター・ジャックポット
あなたにもう一度ありがとうが言えて」

老婦人とその息子が去ると、キャンディ、マンディ、サンディの三人組が登場。
キャンディはまたしても心がお留守の様子で鈍い反応。

テーブルのチェリーパイを夢中で食べているクーパー。

「ヤケに美味いパイだ」
「ヤケに美味い…」

「あんたの命を救ってくれたパイに」
「それに、俺たちの金に」

再び乾杯する三人。
チェリーパイのお代わりをするクーパー。
満足そうなミッチャム兄弟。

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コーヒーにドーナツにチェリーパイ!
これぞ、ツイン・ピークス
来週はいよいよオードリー・ホーン再登場。
リチャードの悪事は暴露されるのか?
うーん、ミッチャム兄弟、かわいい❤️

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⚫︎ツイン・ピークス The Return (全18回)
TWIN PEAKS THE RETURN
監督:デヴィッド・リンチ
脚本:デヴィッド・リンチ,マーク・フロスト
音楽:アンジェロ・バダラメンディ


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ツイン・ピークス シークレット・ヒストリー

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旧バージョン持ってたけど、ブックオフに売ってしまった。。。

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今月の読書 〜2017年9月〜

9月は何と言っても圧巻だったマリオ・バルガス=リョサ『都会と犬ども』と、終盤で全てをひっくり返すテジュ・コール『オープン・シティ』の二冊が特に印象に残った二冊。
ボラーニョは相変わらず好きだったし、
多和田葉子さんの本も少しずつ読んでいこう。エンタメではこれがデビュー作だというスミス・ヘンダーソン『われらの独立を記念し』が良かったです。


蜜蜂と遠雷恩田陸
幻冬舎

主要登場人物キャラクター設定が、小説というより漫画みたいだなと感じたが、それはまあよしとして、
国際的ピアノコンクールのエントリーから本戦までという限られた時間を描くという試みは面白いし、
音楽を言葉で表現するという難しい挑戦も途中まではよかったんだが、後半、どうにも表現が大仰過ぎて辟易し、飛ばし読みしてしまった。
最初は美味しかったのに食べてるうちに脂っこいので箸が止まってしまった料理みたいな感じと言ったらいいのか。
コンテスタントの中で宇宙人的存在の風間塵がその真価を見せつけるオケとのリハーサルのシーンは好きでした。

蜜蜂と遠雷

蜜蜂と遠雷

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■都会と犬ども/マリオ・バルガス=リョサ
杉山晃 訳/新潮社
La ciudad y los perros /Mario Vargas Llosa/1962

どんな時代のどんな学校にもある程度は存在するであろうスクール・カースト
しかし、あらゆる階級の少年達が集まるレオンシオ・プラド士官学校で、その階級を決定付けるのは腕力と狡賢さ。
アルベルトは道化を演じ、ジャガーはその腕力でクラスを支配し、繊細で心優しいリカルドは“奴隷”となる。
バルガス=リョサ二十代半ばの作品だが、
第二部でガンボア中佐の存在感が増し、
テレサに思いを寄せる謎の少年の正体が明らかになる見事な構成は既に見てとれるし、落ち着き払った最近の作品にはあまり見られない“熱”が感じられる。傑作です。

都会と犬ども

都会と犬ども


■死の天使ギルティネ/サンドローネ・ダツィエーリ
清水由貴子 訳/早川書房(ハヤカワミステリ文庫
L'ANGELO/Sandrone Dazieri/2016

ローマに到着した急行列車の先頭車両の乗客が全員死亡していた。
という、かなりショッキング(ど派手)な幕開けのシリーズ第二作。
前作ダンテが捜査に関わったのはほぼ事件当事者という事情だったが、今回はダンテが捜査に関わるのはあくまでコロンバの独断であり、こじつけに近い印象。
ただし、ISISの犯行が疑われるテロがヨーロッパ各国で起きている現実が、ストーリーを寄りリアルに感じさせるのも確か。
ISISの脅威だとかチェルノブイリだとか事実を巧くストーリーに取り込んではいるが、特殊部隊出身の男が真相をあっさり喋ったり、ダンテの弟(と自称する男)がイタリアのテロ対策班に潜入していたりとご都合主義は否めない。
なんでも三部作の構想だそうで、現在執筆中だという三作目でダンテの出自、幼少期の謎が明らかになるのだろう。
二作目である本作は大いなる伏線と言ったところか?
それにしても「コタール症候群」なんていう奇妙な病気があるとは、初めて知りました。
作曲家志望のコロンバの部下アルベルティは無事でいて欲しい。

死の天使ギルティネ 上 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

死の天使ギルティネ 上 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

死の天使ギルティネ 下 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

死の天使ギルティネ 下 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

死の天使ギルティネ(上) (ハヤカワ・ミステリ文庫)

死の天使ギルティネ(上) (ハヤカワ・ミステリ文庫)

死の天使ギルティネ(下) (ハヤカワ・ミステリ文庫)

死の天使ギルティネ(下) (ハヤカワ・ミステリ文庫)

👇シリーズ一作目『パードレはそこにいる』はこちら

パードレはそこにいる (上) (ハヤカワ・ミステリ文庫)

パードレはそこにいる (上) (ハヤカワ・ミステリ文庫)

パードレはそこにいる (下) (ハヤカワ・ミステリ文庫)

パードレはそこにいる (下) (ハヤカワ・ミステリ文庫)

パードレはそこにいる 下 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

パードレはそこにいる 下 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

パードレはそこにいる 上 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

パードレはそこにいる 上 (ハヤカワ・ミステリ文庫)


スポットライト 世紀のスクープ カトリック教会の大罪/ボストングローブ紙〈スポットライト〉チーム
有澤真庭 訳/竹書房
BETRAYAL The Crisis In The Catholic Church/the investigation staff of the Boston globe /2015

アカデミー賞受賞作の映画では、数々の圧力を乗り越え、カトリック教会の神父による性的虐待事件と教会の組織的隠蔽に関する報道にこぎ着けた記者たちの奮闘が描かれていたが、本書は最初のスクープからその後数百本に及んだ報道の全貌である。
あらためてその所業の醜悪さには暗澹たる思いだが、
なぜここまで被害者の声が放置され続けたかと言えば、
事件の隠蔽には教会組織だけでなく、地域、一般信者までもが加担していたからだ。
神父と信者、教会と信者の関係については不信心者は想像するしかないが、そこにこそ事件の闇がある。
神=教会、神=神父(司祭、司教)ではないのが、
信者にとっては絶対に逆らえない相手だったことは想像に難くない。
教会側にとっても示談に要する多額の賠償金は相当な負担であり破産状態に陥る教区もあった。
それでも問題を隠し続けたのは、次期法王とも目された枢機卿の保身だ。
その結果、人々を救うはずの協会側が長年に渡って(恐らく数百年単位で)災厄をまき散らし続けた。
コツコツと取材を重ね、証拠を発見し、多くの圧力を乗り越え隠蔽の図式を明らかにした〈スポットライト〉チームは称賛に値するが、昨今の日本の報道事情を鑑みるに「私たちの〈スポットライト〉チームは何処に?」と暗い気持ちになったことも確かだ。
非常に残念なことに、翻訳が酷い。
日本語としてこなれてないだけでなく、
被害者に対し「男性」「男」と表現がバラバラだったり(「男性」で統一すべき)、
明らかな間違いも散見される。
校正者も編集者も目を通しているはずなのにこの状態で出版されてしまったことに驚く。
日頃翻訳者の素晴らしい仕事に触れているだけに残念で仕方なかった。

スポットライト 世紀のスクープ カトリック教会の大罪

スポットライト 世紀のスクープ カトリック教会の大罪

👇映画化されたアカデミー賞受賞作
スポットライト 世紀のスクープ』はこちら

スポットライト 世紀のスクープ[Blu-ray]

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■通話/ロベルト・ボラーニョ
(ボラーニョ・コレクション)

ロベルト・ボラーニョは詩人であり小説家だが、
それ以前に名もなき人の声に耳をかたむける人だったんじゃないかと思う。
多分ボラーニョの周りの名もなき人々の多くが、
彼には心を開いて、自分の人生について語ったんじゃないか、そんな風に思う。
自身の作家としての成功を充分見届けることが出来ずにこの世を去った彼だからこそ、彼らの物語に共感することが出来たんじゃないかな。
収録作のどれも好きだけど、「エンリケマルティン」「雪」「「ジョアンナ・シルヴェストリ」辺りがお気に入り。
(収録作品)
1.通話
⚫︎センシニ
⚫︎アンリ・シモン・ルブランス
⚫︎文学の冒険
⚫︎通話
2.刑事たち
⚫︎芋虫
⚫︎雪
⚫︎ロシア話をもうひとつ
⚫︎ウィリアム・バーンズ
⚫︎刑事たち
3.アン・ムーアの人生
⚫︎独房の同志
⚫︎クララ
⚫︎ジョアンナ・シルヴェストリ
⚫︎アン・ムーアの人生

[改訳]通話 (ボラーニョ・コレクション)

[改訳]通話 (ボラーニョ・コレクション)


■献灯使/多和田葉子
講談社

3.11後のディストピア小説。
表題作の『献灯使』は『不死の鳥』と対になっている。
100歳を過ぎても老人は老いずに働き続け、子供たちの身体はガラスのように脆い。
都心部の人口は激減し、人々は四国や沖縄に移住、
鎖国政策をとる国では外来語も許されない。
不気味なのは、フィクションのはずのディストピア世界が今現在のこの国の状況に奇妙に符合することだ。
2014年の作品だが予言めいている。

「これまで適用されたことのない法律ほど恐ろしいものはない。誰かを投獄したくなったら、みんなが平気で破っている法律を突然持ちだして逮捕すればいいのである。」

「議員たちの仕事は法律をいじることだった。法律は絶えず変わっていくので、いじられていることは確かだ。ところが、誰がどういう目的でどういじっているのかが全く伝わってこない。法そのものが見えないまま、法に肌を焼かれないように直感ばかりを研ぎ澄まし、自己規制して生きている。」

「知らない単語は知っている単語の中にあらわれることで、辞書を引かなくても、意味が理解できる。知っている単語の中に一割くらい知らない単語の混ざったものを読み続けることで語彙は増えていく。」

表題作のタイトル(『献灯使』→“遣唐使”)、
漢字を解体しながら物語が進む『韋駄天どこまでも』、
言葉遊び満載の多和田ワールドは日本語で表現することの面白さを教えてくれる。堪能しました!
(収録作品)
⚫︎献灯使
⚫︎韋駄天どこまでも
⚫︎不死の鳥
⚫︎彼岸
⚫︎動物たちのバベル

献灯使

献灯使

献灯使 (講談社文庫)

献灯使 (講談社文庫)


■われらの独立を記念し/スミス・ヘンダーソン
鈴木恵 訳/早川書房ハヤカワ・ポケット・ミステリ
FOURTH OF JULY CREEK/SMITH /HENDERSON /2014

1980年大統領選の年、
ソーシャルワーカーのピートは、小学校に姿を現したみすぼらし格好の少年ベンジャミンと出会う。
彼は終末論者の父親ジェレマイアと山の中で暮らしていたが、ジェレマイアは頑なに援助を拒む。
一方、ピート自身も父親や弟とは疎遠、
若くして結婚したベスとは別居中だった。
ミステリー要素はジェレマイアの妻や他の子供たち、
家出したピートの娘レイチェルの行方になるが、
ここで描かれるのは、何とか皆を救いたいのにそれが上手くいかないというピートの苦悩だ。
他人の為に奔走する一方、滅茶苦茶になる私生活と増える酒量。
日本でも虐待事件が明るみになると、
児童相談所の対応は適切だったのかと批判の矛先が支援する側に向かうことも少なくないが、
実際問題、他人の家庭に踏み込んで、助けが必要なことを納得させ、支援を受け入れてもらうことというのは大変な作業だと思う。
ソーシャルワーカーにだって家族もいれば家庭もある。
しかし、様々な大人の事情に優先するのはやっぱり子供たちの安全だ。
ベン、セシル、レイチェル、危うさの一方で彼らの逞しさが一筋の光だ。
ミステリーとしてはとても地味だが、
等身大の登場人物の心情を描き切った本作、
デビュー作としては上々の出来だと思う。
モンタナの厳しくも美しい自然描写も印象に残る。

われらの独立を記念し (ハヤカワ・ミステリ)

われらの独立を記念し (ハヤカワ・ミステリ)

われらの独立を記念し (ハヤカワ・ミステリ)

われらの独立を記念し (ハヤカワ・ミステリ)


■半分のぼった黄色い太陽/チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ
くぼたのぞみ 訳/河出書房新社
HALF OF YELLOW MOON / Chimamanda Ngozi ADICHIE / 2006

物語は、「60年代前半」「60年代後半」の二部に分かれているが、これはそのまま「戦前」と「開戦後」という意味でもある。
まず「戦前」の暮らしの様子で登場人物を読者に身近に感じさせる構成は、「開戦後」厳しくなっていく暮らしを何とか生き抜こうとする彼らへの共感に繋がっていく。
家族、男と女、母親と息子、肌の色や言葉が違っても、人の暮らしや想いに大きな違いはない。
戦争が人の暮らしや心の何を変え、何を変えないのか、これもまた国も時代も超えたものである。
メイン・キャラクターのオランナの双子の姉妹カイナナの言葉が胸にささる。

「私たちはみんなこの戦争のただなかにいるの。
別人になるかどうか決めるのは、私たち自身よ」

ナイジェリアの内戦、ビアフラ戦争については何も知らなかったが、この戦争の背後にちらつくのは、
英米ソ連といった大国の影だ。
独立を果たしても旧宗主国や大国の思惑に振り回され、内戦の道を進むアフリカの国々にも思いを寄せたいと思う。

半分のぼった黄色い太陽

半分のぼった黄色い太陽

👇映画化もされているようです。観たい!


オープン・シティ/テジュ・コール
小磯洋光 訳/新潮社(新潮クレスト・ブックス)
OPEN CITY/Teju Cole/2011

混血として生まれ幼少期を過ごした土地を離れ何処にもコミットしていないという寄る辺なさと孤独を抱えるジュリアス。
ニューヨークを歩きブリュッセルを彷徨い、
身体はそこにあっても心は距離も時間も超え、
自らの過去、その土地の歴史に思いを馳せる。
冬のNYの痛いくらいの空気の冷たささえ感じられる描写力は素晴らしいし、知的だが、
何処かスノッブで鼻持ちならない。
祖母を思いブリュッセルに向かうも然程必死に探すでもなく、母との間の距離についても多くを語らない。
ジュリアスに対するこうした違和感の正体は、
終盤、同級生の姉であるモジによって暴露される。
国やその土地に眠る暴力の歴史について語りながら、
自分が加害者となった暴力については無自覚なジュリアス。
テジュ・コールはジュリアスについてモジに「精神科医の知ったかぶり屋」と言わせている。
テジュ・コールは読者がジュリアスに抱く違和感など織り込み済みなのだ。人は歴史の傍観者としてならいくらでも善の側に立てるが、
当事者となるとそうはいかない。

オープン・シティ (新潮クレスト・ブックス)

オープン・シティ (新潮クレスト・ブックス)

オープン・シティ (新潮クレスト・ブックス)

オープン・シティ (新潮クレスト・ブックス)

ツイン・ピークス The Return Episode 10 〈第10話〉

EPISODE 10


ツイン・ピークス:ミリアム・サリヴァンのトレーラーハウス

ミリアム・サリヴァンにひき逃げの現場を目撃されたリチャード・ホーンが、ミリアムのトレーラーハウスに車でやって来る。

「ミリアム!」
「やめて!来ないで!リチャード」
「なあ、ちょっと話したいだけだ!」
「あんたがあの男の子ひき逃げしたこと、
通報したからね!」
「もう通報したのか?」
「そーよ!やめて!こっち来ないで!」
「他のやつには?」
「言ってない
でもあんたはいまだに逮捕されてない
だから手紙も書いたの」
「手紙って何だよ?」
「保安官への手紙、
トルーマン保安官にもう送ったからね!
知ってること全部書いた
もしあたしに何かあったら犯人はあんただってこともね、わかった?」
「それ、今日出したのか?」
「ええ、そうよ!」

リチャードは無理矢理トレーラーハウスに押し入り、
ミリアムに襲いかかる。
何かが落ちたり、ぶつかったりする物音。
やがて、何かが倒れるような大きな音。

リチャードはトレーラーハウスから出てくると何処かへ電話をかける。
電話の相手は保安官事務所のチャドだ。

「ミリアムのクソが保安官宛に手紙を出した
渡る前に止めてくれ」
「うわあ、それはちょっと難しいかもな」
「ガタガタ言ってんじゃねえよ!
絶対に保安官に渡すな!
渡したらお前ぶっ殺すからな!」
「そう無理言うなって、やってみる」
「とにかくやれ!ボンクラ!
俺は逃げる」

車で走り去るリチャード。

トレーラーハウスの中のミリアム。
呼吸はしているが、床には血だまりが広がっている。

※リチャード・ホーンとチャドは繋がっていた!
保安官事務所から麻薬捜査についての情報が漏れている様子もあったし、リチャードとチャドはドラッグビジネスでも繋がっていそうだ。
それにしてもリチャードは、
今シリーズ最悪のクソ野郎だな。
第1回で、
巨人がクーパーに言ったリチャードとリンダ

“リチャード”はこのリチャード・ホーンのことか?
リンダというキャラクターはまだ登場していない。
詳しくはこちら👉ツイン・ピークス The Return Episode 1 《第1話》 - 極私的映画案内


ツイン・ピークス:ファット・トラウト・トレーラーパーク

管理事務所の前で、カール・ロッドがギターを弾きながらRed River Valley を歌っている。

あるトレーラーハウスの窓を突き破ってマグカップが地面に落ちる。
中からは怒鳴り声が。

「ひどいもんだな…」

首を横に振りながらカールがつぶやく。

そのトレーラーハウスの住人は、
RRダイナーのシェリーの娘ベッキーと夫のスティーヴン・バーネットだった。

「給料上げろって頼めとか、俺言ってねえよな?
お前、いくら稼いでんだ?
ギリギリ最低賃金だろ?
ここの家賃も払えねえ
まともに掃除しろとも俺は言ってねえ
手ェ、出してんじゃねえよ
俺に逆らうんじゃねえ!
よく聞け!よおく、聞くんだ
純粋ぶった顔で俺を見るな!
いいか、お前のやってることは全部わかってんだからな
お前は…ああクソッ!」

怯えるベッキー

※なるほど、ベッキーとスティーヴンはこのトレーラーパークの住人だったのか。
しかし、元夫レオ・ジョンソンに暴力を受けていたベッキーの母シェリー。
美人の遺伝子は受け継いでも、ダメ男と一緒になってしまうところまで似なくてもいいのに。

意外と若々しいハリー・ディーン・スタントンの歌声はこちらから👉TWIN PEAKS 2017 clip - Red River Valley - YouTube


■ラスベガス:ミッチャム兄弟の邸宅

シルバー・ムスタング・カジノのオーナー、
ミッチャム兄弟の邸宅のリビング。
ロドニーが書類をチェック中。
(キャンディ、マンディ、サンディの三人組の)キャンディがハエをナプキンではたき落とそうとしている。
ハエをはたき落とそうとしてナプキンまで投げてしまったキャンディは、テーブルの上のリモコンを手に取る。

ハエがロドニーの左頬にとまると、
キャンディはリモコンでロドニーを強打。
狼狽えるキャンディの悲鳴にブラッドリーがリビングに入って来る。
ロドニーは出血しているが、大した怪我ではない。

※ミッチャム兄弟の片割れ(どちらが兄でどちらが弟か不明)のブラッドリー・ミッチャムを演じているのは、『ブルース・ブラザース』で有名な故ジョン・べルーシの弟ジェームズ・べルーシ
キャンディ、マンディ、サンディの三人、
予想通りの再登場。
しかし、この三人、いつもこの衣装のまま?


■ラスベガス:ベン先生のクリニック

ジェイニーEに連れられクリニックを訪れたクーパーがベン先生の診察を受けている。

ダギーと違い引き締まったクーパーの身体。
ベン先生もダギー(クーパー)の身体の変化に驚いている。
3日間行方不明になった後の夫の行動がおかしいと訴えるジェイニーE。
心音も肺の音も血圧も問題なし。
クーパーの身体を惚れ惚れと見つめるジェイニーE。

※クーパーを演じるカイル・マクラクラン
1960年生まれの58歳!
素晴らしい身体を保っていて、
このシーンの説得力もバッチリ!


■ラスベガス:ミッチャム兄弟の邸宅

すっかり日は暮れたが、ロドニーを殴ってしまったキャンディはまだ落ち込んでいる。
大丈夫だと慰めるロドニー。

テレビではローカルニュースが始まる。
クーパーを襲ったアイク“ザ・スパイク”が逮捕されたというニュース。

「アイクもヤキがまわったな」
「ヤツの殺しは取りやめだ」
「その分の金が浮いたよ、やったな!」

ミッチャム兄弟はテレビに映ったクーパーを見て、
クーパー(ダグラス・ジョーンズ)が自分たちのカジノでジャックポットを連発した“ミスター・ジャックポット”だと気付く。

「これでわかったな、
あのミスター・ジョーンズは本当にジョーンズさんだった」
「おかしな世の中だ」

キャンディはまだ泣いている。

「あんなことしちゃったら、
もう愛してくれないわよね

※ザ・スパイクの命を狙っていたらしいミッチャム兄弟。


■ラスベガス:ダギー・ジョーンズの自宅

チョコレート・ケーキを食べているクーパー。
ジェイニーEは夫を熱いまなざしで見つめている。
昼間目にしたクーパーの引き締まった身体に欲望をかきたてられたらしい。

「ダギー、あたしって魅力的?
ねえ、どう?」

妻よりもケーキに夢中のクーパー。

「あなたは魅力的よ、ダギー…うふふ」

ベッドでダギーの上になっているジェイニーE。
高まっていくジェイニーEは眠っていたサニー・ジムが起きるほどの大きな声を出す。
下になっていたクーパーはまるで初体験をした少年のような表情。

「ダギー、愛してる」
「愛してる」


ツイン・ピークス:ジャコビ先生のトレーラーハウス

相変わらず、インターネット中継で独自の陰謀説を唱えているジャコビ先生。

熱心に中継を見ているのはネイディーン・ハーレイ。

「なんて素晴らしいの」


※ネイディーンは前シーズン執着していた音の出ないカーテンレールの開発に成功した模様。
店を出している。
その名もRUN SILENT, RUN DRAPES
ショーウィンドウには、ジャコビ先生の金のシャベルがディスプレイされている。
買っちゃったのか、ネイディーン。


■ラスベガス:ダギー・ジョーンズの自宅

昨夜の余韻冷めやらぬジェイニーE。
ダギー(クーパー)にすっかり惚れ直したのか、
朝から熱いキス。

「ずっと昨夜のこと、考えてる
ホントに素敵だった…
どうしても、伝えたくて」


ツイン・ピークス:山の中

ジェリー・ホーンの携帯電話は圏外。

「うーっ、騙されないからな!
前にも来たことあるんだ!」

※前エピソードで右足に異常が発生したジェリー・ホーン。
まさか、あれからずっと動けずにいるのか?


ツイン・ピークス:保安官事務所

リチャード・ホーンからミリアムが保安官に送った手紙を取り戻すよう命じられたチャドは郵便の配達を待っている。

チャドは怪しむルーシーを天気の話で何とか言いくるめ、先に郵便物を受け取り、保安官宛の手紙を抜き取る。
その様子を窓から見ているルーシー。

※ルーシーからはチャドが封筒をこっそりシャツの中にしまったのが見えただろうか?


ツイン・ピークス:シルヴィア・ホーンの自宅

車を運転中のリチャードの携帯に、
チャドから手紙を取り返したと連絡が入る。

一方、椅子に拘束されているジョニー・ホーンは不気味なぬいぐるみと向き合っている。

「ハロー、ジョニー!ご機嫌いかが?」

何度も同じことを繰り返すぬいぐるみ。

リチャードの車がシルヴィアの家の前で止まる。

「車から降りずに帰りなさい、リチャード」
「顔、見にきたんだよ!」
「ダメ、来ないで!保安官を呼ぶわよ」
「やめてよ、ばあちゃん」
「ダメ!来ないで!」
「金、貸し手くんねえかな?」
「いやよ」
「2、3ドルでいいからさ」
「ダメよ、おじい様に頼みなさい
きっともうくれないでしょうけどね」
「金はあるけど、もうちょっといるんだ
俺に町から消えて欲しいんだろ?
なら出せよ、そうすればすぐに出てく」
「これ以上近付かないで、リチャード」
「金出せよ!ばあちゃん!」
「いやよ!」

ジョニーは母親を助けようともがくが、
椅子ごと倒れてしまう。
リチャードはジョニーに駆け寄ろうとするシルヴィアの首を絞める。

「なあ!絞め殺してやろうか?え、おいっ!
いいか、クソババア、
あいつのケツにねじ込んでやろうか?
もういいから、さっさと金、出せよ!!!」

リチャードはシルヴィアの首を絞め続け、
金庫の暗証番号を聞き出す。

「こんな簡単なことをややこしくすんじゃねえよ、
クソババア!!」

酷い捨て台詞を残し、
貴金属やバッグの中の金まで持ち去るリチャード。

※そうじゃないかとは思っていたが、
リチャードはベンジャミン・ホーンとシルヴィア・ホーンの孫だということが判明。
ということは、オードリーの息子ということか?
(それともジョニーの息子?)
いずれにせよ、リチャードがシルヴィアやベンに金の無心をするのはこれが初めてではなく、
家に出入りすることも禁じられている様子。
まったく、とんでもねえ野郎だ。
この修羅場とも言えるシーンのBGMがこの曲👉Mantovani And His Orchestra - Charmaine (1958) - YouTube
気味の悪いぬいぐるみもデヴィッド・リンチ印。


■ラスベガス:ダンカン・トッドのオフィス

ロジャーがザ・スパイクが捕まったとダンカンに報告。
オフィスには、既に客が来ていた。
待たされていたのは、
なんとラッキー7保険のアンソニー・シンクレア。

ダンカンに呼ばれたアンソニーは椅子に座ろうとする。

「座るんじゃない!
君は創造性豊かな人物だ
それを活かしてこれから頼むことを成し遂げて欲しい」
「なんでしょうか?」
「私の敵であるミッチャム兄弟を覚えているか?」

頷くアンソニー

「今から訪ねてくれ
彼らの3000万ドルの損失に対する保険の請求は却下する
ダグラス・ジョーンズのせいだと伝えろ
ジョーンズがあの兄弟への個人的な恨みでやったと吹き込み、後は黙って、見ていれば、ミッチャムたちがジョーンズを片付けてくれる」
「でも、もし…」
「何も言うな、失敗した場合は君の手でジョーンズを消してもらう」

※ミッチャム兄弟の敵、
ということはダンカン・トッドもカジノ経営者か?
ダギー殺害を命じたザ・スパイクが逮捕され、
ダンカンはアンソニーに保険請求を却下したのはダギー(クーパー)だとミッチャム兄弟に吹き込み、
彼らににダギーを殺させようとしている。
放火が疑われたが、保険金が支払われることになったと会議でアンソニーが報告していた案件がこの件かもしれない。
保険請求に不正があると見抜いたのは本当にクーパー(ダギー)だが、この不正にはアンソニーも関与していたのだろう。
しかし、一方的に命令されているアンソニーはダンカン・トッドに何か弱味を握られているに違いない。
借金か?


サウスダコタ州バックホー

FBI一行が宿泊中のホテル。
ホテルのバーでは、アルバートバックホーン警察のコンスタンスが何やらとってもいい雰囲気。

その様子を隠れて見守るゴードンとタミー。

※陰惨で謎多き事件の最中にもロマンスが進行中の模様。
同じ鑑識のプロとして意気投合か?


■ラスベガス:シルバー・ムスタング・カジノ

カジノのモニタールーム。
モニターにはラッキー7保険のアンソニー・シンクレアの姿が映っている。

「何しに来た?」
「誰が?」
「保険会社の間抜けがこんな夜更けに」
「ああ、あいつか
まったくこれっぽっちも信用出来ない男だ」

ミッチャム兄弟がキャンディを迎えにやる。
アンソニーを迎えに行ったキャンディは何やら話し込んでいて、一向に戻ってこない。
イライラを募らせるミッチャム兄弟。

「なんだ?ありゃあ」
「身の上話をしろとは言ってない!」
「何時間喋ってる?」

ロドニーはピットボスのウォリックにキャンディにすぐに戻って来させるよう命令する。

天気やカジノの中の温度について話していたというキャンディに呆れるミッチャム兄弟。

「それで、保険会社さんよ、今日は何だ?」
「ミッチャムさん、ミッチャムさん
お訪ねしたのは、お二人に是非お知らせしたいことがあったからです」
「ほう」
「何だ?」
「数ヶ月前に全焼したおたくの新しいホテル、
捜査の結果、放火と断定されたあれです
保険契約の担当は私でしたが、
請求の手続きはダグラス・ジョーンズという者が担当したんです」
「ダグラス・ジョーンズ?」
「内密にお耳に入れておいた方がいいと思って、
私の独断でお知らせに
実はそのジョーンズが職務上の権限を使って阻止してるんです
あなた方が受け取るべき火災で被った損害に対する保険金の手続きを
どうやら彼、何か個人的な恨みがあるみたいなんですよね
あなた方に今も絶対に保険金は支給しないと言い張って
どんな手を使ってでも食い止めようと必死になってる」
「ほう」
「本当か?」
「本当です、
お二人の敵は、ダグラス・ジョーンズです
今日はそれを伝えに来た」
「キャンディ、お送りしろ」

反応の鈍いキャンディを怒鳴るミッチャム兄弟。
去り際にミッチャム兄弟の敵はダギーだと念押しするアンソニー

※ミッチャム兄弟は自らのホテルに放火して保険金をせしめようと画策、アンソニーはその計画に一枚噛んでいたということか?
ロドニーを殴ってしまって狼狽えていたキャンディだが、そのショックも何処へやら、すっかり天然ぶりを発揮?


■ラスベガス:ミッチャム兄弟の邸宅

ダギーの件について相談するミッチャム兄弟。

「よくわかった、マーロン・ブランドの気持ちが
明日そのダグラス・ジョーンズに電話してアポを取れ」
「了解だ、それがいい」
「あの男は、俺たちから3000と44万7000ドルを
奪い取ったってことだ」
「ふざけやがって、一度ならず二度までも
思い知らせてやる、後悔するんだな
殺してやる!」

※まんまとダンカン・トッドの策略に嵌ってしまったミッチャム兄弟。


サウスダコタ州バックホー

ホテルの部屋で何やらメモを書いているゴードン・コール。
書いているのはメモではなく、絵のようだ。

そこへ、ドアをノックする音。
ドアを開けたゴードンはそこに泣いているローラ・パーマーの姿を見る。
しかし、ドアをノックしたのはアルバートだった。

「ダイアンが今朝11時13分にこのメールを受け取ったと
文面は、“ディナーの席での会話は弾む”
丁度クーパーが逃げた直後で、フィラデルフィア基地局を経由していたことがわかりました
ダイアンの恋人の一人かもと思いましたが、
タミーが追跡したところメキシコのサーバーからでした」
「メキシコ?返事はしたのか?」
「厳重に暗号化して返信しています
ヘイスティングス逮捕、彼をあの場所に連れて行く”
彼氏宛とは思えません」
「ハグされた時に感じたが、これで確信した」
「どうします?」
「泳がせるとしよう」

そこへ、タミーも合流。

「ニューヨークのペントハウスの事件、覚えてます?」
「ああ」
「こんなものが見つかったそうです」

タミーが差し出したペントハウスを写した写真には、
ガラスのボックスと一緒にバッド・クーパーが写っていた。

「なんと!これはエラいことだ
これは本当にエラいことだぞ」

※ニューヨークのペントハウスにバッド・クーパーがいたのはいつか?
そして、FBIの間でもダイアンへの疑惑が深まる。
ちなみにゴードンが書いていたのはこんな絵。
一体、何のことやらさっぱり。


ツイン・ピークス:グレート・ノーザン・ホテル

ベンジャミン・ホーンのオフィス。
ベンはシルヴィアと電話で話している。

「何、何をしたって?」
「押し入って、襲いかかってきて
ありったけのお金を奪っていったの!」
「ああ、なんてことを
ジョニーは無事なのか?」
「やっぱりあたしのことは聞かないのね
なんでジョニーなの?襲われたのは私よ!」
「シルヴィア、
もちろん君のことだって心配しているよ
いくら取られたんだ?」
「全部よ!金庫の中全部!
あなたに弁償してもらいますからね!」
「ダメだ!もうこれ以上君に金を送ることは出来んよ
シルヴィア」
「いいえ、送ってもらう!」
「シルヴィア!」
「必ず送ってもらうわよ!
今から弁護士に電話しますから!」

一方的に電話を切られ、頭を抱えるベン・ホーンは、
ビバリーを食事に誘う。

※ベンジャミン・ホーンとシルヴィアは離婚はしていないかもしれないが、
少なくとも現在は一緒に住んでいないらしい。


ツイン・ピークス:丸太おばさんの自宅

丸太おばさんはホークと電話中。

「ホーク、電気がハミングしてる
山の中や川から聞こえてくる
そして海と星の間で舞い踊り
月の周りで輝くの
でも近頃は輝きも消えかけ
残った闇の中には何があるのか
トルーマン兄弟はどちらも真の男たち
あなたの兄弟よ
その他にも良き者たちがあなたのそばにいる
もうすぐ円が完成する
時と空間の夢に目を凝らし耳を傾けて
まるで川にように今こそ溢れだす
それであり、それでない
ホーク、ローラのことよ」

丸太おばさんの言葉を黙って聞いているホーク。


ツイン・ピークス:ロードハウス

今夜の出演者は、Rebekah Del Rio

演奏されている曲『No Stars 』はこちら👉YouTube

※Rebekah Del Rioデヴィッド・リンチの『マルホランド・ドライブ』にも出演。
この曲『No Stars』にはデヴィッド・リンチも参加している。
ロードハウスのライブシーンは今シーズンの半ばお約束になっているが、今エピソードはほぼフル・コーラスの7分という長いシーンになっている。
マルホランド・ドライブ』のRebekah Del Rioの出演シーンはこちら
👉Mulholland Drive - LLorando (Crying) - English Subtitles - YouTube

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全18話の折り返し地点を過ぎ、
今エピソードは、新たなキャラクターの登場も、
前シーズンのキャラクターの再登場もなし。
ここへきて、バラバラだったピースが少しずつはまってきた印象。
これは考え過ぎかもしれないけど、
ツイン・ピークス、ラスベガス、サウスダコタと同時進行でストーリーが進んでいるようでいて、
実はそれぞれの場所での時間経過にはズレがあるんじゃないか?
やっぱり、考え過ぎかな?

最近未見だったリンチ作品の『イレイザーヘッド』と『エレファント・マン』を観たのだが、
いやあ、デヴィッド・リンチ、ぶれない人だなと。
特に、何から何まで自分でコントロールしたというデビュー作『イレイザーヘッド』には、
ツイン・ピークス』に繋がる要素満載です。
未見の方は是非!

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⚫︎ツイン・ピークス The Return (全18回)
TWIN PEAKS THE RETURN
監督:デヴィッド・リンチ
脚本:デヴィッド・リンチ,マーク・フロスト
音楽:アンジェロ・バダラメンディ


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ツイン・ピークス The Return Episode 9 〈第9話〉

EPISODE 9


サウスダコタ州?:ファーム近く

Woodsman に命を助けられたバッド・クーパーは、
レイに立ち寄ると言っていたファームの近くまでたどり着く。
赤いバンダナの印。


FBIプライベートジェットの機内

サウスダコタの連邦刑務所から
フィラデルフィアへの帰途、
ゴードン・コールに国防総省のデイヴィス大佐から電話が入る。
ガーランド・ブリッグス少佐の首なし遺体の件。
プライベートジェットは急遽、
バックホーン警察署へ向かうことに。

※ノックス大尉からバックホーンの遺体がガーランド・ブリッグス少佐のものだと知らされたデイヴィス大佐が連絡先したのはゴードン・コールだった。


サウスダコタ州?:ファーム

ファームでバッド・クーパーを待っていたのは、
シャンタルとその夫ゲイリー“ハッチ”ハッチェンス

「ちょっと相棒、昨夜来るはずだったでしょう?
血、出てますよ」
「ここの所有者は誰だ?」
「農民です」
「今、どこにいる?」
「裏で眠ってます
欲しいものは?」
「携帯をニ、三台とこいつの弾」
「なんすか?これ?
俺が凄いヤツ、用意しますよ
おい、シャンタル、ボスがお見えだ
救急箱持ってこい!」
「怪我してるの?
やだ!一晩中待ってたんだよ
どこ怪我したの?」

バッド・クーパーがシャツをめくって見せると、
腹部に銃創。
しかし、出血は止まっている。

※シャンタルの夫ゲイリー“ハッチ”ハッチェンス役は、
ティム・ロス
シャンタル役のジェニファー・ジェイソン・リーとはクエンティン・タランティーノ監督作『ヘイトフル・エイト』に続いての共演。
ティム・ロスの吹替がちょっと…(以下自粛


FBIプライベートジェット機

座席で眠っているダイアンをゴードンが起こす。

「このままフィラデルフィアに真っ直ぐ引き返す代わりに、すまんがちょっと寄り道しても構わんか?
サウスダコタバックホーンに行く
重大事なんだ」
「ああ、クソゴードン、早く家に帰りたいの」
「極めて大事なことだし、君にとっても興味深いはずだ
クーパー捜査官が知っていたある男、
彼に関わる古い事件だ」
青いバラ事件?」
「そうだ」

酒を要求するダイアン。

今にも悪態をつきそうなダイアンの様子を察したアルバート

「だよな?わかってる!クソアルバートだ」

携帯を使おうとするダイアン。
しかし、携帯は通信不能

その時、ゴードンに連邦刑務所のマーフィー所長から
バッド・クーパー逃走の一報が入る。

「クーパーがパーっと逃げた!」


サウスダコタ州?:ファーム

建物の裏ではファームの持ち主である農民夫婦が眠っている(死んでいる?)。

マーフィー所長に用意してもらった携帯に
メッセージを打ち込むバッド・クーパー。

around the dinner table,
the conversation is lively.
ディナーの席での会話は弾む

メッセージを送ると、今度は電話をかける。
電話の相手はラスベガスのダンカン・トッド。

「もうやったか?」
「まだです」
「次かけるまでに終わらせろ」

電話を切られたダンカン・トッドは
ロジャーを呼ぶ。

一方、ハッチが用意したものに
満足気なバッド・クーパー。

「二日以内に刑務所の所長を殺せ」
「所長?いいっすよ
俺が殺る前に、シャンタルにやらせますか?」
「骨抜きするよ」
「好きにしろ
終わったらベガスでダブル・ヘッダーだ
「オーケー、ダブりましょ」
「まず、所長を殺れ、その後命令する
しっかり、覚えろ、
マーフィー所長、ヤンクトン連邦刑務所だ
自宅でも職場でもいい、とにかく殺せ」
「了解、なあ、シャンタル
熱いの、ボスにかましてやれ」

ハッチにそう命じられると、
シャンタルはバッド・クーパーに熱いキス。

「もっとしたーい」
「次にとっておこう」
「絶対だからね」
「壊しとけ、ここも早く出ろ」

見送ったハッチはバッド・クーパーが捨てた携帯をショットガンで撃つ。

※ダンカン・トッドにダギー殺害を命令したのはバッド・クーパーだった。
ダンカンとロジャーが“あの男”と言っていたのはバッド・クーパーだったということになる。
それにしても、バッド・クーパー、ハッチ、シャンタルの関係が謎。
“ラスベガスでダブルヘッダー”とは?


■ラスベガス:ラスベガス警察署

待合室で待たされているクーパーとジェイニーE。
中では、ラッキー7保険のブッシュネル・マリンズ社長が三人のフスコ刑事に事情を聞かれている。

「何か問題を起こしたことは?」
「いいえ、ダギーは優秀な社員ですし、
実に善良な市民です」
「だから誰かに命を狙われるなど考えられない?」
「特に思い浮かびません
もちろん、保険という商売柄、人から逆恨みされることがないとは言えませんな」
「この手の事件の動機は大抵、金です
ストレートな人間の欲求だ
ジョーンズ氏の経歴は?勤めて何年です?」
「12年になります
優秀ですよ、じっくり堅実で」
「少々、じっくり過ぎますな」

“スマイリー”フスコ刑事が妙な声で笑う。

「ダギーは交通事故を経験してるんです
その後うちへ来たんですが、
まあ、時々いわゆる後遺症が出るらしくて、
詳細は奥さんに聞かれた方がいい」
「ではご協力どうも、ブッシュネルさん」
「捜査していただき感謝してます、
しかし、実に奇妙ですな
最初は車が爆発し、次は本人が殺されかけた?」
「何か分かり次第ご連絡します」

まだ何か言いたげなブッシュネル社長。
元ボクサーの血が騒ぐのか、拳を握りしめる。
待合室に戻った社長はクーパーとジェイニーEに声をかける。

「ダギー、今日は社に戻らず家に帰っていい
では、明日から君と私と協力し答えを出そう」
「答え…」

立ち去るブッシュネル社長。

室内の三人のフスコ刑事。

「経歴なんだが、何もなかった、真っ白なんだよ
ダグラス・ジョーンズには、1997年以前の過去がない」
「そんなバカな」
「免許証はないし、パスポートも社会保障番号もない
学歴、納税記録、出生証明書もだ」
「びっくりだな…証人保護か?」
「そうかもな」
「司法省のあいつに聞けるか?」
「やってみる、
テールランプは直したのか?」
「239ドルもかけてな、
たかがテールランプだぞ!」
「キレイになったろ」

何が可笑しいのかまた妙な笑い方のスマイリーが笑う。

「ペンチ持ったあのオーストラリア人!」

釣られて他の二人も笑う。
大して面白くなかったことに気づいたのか、
真顔になる他の二人。

「もう一度呼ぶか?」
「犬と話すようなもんだろ?」
「女房は吠えっぱなしだしな」
「いい手がある」

そう言うとフスコ刑事はコーヒーのお代わりをクーパーに持って行き、マグカップを回収。
クーパーの指紋とDNAを確保する。

そこへクーパーを襲った犯人の情報が。
銃に皮膚ごと残っていた掌紋からアイク“ザ・スパイク”の身元が判明、居場所のモーテルも分かったのだ。

待合室のクーパーの視線は星条旗に吸い寄せられている。
頭の中で「AMERICA THE BEAUTIFUL 」も聞こえてくるが、クーパーの視線は部屋から出て来た女性の赤いハイヒールへ、そして壁のコンセントへと移る。

駐車場では、アイク“ザ・スパイク”の潜伏先のモーテルへ向かう三人のフスコ刑事が直したテールランプを確認している。

※1997年以前のダギーの記録は存在しない。
1997年に一体何があったのか?

ザ・スパイクの銃に残っていた皮膚片はクーパーに押さえられていた手から剥がれたものだった。
進化した腕は「引き千切れ!」と叫んでいたが。


■ラスベガス:アイク“ザ・スパイク”潜伏中のモーテル

どこかに電話中のアイク“ザ・スパイク”。

JTに伝言だ、
携帯にかけたが繋がらず、こっちにした
ここからが伝言だ
惜しくも失敗、怪我したんで休暇を取る」

電話を切るとグラスのウイスキーを飲み干す。

モーテルの駐車場には警察関係者が集結中。
三人のフスコ刑事も到着。
ザ・スパイクの逮捕に向けて着々と準備が進んでいる。

荷物をまとめ、部屋を出るザ・スパイク。
しかし、廊下の先には銃を構えた警官たち。
振り返ると、三人のフスコ刑事。
包囲されて万事休すのザ・スパイク。

※アイク“ザ・スパイク”はダンカン・トッドの依頼でダギー(クーパー)の命を狙ったはずだが、ザ・スパイクが伝言を残したのはJTという人物。
JTとは何者か?


ツイン・ピークス:保安官事務所

受け付けのルーシーと奥のデスクのアンディ。
何をやっているのかと思えば、二人とも同じショッピング・サイトで椅子を物色中。
ルーシーはベージュ、アンディは赤がいいと意見が分かれている。
しかし、予想通り、結局はアンディが折れる。
ところが、ルーシーはベージュではなく赤の椅子を注文する。
してやったりといった表情のルーシー。
面倒くさいカップル。

※ちなみにルーシーが注文した椅子は
$229.99が$179.99にディスカウントになっているオットマン付きの肘掛け椅子。
この二人は胴回りに肉じゅばんでも着ているのか、
極端にぽっこりした体型になっている。


ツイン・ピークス:ベンジャミン・ホーンの自宅

部屋から出てしまった息子を探すベンジャミン・ホーンの妻シルヴィア・ホーン
家の中を駆け回るジョニー・ホーン
自ら壁に激突し、頭部から出血、気絶する。

※ベンジャミン・ホーンの妻シルヴィア・ホーンと知的障害を抱える息子ジョニー・ホーンが再登場。
ジョニー・ホーンを演じる役者は三人目とのこと。


ツイン・ピークス:ブリッグス邸

ボビーがトルーマン保安官とホークと共に母親のベティを訪ねてくる。

「ボビー、どうしたの?
コーヒーでもどう?」
「いや、やめとく
お客さんが一緒なんだ
母さんにいくつか聞きたいことがあって」
「分かった」

「お聞きしたいのはクーパー捜査官のことなんです
彼は少佐が…」

トルーマン保安官がそこまで言うと、
ベティは分かってますというふうに話を遮る。

「亡くなる前日にここへ来た」
「やはり」
「いいわ、よく聞いて
あの日、クーパー捜査官が帰るとすぐガーランドは私を呼び、こう言ったの
“いつかわしらのボビーとホークにトルーマン保安官が”、聞いた時はハリーの方だと思ってたけど、“三人がクーパー捜査官のことを私に尋ねに来るだろう”って
言いながらあの人、私の肩をぎゅっと掴んだわ
どういうことか聞こうとしたけど、
それ以上話してくれなくて、ただひとつだけ、
三人が来たら渡してほしいものがあるって
そう言ったわ
そして、やって来た」

それは、肘掛け椅子の背の部分に隠されていた。
タバコよりも少し長いくらいの黒いスティック。

「お父さんからこの話を聞いた時、
あなたは今のあなたとは程遠かったわ
でもお父さんは大丈夫だって何故か確信してた
今のあなたが見えていたのね
最後まであなたを信じてた」

父への思いで胸がいっぱいになるボビーは思わず涙ぐむ。

※ガーランド・ブリッグス少佐の妻でボビーの母親ベティも再登場。


サウスダコタ州バックホーン警察署

ノックス大尉、マックレー刑事と合流するゴードン・コールの一行。

ダイアンは遺体を見るとこと拒否する。
ひとり待合室に残ったダイアンの携帯にメッセージが届いている。

AROUND THE DINNER TABLE,
THE CONVERSATION IS LIVELY.
ディナーの席での会話は弾む

マックレー刑事から事件概要について説明。

「ウィリアム・ヘイスティングスは地元の図書館司書ルース・ダベンポートと不倫関係にあり、そのダベンポートの頭がブリッグス少佐の胴体と共に発見されました
そこで我々がヘイスティングスを拘留すると、
今度は自宅で妻が殺害され、夫婦の弁護士ジョージ・バウサーという男を第一容疑者として拘留しました
するとその翌日、ヘイスティングスの秘書が車の爆発で死亡して…」
「シーズン2はどうなるのか?」

アルバートの分かりにくい皮肉。
マックレー刑事に謝罪するゴードン。

ブリッグス少佐の遺体を前にする一行。
マックレー刑事の説明が続く。

「ヘイスティングは司書であるルースに協力してもらい研究活動やブログを開設していたことが分かっていますが、そのテーマが少々変わっていて、異次元空間について」

「高校の校長だったんだよな?」
「小6の時はビー玉チャンピオンでしたよ」
「では、いつ負け犬になった?」
「そりゃ、タマを失くした時ですよ」

コンスタンスの上手い返しに満足気なアルバートが資料を読みあげる。

「約一週間前、ヘイスティングはブログをこんな文言と共に閉鎖している
“今日我々はついにいわゆるゾーンに入り、
そこで少佐に会った”
これは四十代の男の身体だ」

ゴードンとアルバートは事実を整理する。

「ブリッグス少佐なら72才です
ご存知の通り、ツイン・ピークス郊外にある例の政府施設で少佐が亡くなったのは25年前なんです
あの死体とほぼ同じ年だ」
「こう考えてみよう
25年前、クーパーはブリッグスと知り合い懇意にしていた
そして今この界隈に出没している」
「しかも、刑務所から逃げ出した状態で」
「そうだ」

コンスタンスは少佐の胃から出てきたダギーの結婚指輪を皆に見せる。

※バッド・クーパーがメッセージを送ったのはダイアンだった!
しかし、ダイアンは連邦刑務所でバッド・クーパーが別人だとゴードンに告げている。
バッド・クーパーとダイアンは通じていたのか?
抽象的なメッセージの意味がわかったのか?

ビル・ヘイスティングスが開設したというブログThe search for the zoneは実在する。
ブログの開設は1997年。
ダギー・ジョーンズの経歴は1997年以降しか存在しない。
ちなみに、デヴィッド・リンチが『ツイン・ピークス ローラ・パーマー最期の七日間』以来5年ぶりに制作『ロスト・ハイウェイ』は1997年の作品。
The search for the zone のサイトはこちら
👉The Search For The Zone


ツイン・ピークス

ジェリー・ホーンは森の中。
ジェリーの右足は本人の意思で動かなくなっている。

I am not your foot.
私はお前の足じゃない

ジェリーは右足に触ることすら覚束ない。

「どっか行けー!」

意を決したジェリーは右足を掴むが、
ひっくり返ってしまう。

※ジェリー・ホーンの右足に異常発生。


ツイン・ピークス:保安官事務所

会議室ではチャドが、受付ではルーシーがランチ休憩中。
戻ってきた保安官に会議室を追い出されるチャド。

ベティから預かったスティックの開け方が分からない保安官とホーク。
その様子を笑って見ていたボビーは開け方を知っていた。
外に出ないと開けられないと言うボビー。

スティックを地面に叩きつけるボビー。
すると、スティックから音が。
もう一度叩きつけるとスティックから丸められた紙が出て来る。

253 YARDS
EAST
OF
JACK RABBITS
PALACE

BEFORE LEAVE
JACK RABBITS PALECE
PUT SOME SOIL
FROM THAT AREA
IN YOUR POCKET

2:53 10/1 10/2

ジャック・ラビット・パレスから東へ253ヤード進め
ジャック・ラビット・パレス去る前に
その地の土をポケットに入れろ

「ジャック・ラビット・パレスだと?」
「そんな場所聞いたことない」
「やるなあ、オヤジ、まただ」
「何だ?どういう意味だ?」
「ジャック・ラビット・パレスが何処にあるか知ってます
まだ小さい頃、オヤジが連れてってくれました
当時住んでた空軍基地、あの近くでオヤジといろんな話を作った空想の場所なんです
俺がジャック・ラビット・パレスの名付け親」
「少佐にはすべて分かってた、
これがどういうことであれ」
「それがオヤジです」
「じゃあ、二日後そこへ行かんとな
お前が案内しろ
それがオヤジさんの望みだ」

スティックの中にはもう一枚紙があった。
数字とアルファベットの羅列に混じって
COOPER COOPER
の文字。

「クーパーが二人?」

253という数字には聞き覚えがあると思ったら、第2話で進化した腕のメッセージの中に出てきた数字だった。
詳しくはこちら
👉ツイン・ピークス The Return Episode 2 〈第2話〉 - 極私的映画案内
時刻の方の2:53は第3話で登場。
ブラックロッジと現世の合間で漂っていたクーパーに急ぐように言った女の腕時計が表示していた時刻がPM2:53。
バッド・クーパーが運転する車の時計も同じ時刻を指していた。
詳しくはこちら
👉ツイン・ピークス The Return Episode 3 〈第3話〉 - 極私的映画案内


サウスダコタ州バックホーン警察署

署内禁煙につき、外でタバコを吸っているダイアン。
そこへ、ゴードンとタミー合流する。
三人の間に流れる気まずい雰囲気。
特にタミーは居心地が悪そうである。
その視線に耐えられなくなったかのように、
ダイアンにタバコを吸わせてもらうゴードン。

取調室。
うめき声を上げているウィリアム・ヘイスティングスに事情を聞くタミー。
マックレー刑事、ゴードン、アルバート、ダイアンが見守っている。

ヘイスティングスさん、
あなたはホームページでブログを書かれていますよね?
ブログ名は“ゾーンを探して”」
「ええ」
「どんなことについて書いているんですか?」
「いろいろと」
「二週間ほど前にあるものとの遭遇について書かれましたよね?あなたは“別世界と表現されている」
「異次元空間ですか?
ええ、でも事実です
すべて現実なんですよぉ」
「そのテーマに関心を持ったのはいつからなんですか?」
「結構前から、山ほど資料を読んでて」
「でも今回は実際その空間を見つけ、
中に入ったと書いてますよね?」
「そうです」
「更にあなたはこうも書かれています
その中で少佐に会った、と」
「ええ、そうです
ルースは隠された記録を見つけるのがとても得意で、
それに彼女は確信してました
しかるべき時刻にしかるべき場所へ行けば
異次元空間に入ることができ、
しかるべき人物と接触できると
だから行ったんです」
「そしてそこで少佐に会ったんですね?」
「少佐は隠れてました
でも、本人は冬眠だと言ってて
他の連中に見つかってしまうかもしれないから
別の場所へ行きたいんだと言いました
だから数字を入手するよう頼まれたんです
重要な数字を、座標です
そして少佐が言った通りにそれを軍のデータベースで見つけました」
「まだその座標は持ってます?」
「ルースが持ってたんで、というか手に書いてました
忘れないようにって」
「何があったの?」
「先週の木曜に少佐に数字を届けに行って
恐ろしい事が起きたんです
他の連中、奴らがやって来て私の首を掴むと床に押し付けてこう言った!
女房の名前は?女房の名前は?って
フィリスだと答えた
ルースを殺してない!愛してたんだ!
どうか私を信じてくれ!
ああ、全部私のせいだ、
こんなこと起きちゃいけなかったのにぃ」

ウィリアムはタミーに見せられた六人の写真の中から「この人です」とガーランド・ブリッグス少佐を選び出す。

「一体何が起きたのか、話して」
「数字を渡すと少佐は宙に浮かび上がり、
そしてこう言ったんです
クーパー、クーパー
その直後、頭が消えた
まるで誰も見たことがないような
私もあんなのはじめて見た
あんなの、あんなのってどんな資料にも載ってなかった!
あなたには分からない!
実際に見なきゃ無理なんだ!
すごく少佐は、少佐は、あれはとても美しかった!
その時ルースが死んだ!
辛くて悲しくて、私はルースを抱きしめたんです
そして次の瞬間、目が覚めたら、
私は自分の家にいました
家にいたんです!」
「ルースを殺したのは少佐なの?」
「いいえ、あそこには大勢いたんです
私を信じてください!
私はルースを殺していません!
愛していました!
一体自分に何が起きているのか?
どうか、どうか私を助けてください!
お願いです!」

ルースと二人でバハマでダイビングがしたかったと泣き崩れるウィリアム・ヘイスティングス

「男なのか?こいつは」

アルバートのキツい一言。

※ウィリアム・ヘイスティングスがブリッグス少佐と接触していた。
ヘイスティングスが少佐に入手するように頼まれていた座標とは、バッド・クーパーがヘイスティングスの秘書から聞き出すようにレイに命じていたあの座標のことだろう。
バッド・クーパーは少佐と接触したかったのか?
しかし、ヘイスティングスの秘書は車の爆破事故で死亡。
ヘイスティングスはルースが数字を手に書いていたと証言したが、ルースの頭部以外は発見されていない。
ということは、今、座標の数字を知っているのはレイ、ただ一人ということになる。
ヘイスティングスの秘書を殺したのはレイだとしても、
ルースを殺したのは誰なのか?
ヘイスティングスが入った異次元空間とはどんな場所なのか?
そこに大勢いたのは、どんな者たちなのか?
ダイアンは何故携帯に届いたメッセージのことを黙っているのか?


ツイン・ピークス:グレート・ノーザン・ホテル

ベンジャミン・ホーンのオフィス。
ベンとビバリーは相変わらず謎の音の出所を探っている。
どうやら、部屋の隅のフロアランプの辺りで一番音が大きく聞こえる。

「なんだか魂にも入り込むような、そんな響き」
「ああ、まるで修道院の鐘の音色だな
あれとよく似ている
もしくは、うん、別世界の響き」

二人の距離が近づく。

ビバリー、私には出来ない
なぜかはわからないが」
「あなたはいい人よ」

※この音はベンの言う通り、別世界からの音だろう。
この場所が別世界へと繋がっているのか?
それにしても、生まれ変わったかのように紳士なベンジャミン・ホーン。


ツイン・ピークス:ロード・ハウス

ボックス席の若い女二人。
ひとりはブロンド、ひとりはブルネット。
エラとクロエ。

「デブラって戻って来たよね?」
「会うの久しぶり」
「仕事変えた」
「へー、何でよ?」
「クビだよ、クビにされたの!」
「ふざけてんね、何で?」
「ハイのまま仕事行ったみたい」
「みたい?」
「そう、ったく、覚えてなくて
でも別に騒ぐことじゃないよね?
仕事はちゃんとやったんだよ
ハイでもハンバーガーは売れるんだし、でしょ?
なんかやたらかゆくって」

エラは腋の下をかきむしる。

「で、今の仕事は?」
「通りの向かいの店でバーガー売ってる」
「クソだね」
「そう」

「あのペンギン見た?」
「はあ?何?見たって」
「だから、あのペンギン」

かきむしりすぎて、血が滲んでいるエラの腋の下。


今夜のロード・ハウスのバンドは
再び、Au Revoir Simone
演奏している曲『A VIOLENT YET FLAMMABLE WORLD 』こちら👉Au Revoir Simone - "A Violent Yet Flammable World" (Twin Peaks 2017) - YouTube

※今後の展開に何の関係もなさそうなこのシーン。
でも、アップになるエラがかきむしって血が滲む腋の下とか、妙に気になります。

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一週放送がお休みだったその間に、カール・ロッド役で出演中のハリー・ディーン・スタントンの訃報が届きました。
享年91才。
最後まで現役の俳優として、
多くの人々に愛されました。
Rest In Peace.

今エピソードでは、旧メンバーのベンジャミン・ホーンの妻シルヴィア、息子のジョニー、ガーランド・ブリッグス少佐の妻でボビーの母ベティが再登場。
そして新メンバー、シャンタル・ハッチェンスの夫ゲイリー“ハッチ”ハッチェンスが登場。
演じているのはティム・ロス
シャンタル役のジェニファー・ジェイソン・リーとは、クエンティン・タランティーノの『ヘイトフル・エイト』でも共演。
夫婦役も妙にしっくりきています。

ヘイスティングスがブリッグス少佐と接触していたことが判明したり、ダギー殺害はバッド・クーパーの命令だったり、ヘイスティングスの秘書も殺されていたりと様々な新事実が明らかになりました。

バッド・クーパーは何故ダギーを殺そうとしたのか?

気になる数字が多数登場する中、
ようやく253、そして2:53が符合。
ジャック・ラビット・パレスで何が起こるのか?

ダイアンは、バッド・クーパーと通じているのか?

すべてに答えは出るのだろうか?
=+=+=+=+=+=+=+=+=+=+=+=+=+=+=+=+=+=+=+=+=
⚫︎ツイン・ピークス The Return (全18回)
TWIN PEAKS THE RETURN
監督:デヴィッド・リンチ
脚本:デヴィッド・リンチ,マーク・フロスト
音楽:アンジェロ・バダラメンディ


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👇ハリー・ディーン・スタントンデヴィッド・リンチの作品にも多数出演していますが、
やはり一本挙げるならヴィム・ヴェンダースの『パリ、テキサス』。

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👇ジェニファー・ジェイソン・リーティム・ロスの共演作、クエンティン・タランティーノの『ヘイトフル・エイト』はこちら

👇ティム・ロスが終末期の患者の看護師を演じる、メキシコの新鋭マイケル・フランコ監督の『或る終焉』はこちら

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今月の読書 〜2017年8月〜

梅雨明けと同時に梅雨時のような肌寒さで、
例年酷暑に萎える読書ペースも落ちずに済んだ8月。
何と言っても、今月のベストは言葉選びのセンスがスーパークールだった多和田葉子『百年の散歩』
アフリカ系アメリカ人とアフリカ人の人種問題に対する意識の差はこれを読まなければ知らなかったかもしれないチママンダ・ンゴズィ・アディーチェ『アメリカーナ』
アディーチェは短編(『明日は遠すぎて』)も巧い。
SFに苦手意識のある方にもオススメしたいのは、
ケン・リュウ『母の記憶に』カート・ヴォネガット『人みな眠りて』


■アメリカーナ/チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ
くぼたのぞみ 訳/河出書房新社
AMERICANAH/Chimamanda Ngozi ADICHIE/2013

ジュンパ・ラヒリ、イーユン・リー、ジェフリー・ユージェニデスなどこれまでにも米国に移り住んだ人々の物語は読んできたが、ナイジェリア人女性の視点で語る本作はとても新鮮だった。
「オールド・ファッションなラブストーリーを書きたかった」そうだが、やっぱり興味深いのはイフェメルが米国へ行って初めて直面した“人種問題”だ。
アメリカ黒人と非アメリカ黒人の間に存在する意識の違い、外国で学び帰国したナイジェリア人と故国との間の生じるズレ。
イフェメルはアメリカで傍目からみればかなり上等な二人の恋人(白人リベラル、アフリカ系アメリカ人)と付き合うが、二人の人種問題に対する態度に違和感を感じる。
結局それが故郷の恋人オビンゼの元に戻る動機のひとつにもなっていくのだが、一筋縄にはいかない人種問題の複雑さについて考えさせられた。
ナイジェリアにいる間は自分が黒人だと意識したことのなかったイフェメルの姿と日本に生まれて暮らしている日本人が重なる。
日本人だって海外に出れば、間違いなくマイノリティであり、差別される側の存在だ。
“ラブストーリー”の効用は、イフェメルの運命の人であるオビンゼの視点を獲得出来たことだろう。
彼の視点があることでストーリーが重層的になっているし、彼がイギリスで経験した挫折は海外に出たナイジェリア人のもうひとつの物語だ。
イフェメルの物語は、自分が自分らしくいられる場所(あるいは自分が自分らしくいられる誰か)を探す旅でもある。
恋愛というのは、自分がどういう人間なのかを知ることなんだとあらためて思う。

アメリカーナ

アメリカーナ


■人みな眠りて/カート・ヴォネガット
大森望 訳/河出書房新社
While Mortals Sleep:Unpublished Short Fiction /Kurt Vonnegut /2011

カート・ヴォネガット未発表作品を集めた短編集の第二弾。第一弾『はい、チーズ』を読んだ時にも感じたことだが、第二弾もこれがなぜ未発表だったのか?という粒ぞろいのクオリティ。
ヴォネガットというとSF作家という認識の人も多いだろうが、収録作品の中でSF要素を感じさせるのは「ジェニー」くらいのもの。
お気に入りはクリスマス嫌いの新聞の社会部部長ハックルマンがクリスマス精神に目覚める表題作「人みな眠りて」、鉄道模型に夢中で妻を蔑ろにした男が母親に強烈な釘を刺される「スロットル全開」あたり。
オチが絶妙です。
「ガール・プール」「ルース」など女性が主人公の話でも女性作家かと思うくらいに心理描写が巧み。
ヴォネガットの作家としての懐の深さを感じさせてくれる一冊です。
(収録作品)
⚫︎ジェニー Jenny
⚫︎エピゾディアック The Epizootic
⚫︎百ドルのキス Hundred-Dollar Kisses
⚫︎人身後見人 Guardian of the Person
⚫︎スロットル全開 With His Hand on the Throttle
⚫︎ガール・プール Girl Pool
⚫︎ルース Ruth
⚫︎人みな眠りて While Mortals Sleep
⚫︎消えろ、束の間のろうそく Out,Brief Candle
⚫︎タンゴ Tango
⚫︎ボーマー Bomer
⚫︎賢臓のない男 The Man Without No Kiddleys
⚫︎ミスターZ Mr.Z
⚫︎年に一万ドル、楽々と $10,000 a Year,Easy
⚫︎金がものを言うMoney Talks
⚫︎ペテン師たち The Humbugs

人みな眠りて

人みな眠りて


■百年の散歩/多和田葉子
新潮社

フィクションともエッセイとも言い難い不思議な味わい。実在するベルリンの通りや広場の名を冠した章で構成されている。あの人を待ちながら歩く通りや広場、目に映る景色や店や人々の姿、刺激された想像力が解き放たれる。

「渡し船には乗らず、横断歩道のシマウマの背中に乗って渡った」
「驚きはミミタブの裏側をカタツムリのようにゆっくりと這い上がった」

(『レネー・シンテニス広場』)

逆立ちしても出て来ないようなハッとする表現にため息。他言語で暮らしているからより洗練された日本語で表現できるのだろうか?全編、素晴らしかった。
「レネーシンテニス広場」のレネーシンテニスはベルリン国際映画祭のトロフィーのクマを制作した彫刻家。通りや広場の名前になったその人への興味もわくし、その場所の歴史にも思いを馳せたくなる。

「蜘蛛を嫌う人、汚職を嫌う人、にんじんを嫌う人、
ナイロンを嫌う人、いろんな人がいていい。
でもユダヤ人を嫌うということはありえない。
トルコ人を嫌うということはありえない。
中国人を嫌うということはありえない。
自分の傷が腐食しかけているのに治療する勇気を出せない憶病者が、無関係な他人に当たり散らしているだけだ。」

(『トゥホルスキー通り』)

「子供は背後に無限に広がる空間に一歩づつ踏み込んでいく。未知の空間での冒険がこんなに日常的な時間に含まれていることを知っているのは子供たちだけだ」
(『コルヴィッツ通り』)

「あの人は言った。若葉がきれいなのは数日間だけだ、と。すぐに色がくすんでしまう恋愛に似ている。必ずくすんで、それから先の時間はずっと失った色のことが気になっている。無理だとわかっていても取り戻そうとする。取り戻せないので再現しようとする。演じようとする。もしも喪失も恋愛のうちならば、ハカナイということにはならない。むしろいつまでも終わらないことが苦しいくらい。恋の時間は長い。」
(『トゥホルスキー通り』)

(収録作品)
⚫︎カント通り
⚫︎カール・マルクス通り
⚫︎マルティン・ルター通り
⚫︎レネー・シンテニス広場
⚫︎ローザ・ルクセンブルク通り
⚫︎プーシキン並木通り
⚫︎リヒャルト・ワグナー通り
⚫︎コルヴィッツ通り
⚫︎トゥホルスキー通り
⚫︎マヤコフスキーリング

百年の散歩

百年の散歩


■双頭のバビロン/皆川博子
東京創元社

身体の一部を共有し、この世に生を受けたゲオルグユリアンの双子。
名家の跡取りとして育てられ、長じて新大陸アメリカに渡り、著名な映画監督となるゲオルグと、
存在を抹消され影として生きるユリアン
双子が辿る数奇な運命が1920年代のサイレント時代のハリウッドと退廃のムード漂う上海租界という魅力的な舞台を背景に描かれる。
ユリアンと一緒に育ったツヴェンゲルというキャラクターは双子のストーリーをひとつにする重要な存在であり、彼の視点が物語に奥行きを与えている。

双頭のバビロン

双頭のバビロン


夜は短し歩けよ乙女森見登美彦
角川書店

マインド・ゲーム』『ピンポン』の湯浅政明監督でアニメ化され観たかったのだが、観逃してしまったので、先ずは原作。
有頂天家族』と舞台、世界観を共有する作品なのですぐに入り込めたし、今どきなかなか思いが伝えられない奥ゆかしさというかじれったさも、
我が道を行くヒロインの天然ぶりもまた良し。遠回りして見える景色はきっとあるし、
遠回りしてこそ物語が生まれる。
しかし、酒豪のヒロイン、未成年じゃないだろうか?
糺ノ森の古本市、行ってみたいな〜。
“古本市の神”はきっと狸が化けてるんだと思う。

夜は短し歩けよ乙女 (角川文庫)

夜は短し歩けよ乙女 (角川文庫)

👇湯浅政明監督によるアニメーションのDVD、Blu-rayはこちら

「夜は短し歩けよ乙女」 DVD 通常版

「夜は短し歩けよ乙女」 DVD 通常版


■母の記憶に/ケン・リュウ
古川嘉通 他訳/早川書房(新・ハヤカワ・SF・シリーズ)
MEMORIES OF MY MOTHER AND OTHER STORIES /KEN LIU/2017

かつての私がそうだったようにSFに苦手意識のあるひとにこそオススメしたいのが、ケン・リュウの短編集。
前作の『紙の動物園』もそうだったように、
ケン・リュウの紡ぐストーリーはSF要素はほんの一部であって、まず、その世界観を理解しなければストーリーに入り込めないというものではない。
今作にはごく短いものから中編と言ってもいいようなものもあるが、テッド・チャンの『あなたの人生の物語』を思わせるごく短い表題作『母の記憶に』、身体機能を拡張強化した女探偵が娼婦殺しの犯人を追う中編『レギュラー』辺りがお気に入り。
中国で生まれアメリカで教育を受けた著者の出自が活かされたゴールドラッシュのサンフランシスコが舞台の『万味調和ー軍神関羽のアメリカでの物語』、中国の史実に材をとった『草を結びて環を銜えん』も良かったです。
(収録作品)
⚫︎烏蘇里羆(ウスリーひぐま)The Ussuri Bear
⚫︎草を結びて環を銜えん
Knotting Grass,Holding Ring
⚫︎重荷は常に汝とともに
You'll Always Have the Burden with You
⚫︎母の記憶に Memories of My Mother
⚫︎シミュラクラ Simulacrum
⚫︎レギュラー The Regular
⚫︎ループの中で In the Loop
⚫︎状態変化 State Change
⚫︎パーフェクト・マッチ The Perfect Match
⚫︎カサンドラ Cassandra
⚫︎残されし者 Staying Behind
⚫︎上級読者のための比較認知科学絵本
An Advanced Reader's Picture Book of Comparative Cognition
⚫︎訴訟師と猿の王
The Litigation Master and the Monkey King
⚫︎万味調和ー軍神関羽のアメリカでの物語
All the Flavors
⚫︎『輸送年鑑』より「長距離貨物輸送飛行船」(〈パシフィック・マンスリー〉誌二〇〇九年五月号掲載)
The Long Haul:From the ANNAL OF TRANSPORTATION,The Pacific Monthly,May 2009

母の記憶に (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

母の記憶に (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

👇ケン・リュウの前作『紙の動物園』もオススメ


■ドローンズ・クラブの英傑伝/P・G・ウッドハウス

〈ジーブス〉シリーズでもお馴染みの紳士のクラブ、ドローンズ・クラブを舞台(というよりもクラブに出入りする紳士?たちを主人公にした)にした短編集。
途轍もなく惚れっぽいフレディ、大金持ちのくせにいつも一攫千金を狙っているウーフィー、妻に頭が上がらないビンゴ、彼らが起こす騒動はワン・パターンと言えばワン・パターンかもしれないが、戦争の足音響く不穏な時代にあっても、戦後の混乱期にも一貫して届けられたウッドハウスのユーモア小説がどんなにイギリス国民を楽しませたかは想像に難くない。

ドローンズ・クラブの英傑伝 (文春文庫)

ドローンズ・クラブの英傑伝 (文春文庫)


■私が死んでもレシピは残る 小林カツ代伝/中原一歩

確かにカツ代さんが鉄人・陳建一と対決した『料理の鉄人』はよく覚えてるし、伝説の回だったと思う。どんな一流シェフの挑戦者が登場しても結局は鉄人の勝利に終わることが殆どだったので、“家庭料理”のプロであるカツ代さんの勝利に胸のすく思いをした人も少なくなかったんじゃないかな。家に普通にある材料で美味しいものを作るっていうことは、外で美味しいものを食べること以上に大事なことだと思う。カツ代さんのレシピはそれを実践したものだし、この分野では先駆者だったと思う。
本のタイトル通り、カツ代さんのレシピ本は亡くなった後も出版され、自分で美味しいものを作りたいという老若男女に読まれ続けている。
カツ代さんの肉じゃが、私も作り続けます。

私が死んでもレシピは残る 小林カツ代伝

私が死んでもレシピは残る 小林カツ代伝


■明日は遠すぎて/チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ

大長編『アメリカーナ』を先に読んでしまったので短編の印象は全くなかったのだが、
いや〜短編も巧いです。
『アメリカーナ』の中の一章にもなっている「シーリング」も収録しているが、『アメリカーナ』が人種問題抜きに語れなかったのに比べると、
ここに収録された作品は、妻子の男と交際中の女性や結婚式を控えた母と娘や男性社会で働く女性の姿など、より普遍的で共感しやすいものになっていると思うし、アディーチェが様々なジャンルの作品が書ける作家だということを証明していると思う。
(収録作品)
⚫︎明日は遠すぎて Tomorrow Is Too Far
⚫︎震え The Shivering
⚫︎クオリティ・ストリート Quality Street
⚫︎先週の月曜日に On Monday of Last Week
⚫︎鳥の歌 Birdsong
⚫︎シーリング Ceiling
⚫︎ジャンピング・モンキー・ヒル
Jumping Monkey Hill
⚫︎セル・ワン Cell One
⚫︎がんこな歴史家 The Headstrong Historian

明日は遠すぎて

明日は遠すぎて

ツイン・ピークス The Return Episode 8 〈第8話〉

EPISODE 8


■ハイウェイ

マーフィー所長の手引きで連邦刑務所から逃走し、
ハイウェイをひた走るバッド・クーパーとレイ・モンロー。
運転しているのは、レイ・モンロー。
バッド・クーパーの携帯画面には見慣れない表示。

「この車、追跡装置が3つついてる」

そう言って、バッド・クーパーは携帯画面の表示をタップして消す。

「あの前のトラックに寄せろ」

レイに命じるバッド・クーパー。
レイが前方を走るトラックとの車間距離を縮めると、
バッド・クーパーはトラックのナンバーをショートメッセージで誰かに送信する。

DEGWW8

送信後、携帯を窓から捨てるバッド・クーパー。

「逃げたこと、怒んないでくれよ
こんなヘマこいて最悪だよ
出られて助かった
どうやったんだ?」
「ダーリャに話を聞いた
お前が必要だったんでな」
「ダーリャは?」
「安全な場所に着いたら、
電話することになってる」
「どこへ行く?」
「ファームと呼ばれる場所に行くのがいいだろう」
「だと思ってた、それが一番よさそうだ
とは言え、黙って逃しはしないだろ?
奴らだって
すぐに追いかけてくる」
「俺の欲しいものを持ってるな」
「ああ、持ってるよ
ちゃんと覚えてるから、
数字を全部、完璧に覚えてる
けどよ、クーパーさん、
相当な価値があるんだろ?
かなりの大金になるはずだ」
「そう思ってるのか?」
「思ってますよ」

バッド・クーパーはレイにハイウェイを下りるように指示する。
やがて車は舗装されていない細い道へと進み、
林の中へ。

用を足したいと車を止めるレイ。
その間に、グローブボックスから銃を取り出し車から降りたバッド・クーパーはレイに銃を向ける。

「レイ、その情報が欲しい」
「そうか」
「50万ドル、しくじったようだな」
「さあて、それはどうだろう?」

振り返ったレイも手に銃を持っている。
バッド・クーパーの銃には弾が入っていない。

「生憎だな、間抜けが!」

レイは立て続けに二発撃ち、
バッド・クーパーは倒れる。
止めを刺そうとレイがバッド・クーパーに近づくと、
林の奥から顔を黒塗りした浮浪者のような男(Woodsman)が3人姿を表し、
バッド・クーパーに駆け寄る。
Woodsmanたちは倒れたバッド・クーパーの周りに跪き、傷口から流れ出る血をバッド・クーパーの顔に塗りつけている。

すると、バッド・クーパーの血だらけの腹部にボブの姿が。

異様な光景に肝を潰したレイは車に飛び乗り、
慌ててその場を立ち去る。
辺りには白い煙が立ち込める。

※バッド・クーパーがグローブボックスから取り出した銃は、マーフィー所長にリクエストした“友だち”だろう。
しかし、その銃には弾が入ってなかった。
バッド・クーパーはマーフィー所長に裏切られたのか?
しかし、サウスダコタのバックボーン警察署に姿を現した黒塗り顔の浮浪者のような男がWoodsmanだったとは…。
辞書を引くと、
Woodsmanは「森の住人」という意味だが、
そんな牧歌的なモンじゃない!


■ハイウェイ

再び、ハイウェイに戻るレイ。
誰かと電話中。

「フィリップ、レイだ!
ああ、ヤツは死んだと…
でも、ヤツの仲間が現れたんで、確信は持てない
それにその…クーパーの中に何かいた!
それが今回の件の鍵になるかも
行き先は言ってあるから、
ヤツが追ってくればそこで捕らえる」

※レイはフィリップ・ジェフリーズに連絡を入れているし、彼の指示で動いているのかと思っていたが、
彼が銃も携帯も持っていたということは、
マーフィー所長とも通じていたということか?


ツイン・ピークス:ロードハウス

ロードハウスの今夜のバンドは、
ナイン・インチ・ネイルズ

曲はこちら『SHE'S GONE AWAY 』👉The Nine Inch Nails in Twin Peaks - YouTube

ナイン・インチ・ネイルズのフロントマン、
トレント・レズナーデヴィッド・リンチの『ロスト・ハイウェイ』にも音楽監修として参加している。
このシーンにも登場するアティカス・ロスと共に手掛けたデヴィッド・フィンチャーの『ソーシャル・ネットワーク』でゴールデングローブ賞アカデミー賞で音楽賞をダブル受賞。
デヴィッド・フィンチャーの『ドラゴン・タトゥーの女』『ゴーン・ガール』の音楽も手掛けている。


■ハイウェイから外れた林の中

Woodsmanたちから顔に血を塗りたくられ(介抱された?)横たわるバッド・クーパー。
突然、弾かれたようにガバッと起き上がる。


ニューメキシコ州

1945年7月16日午前5時29分

人類初の核実験実施。

閃光、キノコ雲、強烈な熱風、飛び散る粉塵。


古びたガソリンスタンド。
立ち込める白煙。
フラッシュする光。
亡霊のように行き来するのは大勢のWoodsman たち。



虚空から現われた白い人のようなもの(Experiment )が口から繭のような、あるいは卵のようなものを大量に吐き出す。

その中にも、ボブの姿が。


※1945年7月16日
この日行われた人類初の核実験、トリニティ実験。
この日から1ヶ月も経たない8月9日、
同型の爆弾「ファットマン」が長崎に投下された。
ゴードン・コールのオフィスにかけられていたキノコ雲の写真はここに繋がっているのだろう。
トリニティ実験が実施された当時のアメリカ大統領はハリー・S・トルーマン
ローラ・パーマー事件当時、ツイン・ピークスの保安官だったのは、同姓同名のハリー・S・トルーマン
これも意図されたものか?

ニューヨークのガラスボックスから現れサムとトレイシーを襲ったのは、ボブを生み出したエクスペリメントだった!

このシーンで使われているポーランドの作曲家クシシュトフ・ペンデレツキの『広島の犠牲者に捧げる哀歌』(Penderecki :Threnody to the Victims of Hiroshima )はこちら👉Penderecki: Threnody to the Victims of Hiroshima - Urbański, FRSO - YouTube


■ブラックロッジと現世の狭間?

漆黒の海。
(クーパーがブラックロッジから飛ばされた場所と同じか?)
やがて、島が見えてくる。
切りたった崖の上には城のような建物が。
一面壁で覆われているように見えるが、
ひとつだけ小さな縦長の窓がある。

室内には、ドレスとアクセサリーで着飾った女(Senorita Dido)がソファに座りゆっくりと体を揺らしながら、蓄音機から流れる音楽を聴いている。

女の右前方には、巨大なコンセントのような装置が鎮座している。
やがてその装置から異常を知らせるような音が響くと、
部屋の隅からタキシード姿の巨人が姿を現わす。

眉間にシワを寄せた巨人は、装置の中央にあるボタンを押し、音をとめる。

部屋を出た巨人が向かった先は、
客席を取り払った劇場のような大広間。
舞台の奥には大きなスクリーン。
そこに映し出されたのは、
核実験とガソリンスタンドのWoodsman の映像。
エクスペリメントの口からボブが吐き出されたところで映像がストップする。

すると、巨人の体はゆっくりと浮上する。
そこへソファに座っていた女が入ってきて、
舞台に上がってくる。
スクリーンは満点の星空。
空中で仰向けの姿勢になった巨人の口から星くずのようなものを吐き出される。

巨人の口から吐き出された星くずは、
やがて黄金に輝く球体となって女の方に降りてくる。

手を差し出した女の元におさまった球体には
ローラ・パーマーの姿が見える。
球体に口づけした女が送り出すように球体を放すと、
それはゆっくりと上昇し、まるで金管楽器のような管に吸い込まれてゆく。

スクリーンには、地球の映像。
管の先から出た黄金の球体は、
スクリーンの地球に向かって放たれる。
無事、役目を果たしたというような表情の女。

※巨人とSenorita Didoが住む城のある島が、
トリニティ実験の跡地に建つ記念碑の形とそっくり!


ニューメキシコ砂漠

1956年8月5日。
一面の砂漠地帯。
エクスペリメントから吐き出された卵のひとつが孵化しようとしている。

やがて、殻を破って這い出てきたのは、
羽根を持つ前半身は昆虫のようだが、
後ろ半身の足は蛙かトカゲの両生類のような異様な姿の生き物。

満月が雲に隠れる。


ニューメキシコ州

Woodsmanたちが蠢いていたガソリンスタンドの前を歩いてくるパーティー帰りらしいティーンエイジャーのカップル。

「あの曲、気に入った?」
「ええ、すごく気に入った
ああ、見て!
1セント見つけた!
ああ、表が上よ
幸運が来るって印!」
「幸運が来るように祈ってる」

※少女の見つけた1セント硬貨。
麻薬の売人レッドもコインでリチャードを煙に巻いていた。
奇妙な一致。


ニューメキシコ州

荒涼とした風景の中からWoodsmanが一人、
また一人、姿を現わす。

ハイウェイを走る夫婦の車の前に突然姿を現わすWoodsman。
驚いて車を止めた夫に話しかける。

「火、あるか?」

タバコを片手に何度も同じことを繰り返すWoodsman。
怯える夫は何も答えられない。
すると、車の前方にもうひとりのWoodsmanが姿を現わし、夫婦は堪らず走り去る。
スピードを上げる車の前方に、
更にWoodsmanの姿が。

※「火、あるか?」と「火よ、我と共に歩め」


ニューメキシコ州

夜道を歩くティーンエイジャーカップル。

「あなたが住んでるのって、街の方、なんでしょ?」
「そうだよ」
「学校のそばよね?」
「なんで知ってるの?」
「知ってるから」

「あなたはメアリーを送って行くと思ってた」
「いや、もう終わったんだ」
「じゃあ、もしかして悲しんでる?」
「別に」
「そう、そうなのね、
だったらよかった!
それなら…よかった
それじゃあ、送ってくれてホントにありがとう」
「送りたかったんだ…
キスしてもいいかな?」
「それは…どうかなあ?わかんない」
「一回だけ!お願い!」

微笑ましい軽いキス。
またね、と言ってわかれる二人。
名残惜しそうに、家に入る少女。


ニューメキシコ州

車の夫婦を恐れさせたWoodsmanが向かっているのは地元のラジオ局。

ラジオから流れているのは、
プラターズの『My Prayer 』。
客のひいたダイナーのウェイトレス、
車の修理工、
そして、意中の少年とキスをしたあの少女が
今夜の出来事を思い出しながら聴いている。

ラジオ局にやって来たWoodsmanは
受付嬢にあの質問を繰り返す。

「火、あるか?」

そう言って、受付嬢の頭を左手で鷲掴みにするとWoodsman は指の力だけで彼女の頭を握り潰す。

続いて放送ブースのDJにも同じ質問するWoodsman。
同じ質問を繰り返しながらDJに近づき、
彼の頭をまたしても鷲掴み。

乱暴にレコードをとめたWoodsmanはマイクに向かうと話し出す。

これが水だ
そして、これが井戸
すべて飲み干し、降りて行け
この馬は白目で、中は闇

同じフレーズを何度も繰り返すWoodsman。
これを聴いていたウェイトレス、修理工は次々に倒れる(眠る?)。
ベッドの上の、あの少女も体を横たえる。
彼女の元に、砂漠で孵化したあの異様な生き物が飛んで来る。
そして、操られたように開けられた彼女の口に、
“それ”は入り込む。
口を閉じた彼女は、“それ”を飲み込んでしまう。

同じフレーズを延々と繰り返しながら、
Woodsmanは薄笑いを浮かべ、
DJの頭を握り潰す。
頭蓋骨にめり込むwoodsmanの指。
崩れ落ちるDJ。

荒涼とした風景の中に姿を消すWoodsman。

眠りに落ちながら、眉間にシワを寄せる少女。

※凄惨なシーンにロマンティックなプラターズ
『My Prayer 』はこちら
👉"My Prayer" The Platters - YouTube

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今シーズンも既に第8回。
全18話の折り返し地点を迎えた今エピソードは、
何とも表現しようのない異様なエピソードとなった。
邪悪な者たちの起源、邪悪な者たちは、
人類初の核実験から生み出されたということが明らかになった今エピソードはシーズンの大きな転換点だろう。
しかし、極端に台詞が少ない!
文章にするのに難儀しました。

来週は、女子ゴルフの中継のため一週お休み。
先は気になるけど、
皆さん、この間に前半を復習しましょう!

=+=+=+=+=+=+=+=+=+=+=+=+=+=+=+=+=+=+=+=+=
⚫︎ツイン・ピークス The Return (全18回)
TWIN PEAKS THE RETURN
監督:デヴィッド・リンチ
脚本:デヴィッド・リンチ,マーク・フロスト


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👇『ツイン・ピークス The Return 』DVD、Blu-rayはこちら

👇前シリーズ『ツイン・ピークスBlu-rayはこちら

👇前シリーズの前日譚『ツイン・ピークス:ローラ・パーマー最期の7日間』Blu-rayはこちら

👇アンジェロ・バダラメンティによるサウンド・トラックはこちら

👇ツイン・ピークスの空白の25年間が明らかになる(らしい)『ツイン・ピークス シークレット・ヒストリー』はこちら(欲しい。。。)

ツイン・ピークス シークレット・ヒストリー

ツイン・ピークス シークレット・ヒストリー

👇前シリーズの謎を解く鍵だった『 ツイン・ピークス ローラの日記』も再販。
旧バージョン持ってたけど、ブックオフに売ってしまった。。。

👇トレント・レズナーが音楽監修したデヴィッド・リンチの『ロスト・ハイウェイ』のBlu-rayはこちら
麻薬の売人レッド役のバルサザール・ゲティも出演。
因みにバルサザール・ゲティは、石油で財を成したゲティ一族の御曹司。

ロスト・ハイウェイ デイヴィッド・リンチ リストア版 [Blu-ray]

ロスト・ハイウェイ デイヴィッド・リンチ リストア版 [Blu-ray]

👇『ロスト・ハイウェイ』のサウンドトラックはこちら

ロスト・ハイウェイ

ロスト・ハイウェイ

👇トレント・レズナー、アティカス・ロスのコンビが音楽を手掛け、ゴールデングローブ賞アカデミー賞をダブル受賞したデヴィッド・フィンチャー監督『ソーシャル・ネットワーク』のBlu-rayはこちら

ツイン・ピークス The Return Episode 7 〈第7話〉

EPISODE 7


ツイン・ピークス:森の中

肩で荒い息をしながら森の中に佇むジェリー・ホーン。
困惑し、怯えているように見える。
そこへ電話がかかってくる。
ジェリーの兄ベン・ホーンからだ。

「ジェリー?ジェリー、ジェリー、何があったんだ?」
「クルマを盗まれた!」
「何?」
「今、言っただろ!」
「ジェリー、何があったんだ?
クルマを盗まれたのか?」
「今、同じこと言ったか?」
「何?ジェリー」
「俺、ハイみたいだーっ!」
「あ〜、勘弁してくれ」
「俺は今どこにいるんだーっ!」

泣きだしそうなジェリー。
通話が切れる。


ツイン・ピークス:保安官事務所

トルーマン保安官とホーク副署長が
ホークが見つけた紙片を前にしている。
ホークが洗面所のトイレのドアから見つけたのは、
やはりローラ・パーマーの日記の一部だった。

昨日の夜見た夢にそれは出てきた
私の名前はアニー
デイルとローラと一緒にいるの
いいデイルはロッジにいてそこから出られない
あなたの日記にそう書いておいて

ローラの友人ハロルド・スミスの自宅で見つかったローラの日記。
破りとられていたページは4ページあったはずだが、
見つかったのは3ページ。

午前1時30分
私は今まともに息ができないくらい泣いている
あれはボブじゃないってことがはっきりとわかったから

日記の一部を隠したのは、ローラに正体を悟られたローラの父親リーランドだというホークの意見。

「ローラが言うにはこれはあくまで夢の中のアニーの言葉です。そしてこう言ってる。
“いいデイルはロッジにいて
そこから出られない”

だが、アニーとロッジから出てきたのはハリーが見ているし、先生とグレート・ノーザンへも運んでます。
ただ、本当にいいクーパーがロッジから出られないのなら、あの夜ハリーが見たアニーと一緒にロッジから出てきたクーパーは、
いいクーパーじゃない

電話でハリーに当時の事情を聞こうとする保安官。
しかし、ハリーは具合が良くないようで、
保安官は話を切り出せない。

※アニーとは、ノーマ・ジェニングスの妹でクーパーの恋人でもあったアニー・ブラックバーンのこと。
彼女は、クーパーのかつての上司ウィンダム・アールによってブラックロッジに連れ去られた。
破りとられたローラの日記のうち1ページは
いまだ行方不明である。
そこには何が書かれているのか?
トルーマン保安官とホークはブラックロッジから出てきたクーパーが“いいクーパー“ではないと気付く。


ツイン・ピークス

ある住人の家に話を聞きにきたアンディ。

「君のトラックだろ?」
「確かに俺んだが、
ここじゃ話せないって言ってるだろ?
頼むから帰ってくれよ」
「だが、誰が運転してたか聞かないと」

住人のものであるトラックについて事情を聞きたいようだが、男はここでは話せないの一点張り。
何か怯えている様子。
アンディは別の場所で会って事情を聞くことに。

※リチャードがホーン家の人間なら、
彼が少年をひき逃げしたトラックはあまりにボロ車だと思ったが、どうやらトラックは盗んだものだったようだ。
住人はトラブルに巻き込まれたことに気付いているようだ。


ツイン・ピークス:保安官事務所

ヘイワード先生と電話中の保安官。
スカイプで話を聞くことに。
モニターがデスクに内蔵されている。
意外にもハイテクな保安官のデスク。
しかし、タイピングは両の人差し指オンリーの保安官。
グレード・ノーザンでクーパーを診察した時のことをヘイワード先生に尋ねる。

「クープをとは親しくなっていたが、
あの朝の彼の様子は奇妙だった
クープを病院へ連れて行き、
私が回診をしてる間に検査を受けさせたが、
その1時間後、
ICUからこっそり出てくる彼を見かけた
服もちゃんと着替えてたよ
そして次の瞬間、
クープが振り返ると
あの奇妙な顔がそこにまた見てとれた
思わずクープと呼んだが、
彼は何も言わず背を向けると立ち去ったんだ」

ヘイワード先生はクーパーがICUにいたオードリー・ホーンの様子を見に行ったと思ったという。

※当時、オードリー・ホーンは銀行の爆破事件に巻き込まれICUで昏睡状態だった。
その後、オードリーは無事回復したのだろうか?
ものすごくおじいちゃんになっていたウィル・ヘイワード先生役のウォーレン・フロスト
彼はクリエイターのマーク・フロストの父親でもある。
スカイプでの出演はウォーレン・フロストの体調を考慮してのものだったのかもしれない。
ウォーレンは、この撮影の後亡くなっており、
今エピソードは彼に捧げられている。


サウスダコタ州バックホーン警察署

デイヴィス大佐に派遣されたシンシア・ノックス大尉がデイブ・マックレー刑事を訪ねてくる。
例の指紋の出どころを確認したいと言うノックス大尉。
彼女は、指紋が遺体から採取されたと知り驚く。

首なし遺体の年齢は40代後半。
死亡時期は5日から6日以内。

デイヴィス大佐に電話するノックス大尉。

「今回は指紋だけではありませんでした
体もあります、彼です」
「確かか?」
「遺体から採取した指紋です」
「分かった、では一本、電話を入れなければ」
「もうひとつあるんです」
「何だ?」
「厳密には二つ、頭は消えていて、
年齢も異なります」
「どういうことだ?」
「つまり、彼の頭部はここにはありません
消えています
それと身体は数日前に死亡した時点で
40代後半のものです」
「最近死んだなら、
ブリッグス少佐は70代になってる
やはり、何かの間違いだろう」
「この目で体を見ましたし、
年齢も指紋も検視による結果です」
「そこに残れ、また連絡する
すぐに一本、電話を入れなければ」
「分かりました」

ウィル・ヘイスティングスが留置されていた留置所に姿を現した黒塗りの顔の浮浪者のような男が、電話を切ろうとするノックス大尉の背後から廊下を歩いてくる。

この件は機密扱いとなり、地元署の管轄ではなくなるとマックレー刑事に告げるノックス大尉。

※息子のボビーによれば、ガーランド・ブリッグス少佐はクーパーがツイン・ピークスを去って間もなく基地の火事で亡くなったはず。
その時遺体は発見されなかったのだろうか?
デイヴィス大佐が電話を入れなければならない相手とは誰なのか?


フィラデルフィアFBI支局

ゴードン・コールのオフィス。
口笛(鳥の鳴き声を練習しているような)を吹いているゴードン。
そこへアルバートがやってくる。

「どうだった?」
「よくないです、わたしがダイアンと呼ぶと、
彼女はクーパー絡みねと聞いたので、
“まあな”と答えると、彼女はクソ喰らえと言いました」
「ほ〜」
「15分後、
私はずぶ濡れで帰宅し肺炎になりかけました
で、あなたはどんな夜を?」
「よくないニュースだ、アルバート
ダイアンを説得せねば」
「あなたの番です」
「お前も一緒に来るだろ?」
「頼むと言うなら」
「何?」
「聞こえたでしょう?」
「頼む」


■ダイアン・エヴァンスの自宅

ダイアンの自宅にゴードンとアルバートが訪ねる。

若い男と一夜を過ごしたらしいダイアン。
ゴードンとアルバートを迎えたのはこの男。

無駄足よ、
アルバートに言ったのと同じこと言うだけ

素気無いダイアン。

サウスダコタの連邦刑務所にクーパーが入っているとダイアンに告げるゴードン。

「我々は何か違和感を感じているが、
はっきりとはわからない
そこでクーパーのことをよく知っている君に
彼と話してもらい、どんな感想を持ったか聞きたい」
「これは実に重要なことなんだ
そして君が知ってることに関係している
これだけ言えば十分なはずだ」
サウスダコタ…連邦刑務所…」

※前シーズンの印象(と言ってもクーパーが一方的にテープレコーダーに話しかけていただけだが)では、ダイアンはいかにも秘書タイプの従順なタイプかと思いきや、ゴードンが言うようにかなりタフなタイプらしい。


FBIのプライベート・ジェット内

搭乗者はゴードン、アルバート、タミー、
そして、ダイアン。

ゴードンとアルバートにタミーがクーパーの指紋の件を説明している。
25年前のクーパーの指紋と連邦刑務所に収監中のバッド・クーパーの指紋は同じように見えるが、
一部、鏡に映したように反転しているらしい。

クーパーが姿を消していた25年間の間に
唯一彼の姿が撮られた写真は、
ブラジルのリオ・デ・ジャネイロ郊外の自宅で撮られたもの。
所有者はイパネマ出身の女性。


サウスダコタ州:スー・シティー、ヤンクトン連邦刑務所

バッド・クーパーと二人きりで対面するダイアン。

「思った通り君が来たか、
また会えて嬉しいよ、ダイアン」
「あらそう?あれはいつだった?
私たちが最後に会ったのは」
「俺に怒ってるのか?ダイアン」
「どう思う?」
「君は俺に怒ってると思う」
「私たちが最後に会ったのはいつ?クーパー」
「君の家だったな」
「ええ、そう、あの夜のこと覚えてる?」
「あの夜のことは忘れない」
「私もそうよ、絶対に忘れない
あなた、誰なの?
「言ってる意味がわからない」
「私を見て!私を見てよ!」

ダイアンはそう言うと、もうこれ以上耐えられないとでもいうようにカーテンのスイッチを押す。

逃げるように刑務所の建物を出るダイアン。

「よく聞いて、
あれはわたしの知ってるデイル・クーパーじゃないのよ
年をとったせいとか、
人が変わってしまったとか、
見た目の問題とかじゃないの
“ここ”に原因がある、
“ここ”にあるべきものがなくなってるの」

そう訴えるとダイアンはゴードンの肩で泣き崩れる。
“あの夜”、クーパーに最後に会った夜のことは、
ゴードンだけにいずれ話すと言うダイアン。

一方、監房に戻されたクーパーは、
看守にマーフィー所長との面会を要求する。

伝えろよ、話さなきゃならないんだ、
ストロベリーの件

※ダイアンが“ここ”と言って触ったのは、
左胸の心臓の位置。
彼女は今会ってきたクーパーには、魂がない、
あるいは心がないと言いたかったのだろう。
ダイアンがクーパーと会った最後の夜のことも気になるが、それ以上に気になるマーフィー所長に話さなきゃならないストロベリーの件とは?


ツイン・ピークス

トラックの件で事情を聞くため、約束の場所でトラックの所有者である住人を待っているアンディ。
しかし、約束の時間を過ぎても男はやってこない。

その頃、男の自宅。
ドアは少し開いている。

※因みに、アンディが付けている腕時計は、
ROLEX OYSTER PERPETUAL DATE 。
日本円で60万円以上の高級時計。


サウスダコタ州:ヤンクトン連邦刑務所

マーフィー所長のオフィス。
バッド・クーパーが連れて来られる。

「監視カメラを切ってある
何でも話せるぞ、二人だけで」

そう言ってマーフィー所長はデスクから銃を取り出すと、バッド・クーパーに向かって構える。

「あの犬の足、あれには4本、足があった
1本は俺の車から見つけ、
残りの3本はあんたが今考えてる情報と一緒に消えた
俺に何かあれば、あんたがここに来て欲しくない二人がやってくるぞ」
「お前がこの件について知ってる証拠は?」
ジョー・マクラスキー

観念したように、椅子に座るマーフィー所長。

「何が望みだ?」
「車が欲しい、安いレンタカーでもいいぞ
俺だけじゃなくレイ・モンローも出せ
グローブ・ボックスには“友だち”を入れておけ
時間は今夜1時、円滑にして安全に段取れ
もし俺を生きてここから出すまいといった気の迷いが生じたら、犬の足を思い出せ
俺はあんたに興味はない
二度と会うことはないし、ジョー・マクラスキーのことが誰かの耳に入ることもない
死んだストロベリーのこともな」

※ジョー・マクラスキーとは誰なのか?
“死んだストロベリー”というのは、バッド・クーパーが電話をかけることを許可された時に言っていた“ミスター・ストロベリー”のことだろう。
バッド・クーパーが「ミスター・ストロベリーは電話に出ないだろう」と言ったのは、ミスター・ストロベリーがすでに死んでいるという暗示であり、同時にそれを聞いていたマーフィー所長に対する脅しだったのかもしれない。
その死にマーフィー所長が関わっているのか?
レイ・モンローがバッド・クーパー殺害を請け負っていたことを、彼は知っているはずだが、それでもレイも一緒に刑務所から出すよう要求したのは、レイがヘイスティングスの秘書から聞き出した情報を得るためもあるだろうが、他に何か利用価値があると考えているからか?
いずれにせよ、バッド・クーパーはレイを生かしてはおかないだろう。


■ラスベガス:ラッキー7保険

ダギーのオフィスが入るビルの前では、
ジェイニーEがダギー(クーパー)をイライラしながら待っている。
しびれを切らしたジェイニーEはラッキー7保険へ向かう。

一方、ダギーのオフィスにはトニー・シンクレアの姿がある。
ブッシュネル社長とクーパーが何を話していたのか聞き出そうとしているらしいが、クーパーは一切無視して資料に例の図形を書き込んでいる。

その時、クーパーを女子トイレに入れてくれた同僚ロンダがクーパーに来客を告げる。
刑事たちが話を聞きたいと。
やましいことでもあるのか、
早々に部屋を出て行くトニー。
またしても、刑事が示したバッヂに興味を示すクーパー。
そこへジェイニーEが乱入。

爆破されたダギーの車の件で事情を聞きに来た刑事たちを相手に何も答えられないクーパーをよそに、
借金取りに対決した時と同様、
一方的にまくし立て、
見事に自分のペースに引っ張り込み、
車は盗まれたという線でまとめるジェイニーE。

いつの間にかその場にいたブッシュネル社長もクーパーに(資料について)聞きたいことがあったが、
ジェイニーEの勢いに気圧される。

ジェイニーEがクーパーを叱りながら、
二人がビルの外へ出ると
人混みから銃を構えた殺し屋アイク“ザ・スパイク”スタッドラーがクーパーを襲おうとする。
しかし、クーパーは見事にザスパイクを取り押える。
そこへ、スズカケの木に進化した腕が姿を現す。

手を引き千切れ!
手を引き千切れ!
手を引き千切れ!

クーパーは銃を奪い、ザ・スパイクは逃走する。
残された銃には、人間の皮膚片のようなものが付いている。

※クーパーを訪ねてきた刑事3人は、
T・フスコ、D・フスコ、“スマイリー”フスコという全員、フスコ。関係性は不明。
謎だ。
一方、徐々に目覚めつつあるクーパー。


ツイン・ピークス:グレート・ノーザン・ホテル

ベンジャミン・ホーンのオフィス。
部屋のどこからか軽いハウリング音のような妙な音が聞こえてくる。
先週から聞こえ始めたという音の出どころを
秘書のビバリーと一緒に探っているベン・ホーン。
部屋の隅のフロア・ライトからかと、
そこへ行ってみると、
今度は別の方向から聞こえてきて、
一向に音の出どころがわからない。

ビバリーが今日届いたとジェイドが送った
315号室のキーをベンに渡す。
彼は、315号室がクーパーが撃たれた現場だったと思い出す。
ビバリーはクーパーのこともローラのことも知らない。

ベンはビバリーに帰宅を促すが、
彼女は家に帰りたくないように見える。

音の出どころは壁の中か?

※グレート・ノーザン・ホテルでは、
20年前にカードキーに変更。


ツイン・ピークスビバリー・ペイジ自宅

丁度看護師が帰るところに、帰宅したビバリー
自宅では夫トム・ペイジが彼女を待っていた。
トムは重病人らしい、おそらく、ガン。
トムの病気が原因でビバリー
働きに出るようになったようだが、
トムはそれが気に入らない様子。
もっと早く帰ることも出来ただろうに、
それをしなかったビバリー
トムの病気以前に夫婦の間には問題があるようだ。

※ほんのカメオ出演ぐらいかと思われたビバリー役のアシュレイ・ジャッドだが、
夫も登場した以上、
これから登場シーンが増えるかもしれない。


ツイン・ピークス:ロードハウス

清掃中の店内。
カウンター内に陣取っているのは、
ジャン・ミシェル・ルノー
そこへ電話がかかってくる。
どうやらジャン・ミミシェルは売春の斡旋をしているらしい。
送り込んだ女が未成年だったことが問題になり
トラブルになっている様子。

※床を掃き掃除をしているだけのシーンが2分以上も続くこの独特の間もデヴィッド・リンチ
ジャン・ミシェルは、前シーズンに登場したジャン、ジャックの兄弟、あるいは親族だろう。
ジャン・ミシェルを演じているのは、
ジャック・ルノーを演じていたウォルター・オルケウィッツ


サウスダコタ州:連邦刑務所

深夜午前1時。
マーフィー所長の段取りでバッド・クーパーとレイ・ムーアがレンタカーで刑務所を出る。


ツイン・ピークス:RRダイナー

混み合うRRダイナー。
ボックス席で帳簿を付けるノーマ。

「なあ、ビリー見なかったか?」

エンディングの曲、Santo and JohnnyのSLEEP WALK はこちら👉SANTO AND JOHNNY - Sleepwalk [ 1959 Video In NEW STEREO ].mp4 - YouTube

※各エピソードのラストは、ロードハウスのライブシーンがお決まりかと思いきや、
今エピソードではそれを破ってきた。
しかし、エンディング曲のSLEEP WALKはRRダイナーにぴったりの選曲だ。

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今エピソードの再登場組は、ヘイワード先生のウォーレン・フロストくらいで(それも今エピソードのみの出演)、新キャラクターの登場もなし。
しかし、ブラックロッジから出てきたクーパーが“いいクーパー”ではないとトルーマン保安官とホークが気付いたり、
連邦刑務所に入っていたクーパーが以前のデイル・クーパーではないとダイアンが気付いたりとストーリー全体としては、前進あり。

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⚫︎ツイン・ピークス The Return (全18回)
TWIN PEAKS THE RETURN
監督:デヴィッド・リンチ
脚本:デヴィッド・リンチ,マーク・フロスト


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👇『ツイン・ピークス The Return 』DVD、Blu-rayはこちら

👇前シリーズ『ツイン・ピークスBlu-rayはこちら

👇前シリーズの前日譚『ツイン・ピークス:ローラ・パーマー最期の7日間』Blu-rayはこちら

👇アンジェロ・バダラメンティによるサウンド・トラックはこちら

👇ツイン・ピークスの空白の25年間が明らかになる(らしい)『ツイン・ピークス シークレット・ヒストリー』はこちら(欲しい。。。)

ツイン・ピークス シークレット・ヒストリー

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👇前シリーズの謎を解く鍵だった『 ツイン・ピークス ローラの日記』も再販。
旧バージョン持ってたけど、ブックオフに売ってしまった。。。

👇アシュレイ・ジャッドの出演作がなかなかピンとこなかったんですが、一事不再理をモチーフにした『ダブル・ジョパディ』はなかなか面白かった。

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👇ポルシェに乗るモーガン・フリーマンが印象的な『コレクター』。
アシュレイ・ジャッドはサスペンスと相性がいいのかも。

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